第18話 カメに連れられて

 コースト地方の調査を始めるべく、トリップ号に乗ったヒビキたち。

「わしについていってほしいのじゃ!」

「さあ、飛び込もう」

海の中にもぐってみると、カメじいによる案内が始まった。

「コースト海峡かいきょうに向かうのじゃ!」

「そこはどんな場所なのか?」

「サンゴしょうと深海に分かれているのじゃ!」

カメじいに導かれて、コースト地方の海を進んでいく。

 すると、

「魚がいっぱい!」

「おいしそうな魚なんやけど…」

「これは、アジという魚なのじゃ!」

「アジは、体側の側線上にするど突起とっきをもつりょうりんが発達することでアジ科の他の亜科あかと区別される。稜鱗は、日本ではぜんご・ぜいごという俗称で呼ばれることが多く、学術的には楯状たてじょううろこと呼ばれることもある。種類によって稜鱗の並ぶ長さやはばことなり、同定の手がかりになる。全長は十五センチメートルほどのミヤカミヒラアジ Alepes kleinii から、百五十センチメートル以上になるロウニンアジ Caranx ignobilis まで種類によって異なる。体は著しく側扁がわへんし広葉樹の葉のような形状のものが多いが、ムロアジ属のように断面が円に近く前後に細長い紡錘形ぼうすいけいのものもいる。マアジ等では同種内で二通りの体型に分かれ、その中間の体型のものも存在する。体色は、背側は鳥類など上方からの捕食者ほしょくしゃ撹乱かくらんするために暗い色、腹側は大型肉食魚のような下方からの捕食者を撹乱するために明るい色になっている。しかし、瀬付せつきやあまり回遊しない個体には背側も明るい色になっている個体もいる。全世界の熱帯・温帯海域に多くの種類が知られ、日本でも南西なんせい諸島しょとう沿岸えんがんでインド太平洋産の種類が多く見られる。カッポレ Caranx lugubris は全世界の熱帯・亜熱帯海域に分布するはん世界せかいしゅである。マアジは日本では馴染なじみ深い魚種だが、その分布は北海道から南シナ海までとあまり広くない。生息域は種類や地域個体群によって異なり、沿岸の岩礁・サンゴ礁域に居付くもの、泥底でいへん周辺しゅうへんに生息するもの、沖合おきあいを回遊するもの等がいる。また幼魚期には汽水域や淡水域たんすいいきに入るものもいる。一般いっぱんに遊泳力は高く、動きは素早い。食性は肉食性で、小魚・甲殻類こうかくるい・貝類・頭足類等の小動物を捕食する。敵は人間の他にもサメ類、マグロ類、ブリ類、カジキ類等の大型肉食魚がいる」

アジの群れに遭遇そうぐうしたり、

「ここは、ワカメの森なのじゃ!気を付けて進むのじゃ!」

「ワカメは、日本海側では北海道以南、太平洋岸では北海道南西部から九州にかけての海岸、朝鮮ちょうせん半島はんとう南部なんぶの両岸の、低潮線付近から下に生育する。根状の部分で岩などに固着し、葉状部を水中に伸ばし、長さは二メートルにも達する。葉状部の中心には主軸しゅじくがあって、それを中心に左右に広く伸び、大きく羽状にける。広がった葉の基部には、とてもあつくなった葉状部が縮まり、折れ重なったような部分がある。これをメカブと呼び、生殖せいしょく細胞さいぼうが集まっている部分である。ワカメは世代交代を行なう。一般に知られているワカメは胞子体であり、メカブで作られた遊走子から発芽はつがした配偶体はいぐうたいは、ごく小さなものである。海苔のりと同じく、古くから日本人に親しまれてきた海藻かいそうで、『万葉集』にも現れている。主に食用として用いられ、の物、汁物しるものの具として使われたほか、豊作ほうさく祈願きがんの神事などにも利用されていた」

「了解!」

ワカメの海を進んだりと、コースト地方の海を調査した。

「見えた!」

「これが、コースト海峡なのじゃ!」

コースト海峡が見えてくると。

「うわっ!」

「あたりが真っ黒になった!」

イカがすみによって、視界が悪くなってしまった。

「イカは、神経系や筋肉きんにくがよく発達していて、たいていは夜に行動する。漏斗ろうとからの噴水と外套がいとうまくの収縮・ひれを使って前後に自在に泳ぐ。十本のうでは筋肉質でしなやかに伸縮し、腕の内側にはキチン質の吸盤きゅうばんが並んでいる。吸盤にはスパイクのようなの付いた角質の環がみられ、筋肉の収縮を利用するタコの吸盤とは構造が異なる。実際の腕は八本で、残りの腕二本は吸盤が先端せんたんに集中するしょくわんとよばれる構造である。この触腕を伸縮させて魚類や甲殻類を捕食するが、りの時に触腕をちぎってげることや、テカギイカの仲間では成長に伴い触腕を欠くことから、必ずしも必要というわけではないようである。コウイカ目・ダンゴイカ目・トグロコウイカ目では触腕は第三腕と第四腕との間にあるポケットに収めることができ、普段は八本脚に見える。ツツイカ目では長さを縮めることはできるが完全に収めることはできない。タコの仲間とのちがいは腕の数のほか、ミミを持つことであるが、これらには例外もある。体内には貝殻を持つが、種によって組成や形状が大きく異なる。閉眼目・開眼目では有機質の薄膜はくまくで、なんこうと呼ばれる。コウイカ科では石灰質の舟形で、甲と呼ばれる。トグロコウイカでは、オウムガイのように巻貝状で内部に規則正しく隔壁かくへきが存在し、細かくガスの詰まった部屋に分けられている。皮膚ひふには色素細胞がたくさん並んでおり、精神状態や周囲の環境によって体色を自在に変化させる。調理に際して、両目の間にある神経系の基部を刺してしめると、ただちに体色が白濁はくだくする。イカは本来の心臓の他に、二つのえら心臓しんぞうを持っている。鰓心臓は鰓に血液を急送する働きを担っている。イカの血はどうタンパク質のヘモシアニンをふくむために青色である。特にダイオウイカなど一部の深海イカは、浮力ふりょくを得るために、塩化えんかアンモニウムを体内に保有している。特定のイカにある“えぐみ”はこのためである。体の大きさに対しての眼球の割合が大きいことから、行動の多くは視覚による情報にたよっていると思われる。イカやタコの眼球はがい見上けんじょう脊椎せきつい動物どうぶつの眼球とよく似ているが、まったく異なる発生過程を経て生まれた器官であり、内部構造に明確な違いがある。研究によると同じタンパク質とツールキット遺伝子によって並行に獲得かくとくされた器官である。脊椎動物と違い視神経が網膜の背面側を通っており、視認の邪魔じゃまにならない。そのため視力にすぐれ、盲点もうてんが存在しない。嗅覚きゅうかくや味覚に関する研究はほとんどない。敵におそわれた時など、漏斗から水を勢いよく噴出し、ジェット噴射ふんしゃの要領で空中に飛び出し、腕とヒレを広げた状態で滑空かっくうする種もいる。学術的には、あたまあしつなの名のとおり頭部に足を持つと解釈かいしゃくされているため、イカを縦長に表示する際には足がある方を上に配置する。全世界の浅い海から深海まで、あらゆる海に分布する。淡水域に生息する種類は確認されていない。体長は二センチメートル程度から二十メートルに達するものまで、種類によって差がある。イカは小魚や甲殻類を主食とする。イカは自身の体の大きさに比べてかなり大きい獲物を襲う。アオリイカの幼体ようたいは自身より大きなムギイワシを襲うことが知られている。コウイカはエビやカニ、小魚を好んで食べる。スルメイカがハダカイワシを捕食する際は丸ごと捕食しているのが見られるのに対し、イワシを捕食する際は、触腕でらえ、腕で抱え込み、上顎じょうかくおよび下顎で頭部を落とし、胴体どうたいのみを食べるように持ち変える様子が確認されており、底生の魚類エゾイソアイナメはこの棄てられた頭部を多く食べている。しかしスルメイカは小魚よりウミノミやツノナシオキアミなどの甲殻類を好んで食べる。一方で、イカ類は海の蛋白源たんぱくげんとして重要な位置を占めている。天敵はサメやマグロ、ミズウオなどの大型魚類・ウミスズメやフルマカモメ、アホウドリやペンギンなどの海鳥・アザラシやオットセイなどの海獣かいじゅう・イルカやゴンドウクジラ、マッコウクジラなどのハクジラ類を含む海生かいせい哺乳類ほにゅうるいである。また、マッコウクジラは十四科五十種のイカを食べているとされ、あるマッコウクジラの胃内容物の調査では、軟体部なんたいぶが残っている八百三十個体中、六百個体九科十五種が同定されたが、このうちクラゲイカが最多で、次いでアカイカ、ニュウドウイカの順に個体数が多かった。マッコウクジラの食料として、テカギイカ科やクラゲイカ科が圧倒的に多くみられるが、これは各海域の大型イカ類の多寡たかを反映していると考えられている。サウスジョージア島のゾウアザラシ六十頭のの内容物の九十六パーセントはイカで、一年あたり二百三十万トンのイカを摂食している。オットセイでは、スルメイカやホタルイカ、タコイカ等を捕食することが知られている。また、サメもイカ類を捕食しており、捕食するものとしてはダルマザメ、アオザメ、ヨゴレ、ユメザメ、ナヌカザメ、ニホンヤモリザメ、ホオジロザメ、アブラツノザメ、クロヘリメジロザメ、ミズワニ、ヨシキリザメ、ネズミザメ、ヒョウモントラザメなどの多くの種類が知られている。共食いも行い、深海性のイカの一種は食料の四十二パーセントが共食いである。陸生のクマやオオカミでさえ、偶然ぐうぜんはまに打ちあがったイカを食べることが観察されている。敵から逃げるときは頭と胴の間から海水を吸い込み漏斗から一気にきだすことで高速移動する。さらに体内の墨袋に墨をたくわえており敵が現れると墨を吐き出して敵の目をくらませる。タコと比較ひかくすると、タコの墨はイカの墨より脂質ししつが少なくさらさらしており、これを煙幕えんまくのようにして外敵の視界をさえぎることを目的とする。イカの場合は墨の粘度ねんどが高くタコの墨のように拡散かくさんせずかたまりのようになる。イカの墨が紡錘形にまとまるのは自分の体と似た形のものを出し、敵がそちらに気を取られているうちに逃げるためと考えられている」

「大丈夫なのじゃ!?」

「はい!」

幸い、トリップ号に被害はなかった様子。

 すると、

「ここは、どこへと行く道なのだろう?」

「深海へと向かう道なのじゃ!」

ヒビキたちを乗せたトリップ号は、深海へと向かう道を進んでいた。

「ちゅぴ?」

「チララ、どうかしたのか?」

「あそこに、深海の悪魔あくまがいる!」

チララは、深海の生き物について察知したようだ。

「こりゃ、大発見なのじゃ!」

「行ってみるしかない!」

深海の悪魔をうべく、トリップ号は先へと進むのであった。

 一方その頃、アラシはシャインビーチにいた。

「忠告しておく。コースト海峡には、危険がひそんでいることを」

アラシはこう言い残して、どこかへと去っていった。

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