10
「司。外看板、片付ける時間だよ」
「わかったよ、ルカ」
ぼーっとしていた俺は、普通にそう返事した。してから相手に気づく。
「つかっちゃんって、わかりやすいわあ」
笑いながら、坂井ちゃんは言った。
「さっきまでつまんなそうにため息ついてたのに、今の顔ったら」
「人が悪いぞ」
俺は立ち上がって看板を中へ持ってくると、小糸さんの机に座った。ここの方がカウンターと話しやすい。
「坂井ちゃんはさ、本当にルカのこと、好きじゃないのか?」
「恋愛対象かって意味ではノーね」
イスごとこっちを向いて、坂井ちゃんが答える。
「どっちかっていうと、ルカは憧れなの。ルカになりたいって気持ちなんだ。わかる?」
「まあ、かわいいからな」
「どうせ私はかわいくないですよーだ」
と、坂井ちゃんは、ほっぺたを膨らませた。
「そういう意味じゃないんだけどさ」
俺は笑って、それから真顔になった。
「その。ルカってさ、俺のこと、どう思ってると思う?」
「好きだと思うよ。だって、いつもつかっちゃんの話してるもの」
「本当に?」
やばい。顔がにやけてしまう。
「つかっちゃんも好きなんでしょ。だったら、さっさと告白しなさいよ。いつもなら、ぐいぐい行くくせに」
「ルカは別なんだよ。嫌われたら、俺、きっと傷つく……」
本音がこぼれたけど、坂井ちゃんなら構わなかった。彼女なら理解してくれると知っていたから。
坂井ちゃんはわざとらしく大きなため息を漏らすと、両手を挙げた。
「じれったいなあ、もう。応援してる身にもなってよ」
「仕方ないだろ。こんなの初めてなんだから」
愚痴っぽくなってきた俺とは反対に、坂井ちゃんは勇ましく立ち上がった。
「いいわ。私がお膳立てしてあげる。今度の日曜、何があっても空けといてね」
と、鼻息荒く言い放った。
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