ざまぁ編

第13話 コンニャク革命

 それから1年の時が流れ、翌年の秋。


 メルビルとウィリアム王子の努力の甲斐あって、シェアステラ王国では大量の改良コンニャクが収穫された。


「これが本来の改良コンニャクか! 大きいな! なんてサイズなんだ!」


 取れたばかりの大玉のコンニャク芋を持ちあげたウィリアム王子は、そのずっしりとした重さに驚きと喜びの声をあげた。


「既に説明したことの繰り返しになりますが、過去のデータでは収穫されたものの6割にあたる大きく育ったコンニャク芋については、3年目の再植え付けを待たずにこの時点で出荷が可能です」


 そんな王子にメルビルが解説をする。


「本来3年かかるはずのコンニャク芋の、半数を超える6割がこの2年目時点で出荷できるのか! そりゃあ生産性が格段に向上するわけだな!」


「はい、これが改良コンニャクの最大の特徴なのです」


「この6割に関してはコストが2/3になったわけだよな。なるほど、品質の良さもさることながら、これでは普通のコンニャクを栽培していては価格面で勝てるわけがないな」


「私はこれを密かに『コンニャク革命』と呼んでおりました」


「コンニャク革命か、言い得て妙だ。確かにこれは革命としか言いようがない」


 コンニャク革命・イン・シェアステラ王国は1年目から上々の滑り出しをした。



―――――


 その翌年にはコンニャク農地がさらに大規模に広げられて、収穫量は前年比50倍に大幅に拡大した。

 国内に流通しだした改良コンニャクによって国民医療費が1割ほど低下し、また国外でもその存在が認知され始めた。



―――――


 さらにさらに3年目には前年比1700倍の収穫量となり、シェアステラ産改良コンニャクとして大々的にブランド化されることになった。


 周辺各国に向けて大量の輸出が始まり、供給が途絶えていたフライブルク産改良コンニャクの市場をそっくりそのまま奪い取ってしまう。



―――――


「ふぅ、3年目にして完全に軌道に乗ったな。技術指導もつつがなく進んでるし、責任者としてやっと肩の荷が下りたよ」


 景気のいい数字がこれでもかと並ぶ改良コンニャクの売り上げ帳簿を見ながら、ウィリアム王子はやれやれと大きく息を吐いた。


「ええ、これ以上なく順調ね。私も農業顧問として3年間やり切った感があるわ」


「あれからもう3年――正確には3年半か。長いようで、今思うと短かった気がするな」


「なにせ忙しかったからね。でも頑張ったおかげで今があるのよ。シェアステラ産改良コンニャクはこのまま世界を席巻するわ」


「それもこれもメルビルのおかげだよ、ありがとうメルビル。あの時俺についてきてくれて。君がいなければ改良コンニャクをこんな風に大量生産することはできなかった」


「こちらこそ追放された私を拾ってくれてありがとう。ウィリアムが居なければ私も、私の改良コンニャクたちも再び日の目を見ることはなかったわ。だからとてもとても感謝しているの」


 ちなみに3年の間にメルビルがウィリアム王子を呼ぶ時の呼び方は『ウィリアム王子』から『ウィリアム』へと自然に変化していた。


 しかもメルビルのお腹の中には新しい命が宿っていた。

 まだお腹はそう大きくなってはいないものの、すっぱいものが食べたくなったり、疲れやすかったりと体調の変化を感じない日はないメルビルだ。


 シェアステラ国王夫妻からは、今までずっと働きづめだったのだから、しばらくはゆっくり身体を休めて出産に備えるようにと言われている。


 しかしそんなメルビルの元を訪ねてきた人物があった。


 メルビルを訪ねてきた人物――それはお忍びでやってきたフライブルク王国王太子ユベリアスだった。

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