悪役の母に転生したけど早速詰んでます
もちのき
第一章
悪役の母親に転生!?早速詰んでます⋯⋯
「なんなのよ!あんたは!あんたのせいで……!あいつのせいでっ!」
目の前のむかつく存在を平手で思いっきり張り倒す。倒れ込んだそれは呆然とした目で、私を見上げてきた。
なによ。その目。被害者ヅラして。私のほうが被害者よ!
反対の手を振り上げてもう一度叩こうとしたとき、邪魔なメイドが私の腕に食い下がってきた。
「奥様!
「邪魔しないで!」
メイドを振り払おうと腕を無理矢理動かしたその時、私は勢いよく後ろに転倒し、頭を床に打ちつけた。
「奥様!?奥様!」
最後に映ったのはメイドの焦る顔と呆然と私を見るあの子の顔。そして、次に目が覚めたときには大きな天蓋ベッドの上だった。
「嘘でしょ……」
何というありがちな展開。私は頭を打ちつけたことにより、前世を思い出した。
「思い出すならもう少し早い状況にしてよ。この状況詰んでるじゃない」
今の私のこの状況、前世で読んだ漫画「悪のカメリア」に酷似している。
この漫画は、ヒロインや主人公ではなく、悪役の設定が凝っていた話だった。悪役・
そこからしばらく経ち、秀平が高校に入学したころヒロインと出会い、そこで初めて人間の温かさに触れて恋をしたものの、執着が強すぎた結果、最後はヒロインを守るヒーローによって断罪されるという……悲しい話なのだ。
本来であれば、ヒロインに執着しまくる秀平は嫌われるのだろうけど、家庭環境が酷かったことや話自体が秀平を中心に回っていたことから、ファンの間では同情する声が多かった。人気投票でもヒロイン、ヒーローを抑えてトップに立つという凄まじい人気っぷりだったのだ。
……一旦整理しよう。
そんな秀平の母親である後妻の名前は
漫画では、確か詩子はどうなってたんだっけ?離婚?断罪?思い出せないけど、息子が断罪されているのに、母親である私が無事で済むはずはない。今から断罪&没落ルートを取り払おうにも秀平が詩子に期待しなくなるきっかけイベントは、先程私が殴ったことにより、完遂してしまった。
どう考えても詰んでるでしょこれ。
こんな膨大な情報が一気に頭の中に入ってきたせいか知恵熱を出し、私は三日三晩寝込んだ。
途中で夢かとも思ったが、夢でこんなに苦しいわけがない。ちゃんと、息は上がっているしベットから転げ落ちた時も痛かった。信じられなくて何回も落ちたせいで、私の腰には青あざができている。
前世の私のことを思い出そうとしても、大学を卒業して、社会人になって1.2年目までしか思い出せない。それ以降はどうなったのだろうか。今、漫画の世界にいるということは私は死んだのか、それとも植物状態か。
そして、詩子には憑依したのかそれとも魂が融合したのか。
どっちにしろ、こんな詰んだ状態で思い出さなかったっていいじゃない!こんな状況でどうしろっていうんだ!
とりあえず、今のままだと私は秀平もろとも没落ルートを辿ることは確定。おそらく秀平にも愛想を尽かされた後で夫婦仲も最悪な状況だ。まずはこれから変えていかないといけない。
詩子は作中ではあまり出てこなかったけど、秀平がヒロインに一回だけ詩子のことについて話していた気がする。
『あの人は余裕がない可哀想な人なんだよ』
『可哀想?』
『そう。自分の生家と一条院家に振り回されて、おかしくなってしまった被害者』
『被害者ってどういうこと?』
『……そんなことはどうでもいいじゃないか。それよりももっと君の話を聞かせて』
……なんか思い出してみると物騒な台詞しかない。生家と一条院家に振り回されておかしくなったって。これもしかして、秀平がもたらす没落を待つ前に私が危ないのでは?
今のところ詩子の過去はぼんやりとしか思い出せないけど、詩子も秀平と同じであまり愛されることがなかった人のようだ。だから原作の秀平と同じくおかしくなったとか?
うーん、考えても埒があかないから、とりあえずたてる大きな目標は二つだ。
一つは、なるべく秀平に構って構い尽くして病んでる暇なんて無いようにすること。
二つ目は、夫婦仲の改善。
これをするにあたって、私は病まないようにしよう。秀平はもちろん他の人も病んでいる人が多かった。私がこれに引きずられたら、元も子もない。ここから逃げようにも詩子がおかしくなった原因に生家があるなら、帰ったところでいい扱いを受けないのは明白だし。
私は病まないようになるべくマイペースに過ごして、その流れで自分のいる今のこの環境を居心地の良いものに変えていくのがいいだろう。
不本意ながら、結婚もしたことないのにいきなり一児の母になっちゃったけど、没落回避のために頑張りたいと思います!
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