第3話 ヒーロー登場
ギャオー!!
雄叫びが尼崎の町を響き渡る。突然の怪獣の出現に秀幸は唖然とする。
「どうして、このタイミングに!!」あのアブーとの和平以来、怪獣が出現する事などなかった。それがまさに、ミラクルワンである父が尼崎を離れたと同時に現れるなんて、なんて偶然なんだと秀幸は思った。
「キャー、助けて!!」
「お、俺の家が!」皆、パニックになっている。
阪神尼崎駅の南側にひっそりと立つ尼崎城。怪獣の巨体が近づいていく。
「おい!もっと近くに見に行こうぜ!!」嵐山達のテンションが上がっている。
「なに言ってるんだ!早く逃げないと!!」秀幸は怪獣のいる場所から、離れるように嵐山達に即した。しかし、彼らは秀幸の言葉を聞かずに怪獣のいる方向に走っていく。
「ちっ!」秀幸は舌打ちをしながら制服のポケットに手を差し込んだ。そこには、朝しまい込んだ変身用のスティックがあった。
走って行った嵐山達を見ると、すでに遥か彼方まで移動していた。
「あいつら!」秀幸はスティックを使って変身する事を考えたが躊躇した。自分はずっと普通の人間だと思って生きてきた。それが突然ある日、両親が宇宙人だなんて、まさに寝耳に水であった。それは自分も地球人ではないということを意味しているのだ。彼は普通の学生として、この尼崎で生きていきたいと、ずっと考えていたのであった。彼はスティックをもう一度、ポケットの奥にしまうと、嵐山達を追いかけて走った。
ギャオー!
また怪獣が雄叫びが響く。
「ひゃー!すげえ迫力!!」嵐山が歓喜の声をあげる。
上空を自衛隊の戦闘機、ヘリコプターが飛んでいく。
「見ろ!怪獣の足元に学生がいる!攻撃が出来ない!!」戦闘機のパイロットが攻撃を躊躇する。怪獣のすぐ側にいる嵐山達のせいで、対応することが出来ないのだ。
怪獣が一歩足を進めるその足の下に自動車。怪獣は足を滑らせてゆっくりと倒れていく。それは、ちょうど嵐山達のいる場所であった。
「う、うわー!!」嵐山達は走って逃げようとするが、間に合わない事は明らかであった。
「ち、畜生!!」秀幸は反射的にポケットの中からスティックを握りと空高く付き出すとボタンを押した。
それと同時に辺りに眩しい光が満ち溢れて、一同は目を瞑った。
「あ、あれ……」嵐山達はゆっくりと目を開く。もうとっくに自分達は怪獣の下敷きになっている筈である。しかし、押し潰された形跡はない。
「ディア!!」彼らは空を見上げた。そこには倒れきた怪獣をささえる巨人の姿があった。
「で、でかい!!」嵐山達は興奮しながらその巨人の姿を見上げた。
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