第88話 行方不明者の捜索をしよう
ロペスと私は休憩中だったので早めに切り上げ、盛り上がっている見習い達のところへ行き
「ルディの捜索に行く。お前たちは待機だ。」
そう言いながらロペスが足早に通り過ぎ、私が付け加える。
「あ、なにかおかしなことが起きたり私達が捜索に行っている間に戻ってきたら
身体強化と
と入っても私より頭1つ以上、背の高いロペスに探索をまかせることになるので、せいぜい周りに変なものがないか警戒するくらいしかやることがないのだけれど。
耳をすませて奥に進むと煌々とした
ロペスと目を合わせてうなづくと、2人で
「ガキと雑魚くらい早くやれよ、仕事に戻ろうぜ」
「そう言ってもこいつ意外とつえーんだよ、簡単に言うなよ」
野次の正体は木に寄りかかってだるそうに野次を飛ばしている男と、ルディと戦っている男の2人。
鉢金にジャケット、胸を守る薄い皮のプロテクターを付けた軽装の2人はアールクドットの
軽装なのは斥候かスパイ行為のために来ているのだろう、と推測した。
ルディの方は配下の見習いの2人が負傷、無事な2人は介抱していて、ルディ本人は守るのに精一杯だったが、足元を払われ転ばされてしまった。
慌ててロペスの肩を叩いて休憩中の
私は走りながら剣が抜けないのでルディに襲いかかっている
突然吹っ飛んだ相棒に驚きの声を上げた瞬間、ロペスが一瞬で抜いた剣で串刺しにしたのが視の端に見える。
蹴り飛ばした
体勢を立て直す前に、と私はルディの剣を拾って駆け出し
相変わらず近接戦闘が苦手なので、私が食い止めている間にロペスかルディが協力してくれるのを期待して、身体強化を強めて
上段からの刃を
「1対1の戦いに割り込むとは
「戦士じゃないし女じゃないからな!」
その隙を見逃してくれず、かといって大きく動く余裕のない
横から押されてバランスを崩してよろめいて転ぶと、私の体勢が整う前に
自分の体勢を立て直すための時間稼ぎだったようだが、ルディがやってくるだけの時間も与えてしまった。
ルディに剣を返して自分を剣を抜き2対1、
よほどの実力差がないとひっくり返すことができない戦力差に、それでも戦意を失わない
精神力強いな、と感心しつつ
ステップを踏んで細かく仕掛けているからと言って私の一撃が軽いわけではなく、打ち込みの瞬間手首を返すことで先端に遠心力を生み、反撃を許す前に飛び退き、ルディが合わせて踏み込んで受けきれなかった部分に傷を負わせる。
本来ならこういうことを1人でできる必要があるのだろうけど。
2対1になって数十秒、もっと長い時間経っていた様に感じていたが後から聞くとそんなものだ、と教えられた。
目の前のことに精一杯ですっかり忘れ去られていたロペスが後ろから一撃で
「
そう言って自分の剣の柄をなでて満足げだった。
「怪我人は?」
と、ルディに聞くと、
「ああ、そうだった。きちんとした治療をするには設備も人数の余裕もないし、手はまだ必要だからしょうがない」
ルディから5級の
打撲と軽い切り傷なので瓶から1口ずつ飲ませると、体力の回復も待たずに拠点に戻ることにした。
見習いの彼らもなんとか回復できたようで、陰ながらホッとしてルディ達と歩き出した。
「
運が悪かったと言うか、良かったと言うか。
学生に猟師の真似事をさせる状況ということが漏れる心配は少ないほうがいいか。
「カオルとルディの連携、あれはよかったな」
急に何を言い出すんだと思えば、さっきの苦し紛れの戦い方のことだった。
「ただカオルは余裕ありげな雰囲気を出すくせに実践となると、すぐに焦って単調になるのは直らんな。
ルイス教官があれこれやらせてみたくなる気持ちもわかる」
「そんなに余裕なさそうだった?」
「横で見てても必死だったよ、だから合わせやすかったんだけどさ」
「なるほど、フェイント部分はおまかせしてしまえば私は何も考えなくてもいいんだな!」
「どうしてそうなる! ばれたら1対1とほとんど変わらなくなるだろうが!? 頼むから上達してくれ!」
「じゃあ、手数で勝負するよ、ロペスもルディも練習相手よろしく!」
と、言うとロペスは肩を落とし、ルディは苦笑いで返してくれた。
拠点に戻ると心配そうに座っていたイレーネがぱっと顔をあげ、つまらなそうにしていたペドロを引っ張って来た。
「アールクドットの偵察が来ててルディと鉢合わせしてたよ」
そう説明すると、ロペスとルディが
「すごいな! 2人とも
ペドロが自分も行きたかった、とつぶやいた。
ルディと部下たちが食事を済ませて、ルディ以外の4部隊で獲ってきた獲物に
テントの中で無音で闇を出したり引っ込めたりすれば、外からは起きてるか寝ているかすらわからない。
イレーネと一緒に魔力を増加させる訓練をしてから寝る。
非力な体と立場の弱い私達は、高めた魔力を持って初めて自由になるのだ。
2日目の朝、イレーネを起こさないようにそっとテントを抜けて(多少のことでは起きないのだけど)ペドロの所に行くと、眠い目をこすりながらイレーネから借りたトランプで遊んでいるペドロと見習いがいた。
「おはようさん、交代するよ」
「そうか、このゲームが終わったら頼むよ」
手元のカードをにらみながら答えた。
ゲームの終わりを待っている間に、肉の温度を確認し、少し強めにかけ直した。
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