第20話「クリスマスイブは友達と」
12月24日。
クリスマスイブ。
俺とアリナがリビングでくつろいでいると、インターホンが鳴った。
「お、来たみたいだ。アリナ、行こうか」
「はいっ!」
俺たちは玄関に向かう。
ドアを開けると、そこにはカズと夏海がいた。今日は四人でイルミネーションを見に行く約束をしている。
「それじゃあ、みんな準備は良い? 行くよ~!」
夏海はかなり上機嫌のようだ。
よほど、今日を楽しみにしていたのだろう。そんな俺も実は楽しみだったりする。
俺たちは昼食を食べて、色々な場所で軽く遊んでからイルミネーションを見に行くことになっている。
「昼食だけど、どこで食べる?」
「んー、ハンバーガーショップとかでいいんじゃないかな」
俺が夏海にどこで食べるのかを尋ねると、夏海は、さっとすぐに決めた。夏海はこういう時の決断力が本当に高い。
俺たち四人は夏海が決めた通り近くのハンバーガーショップに入る。
中に入ると、フライドポテトやハンバーガーの食欲をそそる匂いが漂っていた。
「わあ~」
アリナの方を見てみると、アリナは目をきらきらと輝かせていた。
「もしかして、ハンバーガーショップに来るのは初めて?」
「いえ、そういうわけではないのですが、久々に来たので。それに、それが友達と彼・氏・と来ることができたのがなんだか嬉しくて」
「そ、そっか」
俺はアリナが口にした彼・氏・という単語にキュンとしてしまった。考えてみれば、俺は毎日、アリナにキュンとさせられてしまっているかもしれないな。
席につくと、俺たちはそれぞれ好きなバーガーを選び、注文したのだが、アリナは「翔くんと同じのがいいです」と言って、俺と同じものを注文した。本当に良かったのだろうか? 俺はチーズバーガーを注文したのだが、他にも美味しそうなバーガーはあったはずだけど。
「アリナ、本当に俺と同じので良かったの? 他にも美味しそうなやつあったよ?」
「いえ、私は翔くんと同じのがいいんです。翔くんの好きなものは私も好きになりたいんです」
「そういうことね。それを言うなら俺もだよ。俺もアリナが好きなものを知りたいし、同じものを好きになりたいよ」
「翔くん……」
「アリナ……」
俺とアリナが見つめ合っていると、夏海が割って入ってきた。
「ストップ! ストーップ!」
「ん? どうしたんだ、夏海?」
「どうしたんだ、じゃないよ! この席だけ糖度が異常に高いよ!」
「どういう意味?」
「はぁ……、二人は家でもこうなんだろうね。いや、むしろ家だともっと甘いのかも」
夏海が呆れたようにため息をついた。その隣ではカズも同じようにため息をついていた。
そんなことをしている間に注文したハンバーガーが俺たちの席に運ばれてきた。
「よし、それじゃあ食べよっか」
俺たちは自分たちのハンバーガーを口に頬張る。
口の中に肉汁が広がっていく。チーズバーガーは王道の商品で斬新な味というわけではないけど、やっぱりいつ食べても美味しい。
隣ではアリナが幸せそうな表情でチーズバーガーを頬張っている。あぁ、幸せそうに食べているアリナを見ていると自然とこっちまで笑みがこぼれる。
それを目の前で見ていた夏海がふふっと笑った。
「どうかした?」
「いや、糖度が高いとか言ったけど、なんか二人を見ていると穏やかな気持ちになるね」
「どういうことだよ」
「そのままの意味だよ」
夏海は「そのままの意味」と言ったが俺にはまったく意味が分からなかった。
俺とアリナを見ていたら穏やかな気持ちになる……? いくら考えても結局、わからないままだった。
俺たちはハンバーガーを食べ終わると、次はどこに行こうか話し合おうと思ったのだが、俺はあることに気が付いた。
「アリナ、こっち向いて」
「え? は、はい」
「これでよし」
「翔くん……!?」
俺はアリナの口元にケチャップが付いていたのでそれをティッシュで拭き取った。
「アリナの口元にケチャップが付いていたんだよ」
「あ、そういうことでしたか。少しびっくりしちゃいました」
「驚かすつもりはなかったんだけど、ごめんね」
「いえ、全然嫌じゃないですから。むしろ嬉しかったです」
「そっか。それなら良かったよ」
夏海とカズがやれやれといった様子でこちらを見ている。なんだ? 何かおかしなことしたかな?
とりあえず、これから行く場所を決めないとな。
俺たちは四人でこれからどこに行くか話し合った。
その結果、何故かゲームセンターになった。話し合ったとは言ったが、ほとんど夏海が決めたようなものだった。夏海はどうしてもゲームセンターに行きたかったらしい。今まであまり行くことがなかったらしい。
まあ、隣にいるアリナもあまり行ったことがなかったようで、とても嬉しそうだ。
行く場所が決まったので、俺たちは店を出た。
*****
「ゲームセンターだ~!」
「機嫌良いな、夏海」
「そりゃあね! ずっと行きたかったんだから!」
夏海はいつも以上に上機嫌だった。
俺たちはスキップをしながら大音量の音楽が流れているゲームセンターに入っていく夏海について行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます