第10話 オークを奇襲する

ステータス変換によるステータスの向上はソルにとっては光明の光そのものであった。


だが、現在のところソルのステータスは歪なものとなっている。安定感というものはない。


オークはHPと防御力に優れた亜人種だ。それ故にソルはステータス変換をする際に攻撃力を重視して割り振らざるを得なかった。


真正面から堂々と闘う事なんてとてもできない。気づかれても終わりだ。初手を避けられても終わり。今のソルではオークの攻撃に対して対処しきれない。


ソルの防御面は現在も尚、それほどに脆弱なのだ。


故にソルは機会(チャンス)を伺わなければならなかった。


物陰に潜んでじっとその機会を待つ。

 

オークが歩いてくる。オークにはそれなりの知能があるようだった。武器を持っている。剣だ。無骨な剣。なんてことのない変哲もない剣ではあるが、オークのような怪力が武装をしているのはそれなりに脅威であった。


足音が聞こえてくる。ドスン、ドスン、ドスン、と。大きな足音だ。


自分のすぐ近くまで来る。


意を決してソルは飛び出しだした。


「んっ!? な、なんだ、こいつは!」


 オークは不意を突かれた。


「はあああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ソルは渾身の一撃を以ってオークに剣を突き刺す。


 ドス。


「うっ!」


 剣が胸のあたりに突き刺さる。


「このっ!」


「うわっ!」


 しかし、オークは反撃してきた。良い攻撃ではあったが、僅かに心臓から剣がそれていた。


 それ故にオークを殺しきる事ができなかったのだ。


 これはソルの運のパラメーターが1である事が影響してきた。運のパラメーターが高い場合、そういったクリティカルヒットが出やすいものなのだ。

 運のパラメーターが高ければ即死させる事もできたかもしれない。


「くそっ! このチビガキ! よくもやりやがったなっ!」


 ソルは別段15歳の少年としては平均的な身長と体格をしているが、それでも巨体のオークからすれば『チビガキ』扱いにもなるのであろう。


 オークは血流を流しつつも未だ戦意を失っていなかった。


「はあああああああああああああああああああああああ!」


 オークは剣を振り下ろしてくる。だが、オークはそれほど知能や技術を持ち合わせていない亜人種だ。その剣の軌道は大雑把な一撃であった。洗練された攻撃では決してない。無駄が多い一撃。


 生粋の剣士であるソルにとってはあまりに隙の多い攻撃であった。


 オークの剣が振り下ろされるよりも早く、ソルはオークの懐に入った。


「な、なにっ!?」


「はああああああああああああああああああああ!」

 

 そして、ソルの剣はカウンター気味にオークに突き刺さる。


「ぐ、ぐわああああああああああああああああああああああああああああ!」


 オークは断末魔を上げた。今度こそ、心臓を貫いた。


 いくらオークが相手とはいえ、これでは即死であろう。


「はぁ……はぁ……はぁ……何とかなったか」


 ソルは肩で息をする。


 こうしてソルはオークを倒しSPを『150』獲得する事に成功したのである。


 ソルの裏ダンジョン『ゲヘナ』第二階層の攻略は続く。



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