11.わたし混乱しています

 イレーネはレオンハルトの言葉に返答ができないでいた。

 レオンハルトは異世界人。ウルリヒもそうだ。

 それすらも消化できない事だったのに魔族達が元々この地域に住んでいた存在。自分達種族が侵略している側という事。

 この屋敷に来て突然投げかけられた情報に驚くばかりであった。

 レオンハルトはじめ”輝く黒”のメンバーは平然とイレーネの反応を待っているようだ。

 どうやら彼女達はレオンハルトが言っている事を信じているようである。


「・・・どこまで信じればいいの?」

「信じるですか?それはイレーネさんの自由です。僕は色々策謀は仕掛けけています。これから話しますけどとんでもない事をやっている自覚はあります。それは認めます。でも、ここで話している事は僕達が調べた限り真実です。僕が異世界人という事は紛れもない事実ですので」

「そうなのね。わたし達ヒト族が侵略者というのはどこで知ったの?」

「僕のスキル能力にも関係しているので詳しくは省略という事で。それを使って各地の遺跡や資料を確認した結果の判断です。ここにいるメンバーも知っています。そしてその内容を肯定してくれました。皆僕の仲間達です」

「今の話の証しになる物は見せてもらう事はできるのかしら?」

「はい。ありますよ」


 レオンハルトはテーブルの前に置いてある小箱をイレーネに差し出す。予めテーブルの上に置いてあったものだ。イレーネに説明するための準備はしていたのであった。

 イレーネは受け取り小箱の中身を開く。中に入っていたのは見たこともない文字が刻まれた魔道具だった。手に取ろうとしたのだが正体不明のため躊躇するイレーネ。


「触っても問題ないのだけど操作方法が分からないと問題が起こる場合はあるから注意してね」

「それって触るなという事じゃないですか。これは一体何に使うのです?魔道具である事は想像はつきますけど刻まれた文字が全く分かりません」


 のんびりとしたアリシアの指摘に思わず突っ込んでしまうイレーネ。他のメンバーを見るが誰も平然としているようだ。


「ある門の通行パスらしいです。これをくれた魔族から聞いたのですけど」

「え?魔族?そんな・・・どこで?」


 平然としたレオンハルトの言葉に絶句してしまうイレーネ。レオンハルトは魔族から貰ったと言うのだ。それも奪ったではなく貰ったと。

 友好的な交渉だったのかは現時点では分からないがこのメンバーの誰かが魔族と関係があったと言い放っているのだ。

 この国で魔族と交渉を持つ事自体禁忌とされている。勿論言葉にするだけでも禁忌だ。それを平然と言うのだ。

 確かにこのパーティは他のパーティとは違うようである。

 イレーネはどう言えばいいのか分からなかった。


「実は魔族はこの国に来ているんですよ。なんでもこの国にしかない資源があるとか。それが魔族の国では珍重されているそうです。この国でいう冒険者が採集にきているそうです。これは聞いた話です」

「え?」

「魔族は夜間等にひっそりと忍んで来るそうです。この国も警戒しているので偶に殺害や捕獲されるそうです。僕が交渉した魔族も捕獲された人でした。会った時は瀕死の重症だったのです。もう助からない程の重症でした」

「・・・・」

「何故瀕死の重傷を負ったのは捕まって拷問を受けたとの事でした。魔族の国の情報を取るため拷問したと彼は言っていました。魔族側の事は何も話さなかったとか」

「・・・・」

「理由は分からなかったのだけど魔族の彼は僕が信じられる人物だと判断したようです。この魔道具を渡して処分して欲しいと伝言してくれたのです」

「・・・でも・・」

「その時に僕は自分の目的を彼に話しました。そうしたら彼はこの魔道具が僕の役に立つだろうと渡してくれたのです。有効に使ってくれと言われたんです」

「・・・・」

「僕も牢獄に侵入して話をしていたので時間がありませんでした。話せたのはその程度でした」

「・・・もしかして・・・」

「そうです。ここの迷宮に魔族の国から通じる通路があるのです。その通行門を通るためのパスだそうです」


 イレーネは目の前の魔道具に目を落とす。言われてみるとカード型の認証装置とも見える。読めない文字は魔族の文字といわれると妙に納得するものもあった。

 まさか魔族とも交流があったとは思ってもいなかったのだ。

 自分が知らない所で魔族が来ていた。更に冒険者のような職業もあるという事はこの国で聞いている魔族は野蛮な生物という教えとは違うものである。

 今までの認識を真逆になる話ばかりだ。とうてい情報の整理が追い付くものではなかった。

 それほど驚く内容であったのだ。とうてい理解が追い付かないのであった。

 この事実をどう受け止めて良いのかいまだに判断がつかないのであった。

 

「ユウ、いきなり話過ぎちゃったんじゃない?イレーネさん消化しきれていないみたいよ」

「ボクもそんな気配を感じる。とても戸惑っている雰囲気だぞ」

「わたくしが鎮静効果のある魔法を使いましょうか?拝見するかんじですと動揺が強いようですから」


 アリシアとヘルミオネがレオンハルトに言う。確かにイレーネには戸惑いの表情が見える。カリーナは魔法で落ち着かせたらと提案してきた。

 アネタも同意のようで深く頷いている。ルードルフは変わらず離れた位置で沈黙している。

 レオンハルトが何かを言おうとしたときにイレーネは口を開く。


「大丈夫です。突然の話で驚いただけです。何しろ今まで常識だと思っていた事がひっくり返されたもので」

「それはそうね。でも私も話にでた魔族と会ったのよ。瀕死の状態だったけど嘘はなかったと判断しているわ」


 まだ混乱の中のイレーネではあるが辛うじて返事をする。テーブルにおいてあるカップに口を付ける。飲んだことのない芳香の味だった。気のせいか少し落ち着いてきた気がした。

 その中でアリシアも話題の魔族と会っていたという情報が追加される。色々情報が欲しいイレーネはアリシアに視線を向ける。

 アリシアは優しく微笑み話を続ける。


「捕まっていた魔族は相応の実力者だったと思うわ。体調が万全だったら恐らく捕まらなかったと思っているわ。理由は聞けなかったけど体調不良のままこの国に来たらしいの。そこでちょっとしたミスをして捕まったみたい」


 アリシアも同じお茶を少し口に含んでから話を再開する。飲みながら話す内容を纏めているようでもあった。


「捕まった地は国王派の貴族の領地だったの。その貴族の領内が相当の被害があったらしいの。その後に私達はたまたま用事があってその地に寄ったのよ。その貴族には結構な貸しをしていてね。それを使って状況を質したの。そうしたら魔族を捕まえた、近くに拠点がある可能性があるから尋問しているという事だったのよ」

「・・・・・」

「魔族が捕まっている場所は簡単に分かったわ。後は深夜に私達が忍び込んで話をする事ができたの。その時にはもう助からないと判断出来る程の重症だったわ。あそこまで酷いと魔法やポーションではどうにもできなかったわ。この国は魔族を人質として扱わないから本当に酷かったわ」

「・・・・・」

「彼はもう目も見えていなかったのだけど何故か私達を信用してくれたの。そこで自分の身分とここまで来た方法とその通行パスを渡してくれたのよ。このパスは彼の体に埋め込まれていてね。彼が自ら取り出してくれたのよ。後事を私達に託してね」

「・・・後事とは?」

「友好的でなくても構わないがこの国への入国許可が欲しいと。現状お互いに交流がないからこうやって忍んで来るしか方法が無いと言っていたわ」

「それを承知したと?」


 イレーネの問いに答えようとしたアリシアを制してレオンハルトが口を開く。

 

「それは僕が答えます」


 イレーネの視線はレオンハルトに移っていた。

 

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