JKコンビニ店長のノルマは異世界で1日売上100万ミオン
黒嶋珱玻
プロローグ
01 JK店長の店は今日も変わらず。
「いらっしゃいませ、こんばんはー!」
テロリロと入店音が軽快に鳴ると同時に、その挨拶は店内に響く。特別大声で叫んだつもりはないけれど、私の挨拶はやたらと店中に響いた。響きまくった。
うん、店内にいる人、私だけだからね。そりゃ響くよね、いつも通りだね。
レジ中から一人で店内を見渡して、少し悲しくなった。店内に流れる夕方のラジオ番組だけが元気に頭上から流れていて、その音も店内によく響き、更に寂しくなる。
しかし、入店音はしたし、何より接客業。哀愁漂う顔なんて許されない。
私は満面の笑みを顔に貼りつけて、一つしかない自動ドアからご来店されるお客様を見る。
いらっしゃいませ、ようこそお越し下さいました私の店に!と歓迎の意志を笑みに含ませてお客様をお迎えする。しようとした。
はい、ただの外の強風のイタズラでした。
音はしたのに自動ドアが開いてすらいない。
変わらず店内にお客様、ゼロ。
私が働くチェーンコンビニ、カインマートには今日も、お客様一人もいらっしゃいません。
カインマート鈴浦店。一応24時間年中無休。
地方の超ど田舎の県道に面し、主に車でご来店されるお客様をメインターゲットにした店舗だ。
県道を少し行くとインターチェンジもある為、ど田舎にしては車通りも多い方で、広々とした駐車場を持つ当店にとっては地の利はあると思う。
なのに、それなのに店内のお客様はゼロだ。
おかしい。
…はあ。
「ねーちゃん、いくら期待してたって、いつも通り客が来ないことくらい分かってるだろ?さっさと発注終わらせないと、また寝れないまま夜勤だぞ」
……それは困る!
私がため息をついたのを聞きつけていたのか、弟の龍二がレジ裏の事務所から顔を出す。
学ランを着崩し、携帯ゲーム機を手にし、行儀悪くアイスの棒を咥えている姿からは想像しにくいが、彼もこの店のバイトであり、一応夕方のこの時間は勤務中である。
あんまり仕事してないけど。
「じゃあ私は発注してくるから、少し表お願いね。ちゃんと接客するんだよ。」
「接客も何も、客いねえじゃん」
文句を言いながらも龍二はユニフォームを羽織ってレジに出てきてくれる。普段働いていなくても、こういう時にレジに居てくれるだけでも正直有難い。
私は事務所のデスクに向かうと、傍にあったサンドイッチをつまみながらパソコンに指を滑らせる。
行儀悪いから本当はこんなことしたくないけど、事務所仕事とご飯をさっさと済ませないと、レジに居てくれる龍二に申し訳ないし。同時に済ませてしまうに限る。
お客様不足以上にもっとおかしいのは、当店の従業員不足だった。
当店の現在の従業員は、たった三名。
早朝から昼過ぎくらいまでを回してくれている母さん。
学校が終わってから夜遅くまで、サボりつつも手伝ってくれる中二の弟、龍二。
そして学校以外のほとんどの時間をこの店で過ごし、夕方も深夜も働いて店を回しているのが、私、鈴浦亜里。
現在高校1年生兼、当店カインマート鈴浦店の実質的な店長です。
当店は、労基法なんて関係のないブラックコンビニです。
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