第1章
第1話:断罪
「お前は竜聖女の役割を果たしていない。
お前が力不足なせいで竜が暴れ出してしまい、ドラゴンダンジョンに入ることができなくなってしまったではないか。
これでは狩りも採掘もできないではないか。
国に大損害を与えたお前のような無能を、私の婚約者にしておくわけにはいかん。
婚約を破棄して竜の生贄にするから覚悟しろ」
このバカは何を言っているのでしょうか。
自分が口にしている支離滅裂な言いがかりを理解しているのでしょうか。
私が竜聖女にさせられたのは、ほんの十日前です。
私の力不足で竜が現われてのではなく、私の前に竜聖女を務めていた、バッハマン公爵家のブリギッタの責任なのは誰の眼にも明らかではないですか。
「ほぉっほほほほほ。
王太子殿下の申される通りですわ。
竜が現れた責任は全部貴女にありますのよ、ベアトリクス。
責任を取って竜の花嫁になるのよ、光栄でしょ。
王太子殿下の妃は貴女の代わりに私がなってあげるわ」
このバカは、そんな身勝手な言い分が通ると本気で思っているのでしょうか。
そんな法も論もない無理無体が通るようでは、この国は滅んでしまいます。
この国はちゃんとした法で統治されているのです。
と、思っていたのですが、何時の間にか国の中枢が堕落していたようですね。
王太子殿下とブリギッタの言葉を聞いて、多くの廷臣が頷いています。
「わたくしの父上と母上を、真っ当な廷臣と一緒にハーヴェイ王国使節団として宮廷から遠ざけたのは、このような愚かな謀略を仕掛けるためだったのですね」
「何が愚かだ。
私が考えた策略を愚かだと言うのなら、その策略にまんまと引っかかったお前とアーダルベルトの方がよほど愚かだ」
父上の事を爵位ではなく名前で呼び捨てにしますか。
仮にも自分の大叔父に対して非礼極まりない言動ですね。
内戦もハーヴェイ王国との戦争も恐れていないという事ですか。
ならばこの愚かな策の後ろにコンプトン王国が控えているという事でしょうね。
「王太子殿下はこの国をコンプトン王国に売り渡すと言われるのですね。
そのような愚かな事を国王陛下や王妃殿下が許されると思っておられるのですか」
自分で口にしていながら期待薄だと分かっています。
国王陛下や王妃殿下が正しい判断を下せる方なら、そもそもこのような事態にはなっていないのですから。
王太子殿下やバッハマン公爵家の暴走を許したりはしませんからね。
それとも国王陛下や王妃殿下は幽閉されてしまわれてしまわれたのでしょうか。
「ふん、父上も母上も私の考えに賛同してくださっておるわ。
ハーヴェイ王国の手先となったアーダルベルトに王位を奪われるほど、父上も母上も愚かではないわ」
なるほど、そういう事ですか。
このバカはコンプトン王国の手先となったバルドゥイーン叔父に騙されて、自分が亡国に手を貸しているとは思ってもいないのですね。
「近衛騎士、ハーヴェイ王国の手先を捕らえて竜に捧げよ」
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