第26話「ペアネックレス」
レストランを出た後、手を繋ぎながら帰路についたのだが、クリスマスということもあり、どの店も色鮮やかな装飾が施されている。
周りを見てもやはりカップルが多いようだった。
少し店を見てから帰ってもいいかもしれないな。
「アリナ、帰る前に色んな店を見ていかない?」
「はいっ! 私もちょうど同じことを考えてました!」
「あはは、やっぱり俺たちの相性は誰にも負けないね」
「当り前です!」
アリナは嬉しいときや楽しいときにぱあっ、と花が咲いたような笑顔を見せてくるのでこちらまで幸せな気持ちになってくる。アリナのそんな表情を見ると、付き合うことができた俺は本当に幸せ者だなとつくづく思う。
俺たちは色んな店を見ながら歩いていると一つだけ周りよりも派手に装飾された店があった。
その店を見てアリナが欲しいものを見つけた子供のように目を輝かせていたので俺たちはその店に入ることにした。
「いらっしゃいませ」
店に入ると、スーツをピシッと着こなした大人な男性が出迎えてくれた。恐らくこの人が店主なのだろう。
店内を見回すと、色んなアクセサリーが並べられている。
ここは、高校生が入ってもいいような店なのだろうかと急に不安になってくる。が、何も言われたりはしていないので一応問題はないのだろう。
あの店主もにっこりと笑顔だったようなので、俺はほっと自分の胸をなでおろした。
俺はそんな感じで緊張しながら店内に入っていたのだが、アリナはそんなことは微塵も考えていないようで飾られているアクセサリーに夢中のようだ。
とても楽しそうなアリナを見ていると、店主がゆっくりと近づいてきた。
やっぱり、高校生が入ってもいい場所じゃなかったのか……! と、思ったのだがそうではなかったようで、その店主が小声で聞いてくる。
「あの子、彼女さんですか?」
良かったぁ~。
俺は「はい、そうです」と、答えながらこくり、と頷いた。
すると、その店主は「いいものがあります」と、俺とアリナについてくるように言った。
俺とアリナはよくわからないままその店主の後ろをついて行った。
俺たちが案内されたのは、ネックレスが並べられている場所だった。
「彼氏さんの方は、この店が高価のものばかりを扱っている店だと思われているようですが、こちらには安いものも置いてありますよ」
「そうだったんですか。ははは、なんだか安心しました」
「それに今日はクリスマスということもあり、カップルの方々には安くしますよ」
「本当ですか?!」
「はい。良いのが見つかればお声掛けください」
そう言うと、店主は笑みを浮かべながらその場を去った。
あの店主、中々のやり手のようだ。今のやり取りだけで俺は何かを買いたいという気になっている。
それに、アリナとお揃いのアクセサリーがあってもいいかもしれない。いや、ペアのアクセサリーが欲しい!
「アリナ、ここで何か買って行こうか」
「はい! 私、翔くんとお揃いのアクセサリーが欲しいです!」
「!? あはは、凄いな……」
「何が、ですか?」
「俺も同じこと考えていたんだよ」
「以心伝心ってやつですね!」
本当に凄いな。
俺とアリナはよく同じことを考えている気がする。本当に俺たちは相性が良いと思う。
「じゃあ、ここに並べられているネックレスから良さそうなのを選ぼうか」
「そうですね。……でも、こんなにたくさんあると悩んでしまいますね」
「時間はあるから、ゆっくり決めればいいさ」
「ふふ、それもそうですね」
俺は色々なネックレスを見て、どれが似合うか考えていた。
もちろん、俺に似合うかじゃない。アリナに似合うか、だ。
5分から10分が経ち、俺とアリナは自分が良いと思ったものを互いに指差して、その二つの中から買うものを選ぶことにした。
「それじゃあ、準備はいい?」
「はい!」
「せーの!」
「「これ!」」
「「え?」」
なんと、俺とアリナが指差したネックレスは同じものだったのだ。
選ぶものまで同じだとは思わなかったなあ。
ここまで思考が同じだと笑えてくる。
「ははは、これは凄いな」
「ふふ、私もビックリです」
「じゃあ、これを買おうか」
「そうしましょうか」
「一応聞くんだけど、これを選んだ理由を聞いてもいい?」
「この、真ん中についているハート型のやつに惹かれました。翔くんは?」
「本当に凄いな。実は、俺も同じ理由」
俺たちの選んだネックレスの中央部分には、ハート型のリング(?)のようなものがついていたのだ。そして、俺たち二人はそれに惹かれたのだ。
ハート型のものがついていると、カップルのお揃いという感じがして良いと思う。
俺たちは店主を呼び、支払いを済ませた。
店主はかなり安くしてくれて、更には今日だけ無料であることをやってくれると言う。
この店、クリスマスだけ赤字になっていそうだけど、大丈夫だろうか。
「今日だけ無料で名前を彫ることができますが、どうしますか?」
「無料なら、是非!」
無料ならやってもらった方がいいので、俺は迷わず即答した。
その後、アリナの頼みで俺のネックレスにはアリナの名前を、アリナのネックレスには俺の名前を彫ってもらった。
時間が掛かると思っていたのだが、予想よりも早く終わり、俺たちはペアネックレスをつけてから帰路についた。
帰り道、俺とアリナは自然と笑みがこぼれていたことだろう。
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