26
アゲハらが店に乗り付けた貨物車のハンドルを、先に乗り込んでいたレイが握り、最後に白煙吹き上げる店から出て来たリシバの乗車を確認すると急発進させる。
「いやはや船長にお見せしたかったですねぇ、トァム君の名演を。まさか彼にあんな才能が有ったとは。セリフ回しも実になめらかで所作も完ぺき、ねぇ副業で詐欺師をやりましょうよ。彼なら結構儲けますよ」
実に愉快気に言うレイにアゲハは。
「へぇ~!見たかったなぁ」
「イヤ、マジですごかったっすよトァムのお嬢様ぶり、船長なんかより全然良い所の娘って感じで・・・・・・」
そこまでリシバが言うと、助手席からアゲハが半ば本気で彼の頭を銃口で突く。
頭を抱え痛みに悶絶する彼の横で、素に戻ったトァムが札束の詰まったトランクとそれを抱きしめるダチュレに押しつぶされながら。
「このお衣装を着たら、その、何となくその気になってしまって・・・・・・」
「新しい才能を開花させたって訳ねトァム。クセに成っちゃうかもよ?」
「せ、船長。やめてください」
その会話に割って入る様に荷室で軽機関銃を構えていたホランイ。
「ヒトーハチーマル急速に接近する車両3!」
言うなり後方から無数の弾がうなりを上げてアゲハらの貨物車を襲う。
数発が着弾し窓に蜘蛛の巣状のヒビが入り辺りに火花が散る。
盗んだ貨物車を徹夜で防弾仕様に改造した真価が問われる時が来た。
ホランイが軽機関銃で応射する銃声と、レイがアクセルを踏み込み回転数が上がったエンジン音に耳を叩かれながらアゲハ。
「いきなり撃って来るって警察じゃない!紅龍会!?でも早すぎない!?」
「金を受け取りに来た奴等でしょうね!」
レイがハンドルを巧みに操作し、対向車や前走車を回避しながらそう答える。
ダチュレが後部座席から荷室に転がり込み、轟然と軽機関銃を撃ちまくるホランイの横で、両手の短機関銃を追いすがる黒塗りの乗用車めがけ撃ちまくる。
「クソ!拳銃弾じゃ歯が立たん!甲板長!ほかに得物は無いか?」
フロントガラスが血に染まりぐしゃぐしゃに成った追跡車が商店に突っ込み、その代り追って来る後続車にまた小銃弾を叩き込みつつホランイはダチュレに。
「後部座席の下に擲弾筒がある!外して堅気の皆さんに迷惑かけんじゃねぇぞ」
そして箱型弾倉を引き抜き新しい物を銃の機関部に叩き込む。
その間も容赦なく追跡車からの弾雨は降り注ぎ、それにこたえるように後部座席のリシバが窓から身を乗り出し短機関銃を撃ちまくる。
「
黒い金属製の筒と榴弾を取り出し装填した後、台座をしっかりと後部座席の裏側に着け砲身を水平にし、追跡車に激しく揺れる車内であるにも関わらず狙いを定める。
ネコ科の猛獣の様な彼女の目が獲物をしっかりと捕らえ、その脳裏に映し出された弾道とぴったりと重なった時、不敵に笑いつつ砲身と台座を繋ぐ支柱にあるレバー型の引き金を引いた。
軽い破裂音と共に爆薬と鋼鉄の粒をギッシリ詰め込んだ榴弾が飛翔、追跡車のフロントガラスを突き破り車内に飛び込む。
轟音と爆炎と共に屋根と搭乗者が吹き飛び宙を高く舞う。
ダチュレとホランイが笑いながら掌を叩き合わせた。
「おっととぉ!前にもお出ましですよ!」
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