第3章 ロレックス・デイトナさーん、いらっしゃーい!

エピソード14:ダボハゼ息子。スルメで鯛を釣る

冬。

ここ3ヶ月、ヘビーで予約を入れてくる30代のとっちゃん坊やから真面目なラインがきた。

極端にムッチリした小太りで、目が細く、やたらニンニク臭くて見た目最悪。

でも、しつこくはない。

でも、こっちも、無駄に常連さんを作りたくないのでたまに断っている。

断るとすんなり諦める。

諦めるとまたしばらくして事務的に予約を入れてくる。

余裕があるんだか無いんだか、都会人なのか田舎者なのか、頭いいんだか悪いんだか、なんだかよく分からない。

そんなニンニク臭い、いい歳した遊び人からデートではなく個人的に相談があるという。ちゃんと小遣いも払うという。

もともとこの男は金払かねばらいがいい。

IT関連というのだろうか、企業の事務システムのソフトウェアを開発する会社の社長の息子で、ロクに仕事をしない名ばかり専務の典型的な「世襲経営者」だ。

その世襲専務から相談ねえ。

何だろう?。

ボンボンのくだらねえ相談だろうなどうせ。

面白くとも何ともねえが、とりあえず金もらえるからちょっと暖まりにこのボロ部屋でるか。

私は、朝風呂も入らず、テキトウな化粧で、体臭漂わせながら待ち合わせの喫茶店に行ってやった。

マジかよ……!!

「会社に何か変な王冠のマークの箱があるんだけど、それ、君が言ってたロレックスじゃないかなあ」

と世襲くんがマヌケに仰せになる。

オー・マイ・グッドネスこのクソ野郎!。

「前々から気になってたんだよね、王冠みたいなマーク。俺、時計、興味ないから」とのたまいあそばす。

早く言えよこのボンクラ馬鹿スネかじり息子!。

どうせ親父の投資ひんだろう。早く見せろよ人間のクズが!。

おッと興奮した。

焦りは禁物。

冷静に冷静に……。

私は、素知らぬふりをして話を進める。

「本物かどうか見てあげるよ」

と親切を装う。

すると当然ボンボンだから、

「君、詳しそうだったからね、たぶん分かるだろうね」

と、お人好しで乗ってきた。

心臓バクバク。

必死に抑えたが、

〝そんなに言うんなら見てやるよ、早く行こうぜ!〟

みたいに浮足立っていた。

パパ活始めて一年チョイ。ついに悲願のロレックスか?。

夜、私と息子は、父親の会社へ向かった。

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