第88話
あれから数日が過ぎ、まだ居るジークヴァルトのベットで目を覚ましたリディアは腕を伸ばした。
「うんっ‥‥」
身体は大分と回復してきた。
ずっと意識を失っていたため体力低下を起こしていたが、栄養ある豪華な食事と通うイザークの看病のお陰で数日で随分と回復した。
「起きていたか」
ドアが開き入って来たジークヴァルトを見る。
ちょこちょこと公務を抜け出してはこうして見に来るジークヴァルトに呆れた眼差しを送る。
「そんなにちょこちょこ抜け出してきていいの?」
「そこはまた会いに来てくれて嬉しい、じゃ、ないのか?」
「私は大丈夫、それよりちゃんと仕事しなさい」
トントン―――
そこでノック音を聞き入口へと振り返る。
「そろそろよろしいですか?」
「サディアスまで?」
ドアの所にサディアスが立っていた。
「実は、お前に一目会いたいという奴がいてな、連れてきた」
「そういう事は先に言って」
「会ってくれるか?」
誰だか解らないが、頷く。
多分聞いても応えてくれないだろうと感じたから。
リディアが頷いたのを確認すると、サディアスを見た。
サディアスも頷くとドアの外に待つ人を部屋へと入るように導く。
「!」
そこには見知った顔があった。
「ロレシオ…様」
ロレシオがゆっくりとリディアの前に歩み立つ。
「これより、城の奥へ幽閉されることとなった、その前にあなたに謝りたいと申し出があり連れて参りました」
サディアスの説明に、毒の犯人がロレシオだった事を思い出す。
大団円の事しか頭になかったリディアは毒の犯人どうのこうのはすっかりと忘れていた。
安定のリディア思考だ。
そんなリディアの前でロレシオが深々と頭を下げる。
「リディア嬢、私の毒のせいであなたをこんな目に合わせてしまい申し訳ない」
「あ、あー、頭を上げてください」
その言葉にロレシオが頭を上げる。
気まずそうに顔を曇らせ悲壮な表情を浮かべるロレシオに苦笑いを零す。
「その、全く気にしてませんから」
(大体、主人公補正で私死なないし)
「!」
頬をポリポリ掻きまったく気にしていない様子のリディア。
ロレシオが、その場にいた皆が驚き見る。
「どうして…あなたはいつも…そんなに優しいのです?今回はあなたを死に追いやる所だったと言うのに‥‥」
少し動揺し、ロレシオが口にする。
「どうしてって‥‥」
ちらりとロレシオを見る。
その問いにリディアはどう答えようかと思案する。
(この後、幽閉か… なら本心言ってもいいかしら?)
もう会う事もないだろう。
そして、このままうやむやにして悶々とさせておくのも忍びない。
それほどにロレシオの顔が悲壮感漂いまくっていた。
(でも、これ言うと傷つくかしら‥)
これ以上傷つけたら立ち直れなくなるかもしれない。
(とはいえ、放っておくのもなぁ~…)
このまま何も言わないままでいても、言ってしまっても、どっちにしても傷ついたままだろう。
(だったら‥‥いっそ、言っちゃおうか…、私もその方がスッキリするし)
相変わらずな自分本位思考から心の中で判断が下った。
(よし、言おう)
一つ息を飲む。そして、思い切って口にした。
「正直言うと、興味、ない」
「え…」
ギョッとして皆、驚き見る。
「あなたを死に追いやったというのに?」
狼狽えるロレシオにリディアが頷く。
「まぁ、事情は大体把握しているしね」
「事情?」
サディアスが口を挟む。
「最初に出会った時に母の事を聞いたから、まぁその延長線上にここに辿り着いちゃったパターンかぁって感じぐらいにしか思ってない」
「…あの話からどうして?」
意味が解らないという様にロレシオがリディアを見る。
リディアもロレシオをもう一度ちらりと見る。
(最後だものね、面倒くさいけど…)
説明するのも面倒だが仕方がないと口を開く。
「よくある話よ」
「え?」
「楽になりたかったんでしょ?」
「っ」
ロレシオの表情が変わる。
(何か核心に触れたかっ?!)
ジークヴァルト達がロレシオの僅かな変化に反応する。
「リディア、楽にってどういう事だ?」
「・・・・・」
ロレシオが顔を少し俯かせる。
「自分より兄を愛した母の嫉妬で、自分が楽になるために毒殺しようって、どう?違うかしら?」
「っ…それは…」
「!」
皆が息を飲むのが解る。
「そんな事…、ロレシオ様は母である王妃様と理想の親子だと言われておりました、いつも一緒にいらっしゃり仲睦まじいイメージしかないのですが…?そんなロレシオ様が兄ジーク様に嫉妬など…」
ジークヴァルトとサディアスがロレシオを見る。
「・・・・・」
ロレシオが顔を背ける。
「ハッキリ言うとね、毒でジークが死んでもあなた楽にならなかったと思うわ」
「え‥‥」
「も一つ、ハッキリ言うとね、その母は、ジークも愛しちゃいないわよ?」
「! そんな事はっっ…っ」
そこで思わず本音が突いて出たことに口元を抑えるロレシオ。
そんなロレシオを見る。
「きついこと言うけど、その母は誰をも愛していなかったと思うわよ?」
「違う!母は慈悲深い人でした!母は私の話をいつも黙って聞いて‥‥‥」
「あなたにそれだけの自尊心を植え付けさせた母が、まともだと思う?」
「母は優しく、とてもいい人でした!皆も母を尊敬し、とても素晴らしい方でした!」
「そこよ、そんな優しくいい人なのに、子供のあなたが何故そこまで自虐心を抱くの?」
「それは…っ」
答えが見つからず押し黙る。
「優しい、いいひと、尊敬、素晴らしい、ダメな所ひとっつもないわね」
「ええ、母は全て正しく優しく慈悲深い、皆に敬われるような方でした」
「全て正しい?人間らしさ一つもないわね、優しい、慈悲深い、そして皆に敬われる、そりゃそうよね、だって外からや人からの評価しか興味ないモノ」
「! そんなことはっ」
「その外からや人からの評価に打ってつけの人材がジークだったのよ」
「それはどういう…?」
思っても見ない言葉にロレシオは首を傾げる。
「長子であり、虚け、それを庇いだてする母って優しくて立派よね、と、
「そんなはずは…」
「兄であるジークも、貴方達の母から見れば道具でしかなかった」
「嘘だ…、母上が最後に兄上を心配して…」
「俺を心配?有り得んな」
そこでジークヴァルトが口にした。
「! 母は!母上は死ぬ間際まであなたの身を案じて!」
「俺の身ではない、自分の身を案じたんだろう」
「何てことを言うのです、兄上!死ぬ間際まで貴方の名を呼んでいたのですよ!」
「長子だからな、自分を守るのは当然と思っていたのだろう」
「ひどい…、兄上がそんなだから―――」
「その通りでしょ、だから弟に興味がなかったのよ」
「なっ…そんな事はありません!いつも黙って私の話を聞いてくれました!」
「本当にその話、母は聞いてくれていたの?」
「!」
ぐっと喉を詰まらせるロレシオ。
「本当は解っていたんでしょ?話しても聞いてくれていない事を、だから、振り向いて欲しくて、自分の声を聞いて欲しくて、今の自分ではダメだから頑張って来たんじゃないの?」
「っ‥‥」
「頑張って頑張って頑張って頑張って‥‥ず―――っと頑張って来たんじゃないの?」
歯を食いしばるロレシオの瞳がぶわっと潤むと頬に一筋涙が零れ落ちる。
「そして、誰もが言う、自分もそう言い聞かせていた『母は優しい素晴らしい人』で、聞いてもらえないのは自分が悪いと思い込んでいた、そうね、例えば自分は兄の様に男らしくないからだとか、剣がうまく使えないからだとか、自分の話がくだらないからだとか…、優し過ぎるのがいけないんだとか」
「っ…、本当の事です」
「ねぇ、それ言葉にしてみた事ある?あるならきっと母は何も言わなかったでしょ?」
「っ…それは私が出来なかったから…」
「そう思ったのよね、それで余計に自虐心が掻き立てられ、もっと頑張らなきゃ認められない、もっともっともっと!って、思ったのよね」
ぐっとロレシオが自分の服を掴む。
「でも、どんなに頑張っても母も周りも認めてくれない、そしてその『もっと』を求められる」
「‥‥」
「できない『もっと』までも」
「?」
意味が解らず首を傾げる。
「例えば『兄の様に』、よ」
「それは…私の努力が足りないからで…」
「違うわ、『兄の様に』なんてなれるはずがない、なれないのが解っているから言うのよ」
「?」
目を瞬かせリディアを見る。
「思い出してみて、大体そう言う事言ってくる奴ら自身、ちゃんとできていたの?その人達は出来た人間に見えた?ロレシオから見て『え?』と思うような事、ロレシオから見たら全然出来てなく見えた事とかあったはずよ」
「それは…」
「なのに平然とロレシオには言ってくる、例えば「努力が足りない」とか、「努力」でどうにもならないことでもよ、その人達は人を見下す事で優越感に浸りたいの、できない人を見て相手より自分の方が優れていると思いたいの、無意識に自分の存在意義をそんなところで求めてる、ほーんとくだらない輩に過ぎないわ」
「っ…」
「そしてあなたの母は、自分は素晴らしい人間、優しく慈悲深い人間だと皆に思われたい、そう言ってもらう事が存在意義だった、そういう人間は人と共感しているように見せて、心の奥では人を道具にしか見ていない、道具だから人の心なんて見るはずがない、いや解らないのかもね」
「そんな…」
「あなたの母は、あなたを守ってくれなかったのが証拠」
「そんな事はっ母はいつも守ってくれました!」
「守ってくれた?違うわ、守ってもらえなかった、だから、一人で頑張ろうとしたのでしょ?」
「っ‥‥」
ロレシオの中で何かが喉で詰まる。
いつも見て見ぬふりをしていた、いや見てはいけないものに触れた、そのような心地悪い違和感が体の中で蠢く。
「心が真っ白な赤ちゃんから、それが当然と教えられるとその思考になってしまうわ、純粋であればある程、親の教えられたそれに反したら罪悪感が生まれるようになる」
「‥‥私の母はそのような事…、とても優しく慈悲深い人で…」
「そうでない母を想像できる?」
「え‥‥?」
「できないでしょ?想像したら罪悪感生まれない?」
「!」
自分の母が優しくない慈悲深くないと思うだけで、何てことを考えるんだと、人に言われて母をそういう風に思うなんてと自分を攻めたてる。
「眉が寄ったわね、罪悪感生まれちゃった?」
キッとリディアを睨み見る。
「それは当然の事でしょう?母を悪いように思えば誰だって―――」
「普通は考えても罪悪感なんか生まれないわよ」
「え?」
驚き思わず声が漏れる。
「ちゃんと愛情受け取ってたら、どんな想像しようと罪悪感なんて生まれない」
「・・・・・」
「そうね…、この愛情が厄介なのよね」
「厄介?」
「子供はいつまでたっても親の愛を欲するわ」
「?」
「厳しいこと言うけど、親だから愛が貰えるとは限らない、親の愛を望んでしまうけれど、だからと言って誰もが愛されるとは限らないわ」
「愛されると…限らない?」
「私が言っているのは本物の愛、よ」
自分の中に全くなかった考えに、言葉を失うロレシオ。
「ジークはそれに気づき、親に希望を抱くのを止めたのよ、貴方の目からは冷たいと感じたかもしれない、でもそれもまた親に植え付けられた先入観、母が嫌だと思うことをするのは全て悪い事だと言うね」
「‥‥先入観?」
「ジークは自分で考え、それがいいと思い行動しただけ」
「でもそれで母はいつも苦しみ、嫌な思いや心配をかけていい事には―――」
「じゃ、心配かけないようにじっとしているのがいいの?」
「それは‥‥」
「おかしいよね、矛盾するわよね」
「‥‥」
ロレシオが黙る。
「親は心配はするものよ、それは悪い事ではない」
「っ」
「逆に心配を口にし、悪い事のように周りが感じたならば、それはただの支配、コントロールよ」
「!」
「心配という名のコントロール」
「‥‥支配…コントロール…」
「これがまた愛情深く見えるから解りづらいのよねぇ~」
リディアが肩を上げる。
「そうして先入観を植え付けられた」
「‥‥」
「その先入観があるから今も苦しい、これからも苦しい、母が死んで尚苦しい、そして、ジークを殺せたとしてもあなたは苦しいわ」
「!」
「あなたの中にもあったはずよ、何かおかしいと思った事」
「‥‥」
「その『おかしい』を、ジークはそれをそのままにしなかっただけ」
ロレシオが兄であるジークヴァルトを見る。
「ああ、俺はまだ幼き時、この親は俺の言葉は届かないと見限った」
「! 嘘だ… いつも兄上の言葉だけを…」
言葉を聞いてもらえないのは自分の方で、兄の言葉ばかり耳を傾ける親に自分がダメな人間だから聞いてくれないんだと何度も傷つき落ち込んだ。
その兄も自分と同じく聞いてもらえてないと感じていたことに驚く。
「自分が母の道具である事も、見限れば見えてきた、俺は、母には愛されていなかった」
瞠目するロレシオ。
(兄上も…私と同じ思いを‥‥)
「俺は逆に、いつも母の傍に居るお前が羨ましかったよ」
「!」
思ってもみなかった言葉。
兄が自分を羨ましいと思う事があるなんてと驚きの余り言葉を失う。
「ね、あなたと同じよ、あなたと同じくジークも苦しんでいた、けど、ジークは境界線を引き、軸を自分に置いた、だけどあなたは母と同じように境界線を引かずに軸を他人に置いた、だから他人の評価がないと自分の存在を確かめられない、でもあなたに寄ってくる他人はどんなに頑張ろうとあなたを評価しないし認めない、だってあなたが自尊心ないのが解って寄ってきた人達よ?自分の承認欲求満たすための奴らがぞろぞろ寄ってきて取り囲んでいるんだから、あなたがいくら頑張ろうと完璧にしようと認める気なんてさらさらないに決まっているでしょ」
「‥‥」
思い当たる事があり過ぎて黙る。
どれだけ頑張っても褒めてはもらえなかった。
よくできたと思っても、「時間がかかり過ぎだ」とか言われたり、その中でほんの少しできなかった所や全く別の自分の足りない部分を注意された。そしていつも「まだまだ」と、「これぐらいできて当然」と「もっと努力しろ」「努力が足りない」と言われ続けた。
それでいつも完璧でない自分、まだまだ全然できていない自分が情けないと、努力が足りなんだと、もっと努力しなければと、頑張って頑張って、そしていつか人に認められたいと思って生きてきた。
「だって、あなたを認めてしまったら自分の評価が下がっちゃう、優越感にも浸れないじゃない」
「っ」
何かストンと胸に落ちる。
「あなたの母もそう、あなたがどんなに振り向いてもらおうと努力しても決して振り向いてはもらえないわ」
「‥‥」
「あなたの母自身が自分で変わらない限り、人はそれを変えられない」
「私は…愛されていない…」
「そうね、証拠に、死んでも尚、母を守ろうとしているのでしょ?」
「それは当然の――」
「それが先入観よ」
「!」
「普通は逆よ、親が子を思い守るなら話は解る、だけど、子を守りもしないで自分を守らなければいけないと思わせる、その時点でおかしいでしょ?」
「それは‥‥」
「本当に子を愛している、道具としてみていないなら、普通親を大切に
「!」
「それにそんな親なら子供は言われずとも親を大事にするわ、もちろん強迫観念とかじゃなく、自然にね」
「・・・・・」
その言葉に脱力するように握りしめていた手がだらんと落ちる。
「なるほど…これも…先入観でしたか…」
「?」
「今、解りました…、母の思い出の場所に何かしようとする兄上に怒りを覚えました、母の思い出を守る事、それは母を守る事と私の中では同じこと、そうすることが当然で、母を蔑ろにしてはいけないと何故か思っていました…、そしてそれを守る事で母に認められる、受け止められると…」
片手を顔に当て覆う。
「もう亡くなっていないと言うのに、認められるとか…母の亡霊にしがみ付いていたのですね…」
情けなさそうに力なく笑う。
「そうですね、私は兄上を憎んでいました、兄上の様にと思いながら兄上の様になりたくないと…矛盾しまくりですね…」
「‥‥」
「自分の方が母を思いやり、母上のために頑張っているのにと、それでも兄上を求める母上に、兄上に嫉妬し母上に認めてもらいたくて、自分を押し殺し耐え頑張ってきました…」
ぐっと奥歯を噛み締める。
生まれてから今まで、この長い間、自分を押し殺し耐え続けたその辛さを噛み締めるように。
「あなたの思っている通りです、兄上を殺して早く楽になりたかった、兄上を殺せばこの嫉妬心も無くなり楽になれると何処かで思っていました…」
「!」
ジークヴァルトとサディアスが聞き出したかった本心を知り目を見張る。
「私はずっと苦しかった、母が死んでからは更に苦しくて胸がずっとざわざわするのです…、それだけではない、母が死んで以来ずっと幻聴が聞こえそれが鳴りやまないのです、もう限界でした、兄を殺せばこの苦しみから解放される…そう思いました、だけど、殺せなかった…」
「ロレシオ‥‥」
「失敗して殺せずとも私が死に、兄上が苦しめばいいと、そして私は死ねば楽になると思っていました‥‥ずっとずっと苦しかった…ずっと付きまとうこの胸がざわざわする思いに鳴りやまぬ幻聴にもう苦しめられることも無くなると…」
これがロレシオの動機かとぐっと拳を握りしめる。
「確かにそうですね、今なら何となく解ります、私は兄上を殺してもきっと苦しいまま…」
結局殺しても、周りは兄上の様にと期待する。
母が愛した兄上を越えられないと、皆は兄上しか認めないと、きっと兄上を殺しても母と同じく、今度は兄上の亡霊にまで死ぬまでしがみ付くしかできなかっただろう。
それだと兄上が死んだとて、今と全く変わらない。
「愛されるとは限らない…ですか…、思ってもみませんでした」
「‥‥」
「でもそうか、おかしいと思った事、こうして言われ考えてみると思い当たることが色々と出てきますね…」
はは…と涙を浮かべ力なく笑う。
「やっと今、もやがかかった世界から一歩抜け出したように感じます」
「‥‥」
「ただ、まだ受け止めるには時間が掛かりそうですが…」
「当然よ、その世界に居た時間が長い分だけ、受け入れるまで時間が掛かるわ」
「それもそうですね…」
「でも、一度気づけば思い返す嫌な事から逃げなければ、最後には受け入れられるわ」
「‥‥具体的ですね、…もしやあなたも?」
答えを返すように笑みを返す。
「ならば、私も逃げずに自分の考えと向き合ってみましょう、ゆっくり考えるだけの時間が私にはありますから」
「ロレシオ様…」
サディアスが哀れみの眼差しを向ける。
「自分が苦しんだのも悲しんだのも、自分が頑張ったのも出来たことも、完全に理解し認められるのは己だけだ」
「兄上‥‥」
「少なくとも俺はそう考え、そうしてきた」
「‥‥」
ジークヴァルトはロレシオの目を見る。
そんな兄ジークヴァルトに頷く。
「もう時間はない、そろそろ行くぞ」
ロレシオがリディアに振り向く。
「リディア嬢、私は貴方に出会えたことに感謝します」
深くリディアに向かい頭を下げると、足早にアナベルに幽閉場所を抑えられる前に向かうため部屋を去った。
そんな男達を見送り、長い息を吐きながらベットに倒れる。
「はぁ~~~疲れた~~~」
(これで一件落着ね!)
そこでリディアは体を縮こませ、くぅ~~~っと唸る。
「これで、これで――――」
バッと両手を万歳するように上げる。
「攻略完了!!大団円成功ね!!」
枕を抱き込みゴロンゴロンと嬉しさを噛み締めるように転がる。
(さぁ、後はイザークか…、それが済めば、とっとと逃亡してやるわ!)
ふっふっふっと不敵な笑みをベットの中で零すリディアだった。
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