第3話 Take It Easy 2
王子たち一行が地上へ戻り目にしたものは!
子飼いの騎士団員たちの亡骸!
辺り一面血の海!
真っ赤に染まった地面の上に突き出た大きな岩の上に男が座っていた。
「よう~ 遅かったじゃないか?」
右手を挙げお出迎えをする。
「ゆ、ゆ、勇者!!」
王子が驚き声を上げる。
「お、お、お前は死んだはずじゃ!」
「ホラ~」
と岩に座りながら両足をバタつかせて見せた。
「お前! なぜ生きている! 再生は停止したはずよ! ローブだってここにあるわ!」
と言って赤く縁取りがされたローブを手に掴み見せる。
「おい、聖女! お前の汚い手で触るなよ! 穢れるだろ!」
「無礼な! 聖女である私に、次期女王である私になんていう口の利き方!
許しませんよ!」
聖女が顔を真っ赤にして怒鳴る。
「なぜ、生きている!! 確かに手応えはあったぞ!!」
第一王子が叫びながら問う。
「答え合わせをしようか?
手品には種があるものだからね~
こういうことだよ!
土魔法・ドロ人形!」
左腕を地面に向けるとモゾモゾモゾと土が盛り上がり、男にそっくりなドロ人形が出来上がった。
そのドロ人形を見ながら
「うん! 俺ってカッコいいな~~! 惚れ惚れしちゃう!」
顎に手をやりながら白々しく言う。
「醜男が何を言っているの!
ちゃんとした鏡で見たことは無いの!
私がちゃんとした鏡を恵んであげようか?」
「聖女ちゃ~~ん、そこまで言われるとガサツな俺だけど傷つくな~」
「ビアンコ! お前は剣士じゃなかったのか?」
「いつ俺が剣士と言った? 勇者とも言った記憶もないけどな。
お前たちが勝手に思っていただけだろ」
「勇者・ビアンコよ!
お前はドロ人形で暗黒魔王を倒したと言うのか!!」
「いいとこに気がついたね~ 聖騎士君。
さすが未来の近衛騎士団長!
まぁ~そうなるかな。
あの程度のザコ魔王、ドロ人形で充分だよ!」
「それほどの力を持っていて10億ゼルダムも要求するなんて、人間の屑ね!」
「魔法使いちゃんもきついこというね~
まぁ~当たってるから言い返すことは出来ないけどね」
「貴様~~~!! お前こそが真の魔王なのじゃないか!!」
第一王子が人差し指を男に向け突き刺した。
「アッ!バレタ? 俺が真の魔王であること!
今頃気がついたの? 馬鹿だなー!」
と一瞬、間を開け野太い声で
「フハハハハハハ! 我こそ悪の権化! 魔王・ビアンコである!!」
「な、な、なんだと! 貴様----!」
一瞬、その場が凍りつき、第一王子をはじめ、そこにいたものの顔が変わる。
「嘘、ぴょ~~~ん。
俺は魔王でも勇者でもないよ、どこにでもいる
ちょっと普通ではないけどな」
「ぐぬぬ!! おのれ!! ならず者風情が次期国王である僕を謀りおって!」
第一王子は拳を握り締めながら言った。
「次期国王・・・・・・無理無理。
お前はここで死ぬんだよ! 第一王子!」
再度、第一王子の顔が変わる。
「誰の命令だ!!
いや、聞かなくても分かる!
第二王子の命令だな!!」
「・・・・・・・・・・・」
「無言という事は図星だな!
頭をポリポリと掻きながら
「まぁ~これでもプロなんで依頼人の名は明かせないので、おとなしく死んでくれ」
第一王子は剣を抜き盾を構えながら
「勇者! いや、ならず者! お前の剣は魔王の間、地下にあるんだぞ!
素手で戦うと言うのか?」
「え? 獲物なんていらないよ。
ドロ人形くんで充分でしょ。
はい頑張って、ドロ人形くん!!」
ドロ人形はゆっくりと第一王子に近づいた。
ドロ人形は右腕を引き、第一王子の顔面に容赦なくパンチが入れた。
見事に命中すると第一王子は10mほど後方へぶっ飛んだ。
「王子!」
「王子様!!」
聖女は王子の元へ寄り回復魔法を必死で掛けている。
「貴様ーーーー!」
と叫びながら聖騎士が王子とドロ人形の間に割り込み剣を抜き飛びかかってくる。
ドロ人形は足を引っ掛け聖騎士を転ばすと後頭部へ渾身の一撃を入れた!
グチャ!
「うわ~~エグイ! ドロ人形くん、もっと綺麗にやってよ。
あまりエグイと依頼が来なくなっちゃうからね」
ドロ人形は黙って頷くとゆっくり王子と聖女の下へ歩き出した。
「サンダーブレード!!」
魔法使いが魔法を唱えると雷で出来た矢が男び目掛け飛んでいく。
シュタ!
サンダーブレードを左手で掴む。
「おいおい、危ないじゃないか!
さすが、魔法使い! 狙いは良かったね~
ドロ人形くんを無視して俺を狙うなんて。
よく見ているね。
脳筋な聖騎士さんより頭がいいね」
魔法使いは驚いた顔をする。
「馬鹿な! 魔法を掴むことなんて出来るわけない!
ありえない! ありえない!!」
「そう? それは修行が足りないんじゃない?
とりあえずこれ、返すわ」
魔法使いの心臓へ目掛けサンダーブレードを投げ返す。
グサッ!
サンダーブレードが心臓に刺さると魔法使いは静かに倒れた。
その間にもドロ人形はゆっくり倒れている王子と聖女の下へ歩いていく。
「こっちへ来ないで!」
聖女の絶叫を無視するかのようにドロ人形は近づき手を伸ばした瞬間!
「土魔法・落とし穴!!」
ドッポン!
ドロ人形は見事に落とし穴に嵌った。
「ハハハハハハ! ドロ人形なんて落とし穴に落としてしまえば・・・・・
え!!!!」
落とし穴に落ちたはずのドロ人形は地面を蹴り、何事も無かったように落とし穴から飛びあがった。
「聖女、このドロ人形、暗黒魔王・イーガワを倒したんだぞ。
そんな穴に落ちても何てこと無いぞ!
少しは考えろよ!
せめて土だから水魔法を使うとかさぁ~」
「ふっ! そうね!
ウォーターウエイブ!!」
聖女が魔法を唱えると指先から大量の水がドロ人形を襲う。
「がんばれ~~ドロ人形君!!
踏ん張れ~~ 君には俺が付いている!!
クソビッチなんかに負けるな!!」
ドロ人形は大量の水に流されまいと両足を広げ踏ん張る!
「ウォーターボール!!」
聖女が1m大の水の塊を指先から発射すると見事にドロ人形に激突し合えなく泥人形はあえなく倒され流されると元の土の戻ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます