第3話

「魔法が使えるようになったのか・・・・・・」

千草は呟いた。


そして、その日は家に帰った。

部屋には変身コンパクトがある。

変身コンパクトを持って、鏡の前で千草は言った。

「変身!」


すると、コンパクトから光りがあふれ、魔法少女の衣装に変身した。

「すげえな・・・・・・」

千草は、鏡に映った自分の姿を見てため息をついた。


「おっと、遊んでる暇は無いんだった。今日から早速コンビニバイトだ」

千草は、コンパクトを開いて、言った。

「変身解除!」

すると、もとのTシャツ、ジーパン姿に戻った。


慌てて、コンビニに駆け込む。

時間より5分前に着いた。

「ギリギリだね」

店長の名札には宮本と書かれている。


「店長、ごめんなさい」

「いや、5分前なら問題ないよ」

店長は妙に優しかった。

話していると、もう一人のバイトが来た。


「あれ? 新しい子?」

「小野 千草(おの ちぐさ)です。 よろしくお願いします」

「よろしく。私は加川 菜央(かがわ なお)」

高校生だ。制服を着ている。俺は少し興奮した。


「じゃあ、バイトの内容は加川さんから教えてあげて」

「はーい」

「よろしくおねがいします」

そう言って、俺はメモを取り出した。


「あれ? 千草って真面目系? メモなんか出しちゃって」

いきなり呼び捨てかよ、と思いながら俺は微笑んだ。

「物覚えがわるいもので」

「そう。何度でも教えるから遠慮しないで聞いてね」

良い子だ。

俺は昔の上司に聞かせてやりたいと思いながら頷いた。


コンビニの仕事は多岐にわたった。

メモはすぐに真っ黒になってしまった。


「ま、徐々に覚えれば良いよ」

「はい」

菜央は優しかった。


「ところでさ、店長加齢臭すごくない!?」

「え!?」

俺はぎくりとした。


加齢臭といえば、俺も最近気になりだしたお年頃だった。

とはいえ、いまは18才の魔法少女。

菜央に話を合わせる。

「ちょっとだけ、気になりますね」

「だろ? なんか気にしてオーデコロンっていうの? 付けてるっぽいけどよけい悪いって感じ」


俺は店長を哀れに思った。

宮本 和男45才、妻子持ち。

陰で、こんなことを言われる真面目な店長。


「おっさん、くせーよって言いたくなる」

「そうですか」

俺はがっくりした。

俺も加齢臭が気になり、シーブリーズを愛用しているが裏でこんなこと言われてたのかな。


「あ、いらっしゃいませ」

「いらっしゃいませ」

お客が来た。

俺、もとい、私たちは愛想良く挨拶すると仕事に取りかかった。


お客がレジに来た。

「これ、レンジで温めて」

「は!?」

差し出されたのはアイスだった。

「とけちゃいますよ?」

「いいからさ、名前、なんていうの?」


ナンパだったらしい。

俺は容赦なく、アイスをレンチンして、お会計をした。


「ちえっ、愛想ないなぁ」

お客は去って行った。


「また来たね、あの客いつも何か私に話しかけるんだよ」

菜央が言った。

「今日は、千草が標的にされちゃったね」

俺は曖昧な笑みを浮かべた。

菜央は顔を近づけるくせがあるらしい。


菜央の可愛い唇が、耳元でささやくと、俺はドキドキした。


「それじゃ、今日はここまでで良いよ、上がって」

「はーい」

菜央と俺は店を後にした。

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