序章
帝国編 エピソード1 転生の第三皇子
……2 years ago
「クッ! ……は子どもなのに……は気でも狂ったか!!」
……! ……! 神様どうか……をお助け下さい!!」
何やら周りが騒がしい。
閉じていた瞼が重く感じて中々開かないし、身体も重たいし、金縛りにでもあったのかなぁ。
グッと力を入れて身体を動かそうとすると、まるで長年動いていなかった歯車のようにぎこちなく身体を起こした。
「スノウ様、スノウ様! ヴァネッサ様! スノウ様が目を覚ましました」
なんかメイドっぽい人がいる。
ってかここはどこ?
「あぁ……スノウ! 良かった。目を覚ましたのね。大丈夫? 痛い所は無い? 気分悪くなってない?」
えっ どういう状況?
赤髪のゆるふわミディアムヘアーでモデルのようなスタイルの美女が、目の前に座っていた。
めっちゃ良い匂いがする人だなぁ。
眼福眼福っと。
取り敢えず状況がよく分からないが、目の前の美女を見て、鼻の下が伸びている事だけは理解した。
そんな邪な事を考えていたら、その美女が抱きついてきた。
「あぁ…… 高熱でスノウの様子がおかしくなったわ。誰か早く医者を連れてきて!!」
これは夢ですか? それとも天国ですか?
夢にしては鮮明だし、抱きしめられる感覚もある。
煩悩に負けるな自分! 良く思い出せ!
確か俺は……
須藤弘樹と言う名前の二十九歳の元サッカー選手だったはずだ!
昔は日本代表のボランチとして主将を務めて、海外でのプレーを夢見ていた。
某海外プロサッカーチームからもスカウトがきて将来活躍が期待されていたが、他国との親善試合で選手生命を絶たれる大怪我をして引退した。
そんなオレに不幸は続いて…………
引退したタイミングで、長年苦楽を共にした彼女が浮気をして浮気相手と結婚すると言われて別れた……
そして新しい職探しは悉く不採用ばかりの返事で心が折られていき、段々と臆病になってしまい就活が怖くなった。
そしてオレは、人生に嫌気がさして居酒屋でヤケ酒をしていて…………確かその帰り道にコンビニで二日酔いに効くドリンクを選んでいたんだ。
そうだ!! 駐車していた高齢者ドライバーがブレーキとアクセルを間違えたのか、コンビニにいるオレに向かってロケットの如く突っ込んで来て……
オレ転生したんだった…………
前世を全て思い出した時、現世の記憶もハッキリとしてきた。
フカフカのベッドから目を覚して、大きなあくびをして周りを見渡した。
なんと言う事でしょう。
ブラウンを基調としたシンプルな部屋の作りは、約五十畳の広々とした空間で、大きな窓からは朝日がこれでもかと言わんばかりの採光を放っています。
ベッドは驚きのキングサイズの大きさで、マットレスは適度な硬さで体に馴染むようになっており、ベッドシーツは上質な生地で肌触りもよく丁寧に作られ、一日の身体を慰る匠の優しさと技が詰まっています。
そして周りにある家具は、匠厳選の貴重な材木により部屋のイメージに馴染むようなアンティーク調な机と椅子が、今にも座って欲しそうに佇んでいます。
いやいや、そんな解説は一旦置いといて〜
現在オレは六歳児の少年になっていた。
いや厳密に言うと、地球とは全く異なる世界で、魔法や聖霊やドラゴン等のファンタジーに満ち溢れたニーベラル大陸に転生した。
しかも大陸一の面積を誇るアレクサンダー帝国第三皇子のスノウと呼ばれている。
王族は黒髪にオニキスのような黒目が特徴らしい。
鏡で自分の顔を見てみると……
うん! 日本人じゃない!
背中まで伸びつつある少し癖のある黒髪のミディアムヘアーにオニキスのような黒目、母親似の顔立ちで女の子に間違えられそうだ。
自分で言うのもなんだが、母親似のオレは現在でこのイケメンボーイなら、将来は顔面偏差値が凄く高くなりそうだ。
ちなみに母親はもちろん、良い匂いのした赤髪のゆるふわミディアムヘアーの美女ヴァネッサお母様で、男爵家出身ながら帝王の側室に選ばれたリアルシンデレラのような人だ。
当時はその話が劇になるくらい大流行し、乙女達もキャアキャアと酔いしれたらしい。
また母様は、アレクサンダー帝国唯一の魔法使いであり、強き女性の象徴として女性人気に拍車をかけていた。
そんな話をベテランメイドから長時間聞かされ、いい加減飽きてきた。
季節は夏を迎えて、ずっとベットに居たので背中が汗ばんでいた。
「そろそろ着替えをしたいから、ちょっと部屋から出ていって欲し――」
「あなた達スノウ様が着替えをなさります」
おい! ベテランメイドよ食い気味で返事を返すな! 最後まで話を聞こうよ! っとやんわりとクレームを伝えようとした瞬間。
一声で扉が開き、四名の若いメイド達が現れた。
メイド達はさも当然のようにオレの服を脱がそうとする。
「ちょっ 自分で出来ますから」
赤面しながら抵抗した。
流石に若い子達にいきなり裸を見られるは恥ずかしい。
そんな勝手を知らず、メイド達は「あらあら」と微笑ましい表情をしており、若干一名は「ハァハァ」と頗る鼻息が荒かった。
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