第4話「一緒に寝るの?」

 俺は歯を磨き、寝る準備が整うと自分の部屋へと向かったのだが、部屋に入ってすぐ異変に気が付いた。

 部屋が普段よりも広く感じる。

 それもそのはず。俺の部屋にあったはずのベッドがなくなっているのだから。


 俺は少し困惑したが一つの答えに辿り着いた。


 父さんだ。

 きっと、いや絶対に父さんの仕業だ。こんなことするのは父さん以外に考えられない。

 そんなことを考えていると部屋の外から声が聞こえてくる。

 俺は振り向くと、そこには部屋の外からひょこっと顔を出すアリナの姿があった。


「翔くん、何してるの? 早く寝よう?」


「俺の部屋からベッドがなくなってるんだよ。きっと父さんのいたずらだよ。俺たちを一緒のベッドで寝させようとしてるんだ」


「ふふ、翔くんったら変なの。将来、結婚するんだから一緒に寝るなんて当たり前じゃないですか」


 そう言うとアリナは白い歯を見せた笑みを浮かべた。

 もう、可愛すぎない?


「アリナはそれでいいの?」


「もちろんです! 翔くんと一緒が嫌なわけないじゃないですか!」


「そ、それならいいんだけど」


 俺は父さんの計画通りというのは少ししゃくさわるがアリナと一緒に寝れるならその計画に乗ってやるさ!


 俺はアリナと共に父さんと母さんが使っていた寝室に向かった。

 今日からそこが俺とアリナの寝室になるようだ。


「そ、それじゃあ寝よっか」


「うん。今夜が私たちの初めての夜ですねっ」


「ちょっ、言い方!」


「ふふ、やっぱり翔くんは面白いです」


「もう、からかわないでよ……」


「それじゃあ、おやすみなさい」


「おやすみ」


 俺は眠りにつこうと思ったのだが、全然眠れない。

 やっぱりこれは、不眠症コースか?


 10分……20分……30分……。


 どんどん時間が過ぎていくが一向に眠気が来ない。というか来るわけがない。

 ロシア人ハーフの美少女が隣で寝てるんだぞ? 寝れるわけがないじゃないか!


 聞こえてくるのは時計の針が動く音と自分の心臓の鼓動音だけだ。


 ……あれ? 


 隣からの寝息も聞こえないな。

 もしかして、アリナもまだ起きてる?


 俺は小声でアリナに話しかけてみることにした。


「アリナ……起きてる?」


「はい。緊張で眠れないものですね、ははは」


「アリナもだったんだ……」


「ということは、翔くんも?」


「うん」


 寝息が聞こえないと思ったらアリナも俺と同じく緊張で眠れなかったなんて……。なんだか嬉しいな。俺だけが緊張していると思っていたから。


 そして俺たちは眠たくなるまで少しお喋りをすることにした。

 まず初めに俺は気になっていたことを尋ねた。


「アリナ、気になっていたんだけど、俺たち小さい頃に結婚の約束したけどさ今は互いに性格とか好みとか色々変わっていると思うんだよ。だから、俺と同棲するの嫌……じゃない?」


 アリナは今にも泣きそうな震えた声で質問を投げかけてくる。


「翔くんは……嫌?」


「いや、そんなことあるわけないよ! アリナより可愛い子なんて見たことないしこれから先も出会うことはないと思う」


 俺は慌てて答えたが、つい本心を話しすぎてしまった。

 まるで告白じゃないか。

 俺は自分の顔が真っ赤になっているのが分かった。


「それなら、好みは変わっていないってことじゃない。何も問題はないよ!」


「……ってことは、アリナも?」


「うんっ! もちろん! 私は世界中の誰よりも翔くんのことが大好きだよ」


 嬉しいけど、なんだか恥ずかしい。

 つまり、俺とアリナは今でも両想いってことだ。

 これで正式に恋人になったってこと……でいいんだよね?


「これでやっと恋人ですね」


 アリナは俺が考えていることが分かっていたようだ。


 だが、本当にいいのだろうか?

 俺は決してモテない顔立ち……だと自分では思っている。


 今まで告白されたことだってない。

 カズといつも一緒にいるからというのは関係ない……よな?


「アリナ、本当にいいの?」


「何回聞いても同じだよ、翔くん。私が翔くん以外の人を好きになるなんてあり得ないよ」


「そっか。それじゃあ……」


「うんっ! 私たちは相思相愛ってことです!」


「よかった。これからはよろしく」


「よろしくね、翔くん。いや、の方がよかったですか?」


「ダーリンはやめて。呼び方、変えないでいいよ」


「了解っ」


 俺とアリナは晴れて恋人同士になった。

 恋人となった俺たちは、その後も色んな話をした。

 喋っているうちに時間は刻々と過ぎ、気が付けば朝日が顔を出す時間になっていた。


 結局、その日、俺とアリナは一睡もすることはなかった。

 俺たちは7時前になると、学校へ行く準備や朝食を食べてから学校へと向かった。


 二人ともあくびをしながら登校の道を歩いた。




 ……手を繋ぎながら。


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