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「司。外看板、片付ける時間だよ」

「わかったよ、ルカ」

 ぼーっとしていた俺は、普通にそう返事した。してから相手に気づく。

「つかっちゃんって、わかりやすいわあ」

 笑いながら、坂井ちゃんは言った。

「さっきまでつまんなそうにため息ついてたのに、今の顔ったら」

「人が悪いぞ」

 俺は立ち上がって看板を中へ持ってくると、小糸さんの机に座った。ここの方がカウンターと話しやすい。

「坂井ちゃんはさ、本当にルカのこと、好きじゃないのか?」

「恋愛対象かって意味ではノーね」

 イスごとこっちを向いて、坂井ちゃんが答える。

「どっちかっていうと、ルカは憧れなの。ルカになりたいって気持ちなんだ。わかる?」

「まあ、かわいいからな」

「どうせ私はかわいくないですよーだ」

 と、坂井ちゃんは、ほっぺたを膨らませた。

「そういう意味じゃないんだけどさ」

 俺は笑って、それから真顔になった。

「その。ルカってさ、俺のこと、どう思ってると思う?」

「好きだと思うよ。だって、いつもつかっちゃんの話してるもの」

「本当に?」

 やばい。顔がにやけてしまう。

「つかっちゃんも好きなんでしょ。だったら、さっさと告白しなさいよ。いつもなら、ぐいぐい行くくせに」

「ルカは別なんだよ。嫌われたら、俺、きっと傷つく……」

 本音がこぼれたけど、坂井ちゃんなら構わなかった。彼女なら理解してくれると知っていたから。

 坂井ちゃんはわざとらしく大きなため息を漏らすと、両手を挙げた。

「じれったいなあ、もう。応援してる身にもなってよ」

「仕方ないだろ。こんなの初めてなんだから」

 愚痴っぽくなってきた俺とは反対に、坂井ちゃんは勇ましく立ち上がった。

「いいわ。私がお膳立てしてあげる。今度の日曜、何があっても空けといてね」

 と、鼻息荒く言い放った。

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