第80話 最後に示した道しるべ

 「どうかしましたか!?大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

岩石の洞窟どうくつでヒビキたちがインディゴ地方のクリスタルを手にした瞬間しゅんかん突然とつぜん発生した原因不明のめまいによってその場に倒れこんだアラシ。意識不明の重体となったアラシが緊急きんきゅう搬送はんそうされた場所は、

「はっ!ここは、どこなのだろうか…」

「よかったです。意識がもどってきて…」

ニュートピアをめぐっている旅人たちや、イベント開催かいさいのために訪れている人たちを受け入れているレトリバーの宿だ。そこは、ヒビキたちがインディゴ地方を冒険ぼうけんしている間に新しくオープンした場所だ。

「俺は今まで、何をしていたのだろうか…」

めまいによって、過去の記憶を消失してしまったアラシ。

「だけど、一命をとりとめたことが不幸中の幸いだ…」

肌身離はだみはなさず身に着けているむらさき水晶すいしょうのペンダントは、今まで通りかがやいていた。

「もう何もこわくない、もう誰にもたよらない…」

アラシはこう言い残して、宿を後にした。

「どうかしたのか?」

「お前に伝えたいことがある」

そこから向かったのは、魔王まおう(まおう)のいる場所だった。

「俺の運命をかけて…。チャンスをくれ!」

「それはどういうことか?」

「俺は今、命の危機にさらされている。最悪の場合、若くして死にいたってしまうかもしれない。そこで、俺にとって最初で最後の戦いのつもりで、この世界を変えようともくろんでいる選ばれし戦士と直接対決で決着をつけてみせる!」

生死のはざまをさまよい続けているアラシが、人生をかけて最後に示した道しるべ。それは、ヒビキたちと決戦を行うことだ。

「どこでやるつもりか?」

「それは、リボーンマウンテンで行う。リボーンマウンテンはまだ誰も頂上ちょうじょう到達とうたつしたことがないという、前人未到の山だ」

アラシは、魔王に最後のメッセージを残し、

「では、行ってくる」

「お前がずっと持ってきた願いがかなうことを、心からいのっている」

と、タイムトラベルとテレポートを駆使くしして、リボーンマウンテンへと向かうのであった。

 一方その頃、ヒビキたちを乗せたトリップ号は、ハミングタウンへと向かっていた。

「これは…」

「リボーンマウンテンよ!」

「ニュートピアで一番高い山だ!」

山麓さんろくからの景色は、すこくきれいだ!」

すると、ブリーフィングルームのモニターに、晴れている日のリボーンマウンテンの写真が映し出された。

「そこで誰かが待っているかもしれない…。六つ目のクリスタルをかけての戦いがあるということは…」

これについて、ヒビキはそう思うのであった。

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