第16話「遊びの約束、そして甘々」
翌日、学校に着き、教室に入るとカズと夏海が手招きをしながら俺とアリナのことを呼んでいる。
俺とアリナは自分の席に行く前にカズと夏海のところに行く。
「どうしたんだ二人とも」
「翔とアリナちゃんって、クリスマスイブかクリスマスに予定とかある?」
「クリスマスは予定あるけど、イブはないよ」
俺の返答を隣で聞いていたアリナが「クリスマス、デートに連れて行ってくれるんですか?」と言いたげな表情で目を輝かせながら俺の方を見つめている。
俺は密かにクリスマスデートのプランを考えていたのだが、もう密かにではなくなってしまったな。まあ、どこに連れて行くかさえバレていなければいいんだよ。
夏海が俺の返答を聞いて一つ提案してくる。
「イブに四人で遊びに行かない?」
「どこに?」
「イルミネーションを見に行こっ」
「この四人で?」
「うん! 私、イルミネーション見に行ったことないんだよね」
「オーケー、それじゃあイブに見に行くか~」
こうして俺たち四人はクリスマスイブにイルミネーションを見に行くことになった。この前、アリナと遠くからイルミネーションを見たけど、やっぱり近くで見るとまた違った良さがあるんだろうなぁ。
俺はそんなことを考えていた。
夏海がニヤリと不敵な笑みを浮かべ始める。
なんだろう。嫌な予感がする。
「翔、クリスマスに予定があるって言ってたけど、アリナちゃんとのデートだよね? それで、アリナちゃんの反応を見た感じだと今まで隠してた感じだよね?」
はい。予想通りでした。
夏海はこういう時、すぐに気づくんだよなぁ。
俺は仕方なく答えることにした。
「そうだよ。さっきのやり取りでバレちゃったけどね」
「それは本当にごめん!」
夏海はこうして素直に謝ってくるから怒れないんだよなぁ。
俺自身、そこまで気にしているわけではなかったから別にいいんだけど。
「別に気にしてないからいいよ」
俺が気にしていないということを伝えると夏海はほっとしたようで安心しきった表情をしていた。
そんな中、アリナがすごい勢いで俺に尋ねてくる。
「クリスマスデート、どこに行くんですか?」
「そ、それはまだ内緒だよ」
「むーっ、翔くんのケチ」
「ちゃんとアリナが楽しめる場所だから安心して」
「まあ、どこであっても翔くんが一緒ならどこへでも行きますよ」
アリナは本当に俺をキュンとさせるのが得意だな。
ムッとした顔の後に顔を赤らめながら「俺と一緒ならどこへでも行きますよ」の一言は攻撃力が高すぎるな。
俺はアリナを抱き寄せ頭をポンポンと優しく撫でる。
「俺もアリナがいればどこに行っても楽しいよ」
「私も大好きな翔くんがいればどこでも楽しめますよ」
あ、そういえば忘れてた。ここ、教室の中だった。
教室内の男子たちからの視線が痛い……。
俺は周りの視線に気づいて慌ててアリナを離す。
だが、アリナは周りの視線に気づいていないようで、俺がアリナから離れるとすぐに抱きついてくる。
「もう一回、頭をポンポンしてください! それまで離しません!」
おいおい、マジですか?
俺はアリナの耳元で周りの状況を伝える。
「アリナ、ここ、教室だから……」
「はっ……!? じゃあ、早くポンポンしてください」
今日はポンポンしないと離さないらしい。
普段なら周りの状況に気づけば離れるところなのだが、今日はいつも以上に甘えてくる。
「わ、わかったよ」
俺は周りの視線を気にしないように目を閉じながら、アリナの頭をポンポンしてあげる。
すると、アリナは満足したようでゆっくりと抱きしめていた腕を外してくれた。
正直なところ、本当はもう少し抱きついていたかったんだけど、ここは教室だから仕方がないよね。
そんな俺たちを見ていたカズと夏海は同時に呆れ顔でため息をついた。
「翔とアリナちゃんのいるときだけ、この教室、絶対糖度高いよね」
「二人は周りの目を気にするってことをしないのかな?」
二人とも、からかっているのか、マジで言っているのか全然わからないんだけど。
周りの視線を気にしていないわけではないことだけでも伝えておかなければ!
「カズ、夏海。勘違いしないでくれ。俺は周りの視線を気にしていないんじゃなくて、気づいていなかっただけだ」
「そうです! 私も気づかなかっただけです!」
俺の発言にアリナも便乗してきた。
俺たちが言っているのは事実だ。そうだろ?
だが、夏海がアリナに疑いの目を向ける。
「本当かなぁ? 一度気づいたけど、翔に頭をポンポンしてくれるまで離しませんみたいなことを言ってなかった?」
「そ、それは……」
「それは?」
「言い……ました……」
核心をつかれてしまったアリナは弱々しい声で真実を言った。
そんなアリナを見た夏海は「ごめんごめん!」と、アリナのとこに寄ってくる。
二人は本当に良い関係を築いていけそうだと思った。
俺はカズの方を見てみると、カズは俺に疑いの目を向けていた。
俺が首を横に振って見せるとカズは「わかったよ」と呆れた顔を見せながら俺のところに歩み寄ってくる。
「翔も意外と天然なところあるよな? 普通ならすぐに周りの視線に気づくだろ」
「そうか? この立場になったらわかるけど、気づかないもんだぞ」
その後、俺たち四人は先生が教室に来るまで談笑した。
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