101話 回想

「次は俺の番だな。」


一か月前

「狙われすぎだろ!対処してもキリがないぞ。」

「もう少しの辛抱だ。もう少しで攻撃の手が止まるはずだよ。」

「また政治か?」

「そうだよ。ヤツらは既に罠に掛かっているからね。攻撃の手が緩んだら、怪盗シグルの出番だよ。王都に行って一網打尽にして欲しい。天理教団と繋がっている輩は必ずいる。そうなるように罠を仕掛けたからね。」

「分かった。そういうことなら俺たちの出番だな。」


数日が経ち、

「襲撃者が本当に来なくなったな。」

「とりあえず敵の頭を潰したからね、ヤツらは組織だって動くことが出来ないんだよ。そういうわけで、王都に行ってきてくれ。」

「ここの警備は大丈夫か?」

「大丈夫さ。散発的に来る暗殺者くらいはここの警備兵でも止められる。後はメイくんが色々罠を仕掛けてるらしいから、危なくなったら立てこもるよ。」

「それを使えばもっと楽ができたのでは?」

「万が一の時に使えって言われてたから。」

「襲撃は万が一ではないのかよ。」

「君たちがいたから万が一ではなかったんだよ。」

「もし、帰ってきて死んでたりしたら、ただじゃおかねえからな。」

「もちろんだよ。まだ死ぬ気は無いよ。」


翌日王都に出発することになった。

「カイト、そういうことはもっと早く言ってくれない?急すぎるのよ。」

「言ってなかったか?」

「言われてないから言ってるんでしょうが!」

「ごめんて、許してくれ。」

「馬車が用意出来ましたぞ。」

「ありがとうセバスさん。」

「いえいえ、礼にはおよびません。」

「じゃあお土産買ってくるよ。」

「カレン様によろしくお願いしますね。」

「旅のご無事を祈っておりますぞ。」


王都に行く馬車の中で、

「そういえばさ。なんでセバスさんには敬語なんだ?」

「先輩だし、歳上だからよ。」

「俺も歳上だぞ?もう少し敬意というものをだな。」

「はぁ?アンタに敬意なんていらないわよ。今のままで十分よ。」

「俺だってな?傷つくんだぞ?」

「そんな繊細な心持ってないでしょ。ってそんなことはどうでもいいのよ。ターゲットは?」

「ターゲットは貴族が5人、商人が3人だな。」

「これが今回の襲撃に関わってたの?」

「いや、ベルティスク侯爵の派閥らしい。侯爵が天理教団と繋がっていたならその証拠が必ずあるって訳だ。」

「ベルティスク侯爵か、名前だけは聞いたことあるわね。」

「自領で圧政をやったり、平民を見下したりする典型的なお貴族様だな。」

「商人は?派閥とか関係ないでしょう?」

「ベルティスク侯爵の御用商人だ。取引の記録が欲しいってさ。」

「なるほど、あの人信用できないけど、仕事ができるから信頼せざるを得ないのよね。」

「あの人は屋敷で唯一の味方だからな、親近感湧いてるんだよな。」

「絶対良いように使われて、いつか切られるのよね。」

「嬢ちゃんがいる限りそんなことはしないさ。あの人ほど嬢ちゃんを恐れている人はいない。」


作戦会議は続いていく。

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