131話 命を奪う覚悟

「さて、突然だが君たちは冒険者ギルドに登録しているかな?」

「してないです。」

「私はしてるよ。」

「え、アリュールはしてるんですか。」

「私のいた村は薬草がいっぱい採れるから、それを売るために12歳になって直ぐに登録したんだよ。登録してる方がお得だから。」

「君はやっていないのか。ダンジョンに入るには冒険者証が必須なんだ。僕が付き添いで行くとしてもね。」

「そうなんですか。」

「今日の放課後にでも登録してくるといい。なんなら僕が推薦してあげてもいい。」

「推薦されると何かあるんですか?」

「僕と知り合いの職員が困ったら助けてくれるとか?」

「疑問形で言われても。というか、冒険者やってるんですね。依頼を出す側かと思ってました。」

「僕は基本的に依頼を出す側ではあるんだけど、お金がどうしても必要なときは依頼をこなす側に回るんだよ。」

「じゃあ、今日行ってみようか。」

「カレンに一言言わないと後でうるさそうですね。」

「そうなんだ。」

「カレンはこの手の話が大好きなんですよ。カレンが冒険者は無理だと思うんですけど。」

「どうして無理なの?」

「カレンのことです、冒険者は強い魔物と戦いに行くと思っているでしょう。でも、現実はそんなことないですから。失望するに決まってます。」

「うーん。カレンちゃんはそこら辺分けて考えてると思うけどな。」

「そうだといいんですけど。」

「そのカレンというのは?」

「私の友達ですよ。いい子なんですけど、冒険者への憧れが強いので、どう思うことか。」

「これがカレンちゃんが言ってた過保護モードかぁ。」

「何か言いました?」

「いや、別に。」

「まあ、とにかく。冒険者登録はしておくこと。冒険者証は身分証としても使えるから持っておいて損はない。」

「分かりました。」

「便利だからね。そういえばメイちゃんは魔物倒したことある?」

「ありますよ。どうしてそんなことを?」

「どんな感じなのか気になって。」

「どんな感じなのかですか。普通ですよ、人間や他の動物と同じように斬れば、血が吹き出ますし、殴れば悲鳴をあげます。覚悟もなく殺せば、吐きますよ。」

「そうなんだ。やっぱりそうなんだね。」

「魔物が害になることもある。それは誰かが排除せねばならない。しかし、彼らも生きているということを忘れてはいけないよ。」

「はい、分かりました。」

「ところで、ダンジョンの魔物は生物ではないと言われているらしいですね。」

「そうだな。斬っても血が出なかったり、殴っても怯むだけで、痛みを感じているのかも分からないと聞いたな。」

「え?じゃあ、何なんですか?」

「人間を誘おびき寄せるエサだ。そのエサから有用な物が採れるからな。」

「何のために?」

「知らんよ。ダンジョンに聞いてくれ。というわけで、今日は解散だ。」

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