上方萌え語り『桂川連理柵』
グリップダイス
すべての始まりは幸助さん
寄席なんぞ碌々まわってもこない田舎の高校生だった私は『上方落語』なんて書いてある落語の種本を読んでいました。
『寝床』『ちりとてちん』『茶瓶ねずり』……
そんな中にあったのが『胴乱の幸助』
幸助さんは真面目一筋、仕事一筋で財産を築き、引退した今では人の喧嘩や家庭内不和をなだめてまわるお人。おせっかいですが人の良いご隠居です。
この幸助さんが通りかかった家の中から聞こえてくる義太夫節。
なにやら姑が嫁夫婦をぐちぐちといびっているシーンのようです。
ところが義太夫なんかまったく知らない幸助さん、これを実際の嫁いびりと勘違いしてその家に乗り込んで行ってすったもんだする……こう言ったストーリー。
この演目は世間の常識を知らない幸助さんを笑う話ですが、どうもすっきりしない。
基本良い人の幸助さんを笑い倒すのがお気の毒ってのもありますが、私自身が「みんな知っていて当たり前である」はずのこの嫁いびりのお話を知らないからです。
最後のサゲで「お半長なら、もう桂川で心中しております」とありますから、図書館に行き心中もので探してみると……
「帯屋の主人長右衛門(38)が隣家の信濃屋お半(14)と情死した顛末を描いた心中もの浄瑠璃」
「ぶはぁっ!」
思わず手に持っていた日本古典芸能なんちゃらを落としそうになりました。
数え年だから、今でいう所のアラフォーのおっさんとローティーンの少女の心中だよ。12歳って下手すりゃランドセルだよ。
そんな話をみんなで義太夫でうなったり、歌舞伎見に行ったり、知ってるのが常識だったのか。江戸時代スゲー。
だいたい心中ものって、遊女と客の話じゃなかったの?
こんな下世話な興味で、この浄瑠璃『桂川連理柵』(かつらがわれんりのしがらみ)を調べ始めたわけです。
ところで「さく」じゃなくて「しがらみ」って読ませるのが中二病的にはカッコいいですね。
義太夫節とは、浄瑠璃とは、歌舞伎とは、文楽とは~?
専門じゃないので全部パス。
ちょっとだけ自分の独断と思い込みで書いておきますと、人気コミックのアニメ化みたいなもんです。
もともとの原作があって、ドラマCD(浄瑠璃)が出て、アニメ化(人形浄瑠璃)されたり、2.5次元舞台(歌舞伎)になったりする。
ストーリーを独りで語る一人義太夫から始まって、三味線の伴奏が入り、キャラに声優じゃなかった太夫がつき、人形浄瑠璃や文楽に至っては華麗な人形劇です。
こいつは豪華な衣装や人形の動きまで目で楽しめるのでマジおすすめ。
首の傾げ方が可愛い!とか、こいつキモイとか好き放題な感想で妄想が膨らみます。
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