出版業界が斜陽産業で書籍が売れないからってただのエンジニアにベストセラー作家になれ!って倫理的にどうなんです?そもそも小説なんて書いたことないんですが?
K-enterprise
第1話 ミッションがはじまります
「ああ、Kくん、ちょっといいかね?」
「……なんでしょうか?」
「単刀直入に、今の出版業界の状況についてどう考える?」
「どう、と言いますと?」
「どうもきみは我が社の先行きに対し緊張感が足らんようだな」
「出版業界が斜陽産業で、弊社もそれに引きずられて青色吐息ですが、実行中の即応性の高いアクションプランとやらも特に効果を生みだせていない現状を憂いている素振りでも見せれば良いですか?」
「うむ、悪かった。口の上手いきみに口論を吹っ掛けようとした儂が悪い、うん」
「私を挑発しても具体的なプランなんか出ないと思いますよ」
「時にきみはなんで本が売れないと思う?」
「……若者の活字離れ、と電子化、または有料コンテンツとして費用対効果が薄い、とかですかね」
「きみはどうだね、書籍は買わんか?」
「即時性の高い情報を掲げる雑誌は、買わなくなりました。マンガや小説なども電子媒体が基本ですね」
「ネットやスマホの影響というわけか」
「ユビキタスってやつですね、いつでもどこでも楽しめる。嵩張らない。本屋に行かなくてもすぐ買えますし」
「実物としての本を買いたいと思えないのかね?」
「コレクションとして手元に置きたいものは買いますね」
「それはどんな本だね?」
「うーん、応援したい作家さんだったり、話題の本だったり、俗な視点で、本棚に飾っておけば映えるというモノもありますね。でも結局は、お金を出してまで買いたい本が少ないのですかね、今は誰でも作品を投稿できるサイトもあって、それなりの作品がタダで読めますからね」
「同人、とはまた違う文化というわけか?」
「同人も売買が基本ですからね。それに対し無料ってのは大きいと思います。ただ、そこで人気が出たり、出版社が売れると判断したものは書籍化されて有料コンテンツとして世に出ます。売れるものはメディアミックスも含め巨万の富を生むこともある。実際ウチも一部で恩恵を得てますよね」
「でも、そんな優良なコンテンツはなかなか見つからんだろう?」
「時流、ブームってやつはそうそう読めませんからね、昨今流行った『鬼』や『呪い』を題材にした物語も、生み出した側でさえ読み切れていたかどうか」
「意図して創りだせないと?」
「売れるものと良い物がイコールであると限らないと思います」
「だが、物語を生み出さないことにはスタートラインにも立てないな」
「だから出版社は現状のネット社会を利用して、優良コンテンツの掘り起こしを行っているんですよね?作品を発表する場を与え、分母を増やす。様々なコンテストを開き、潜在的な才能を見つけ出す。大衆が求めているジャンルや傾向もリサーチできますからね」
「ふむ。そこできみに頼みがある」
「……なんでしょうか?」
「作家になりたまえ」
「社長、ご無体な……!」
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