転生?チート?悪役令嬢?何ソレ!いいから私の体を返して!

水野 ナオ

プロローグ~佐々木チハル~

 佐々木チハルが目を覚ますとそこは見知らぬ天井だった。


「お嬢様! お目覚めになりましたか! 早く旦那様と奥方様をお呼びして!」

「「はい!」」


 メイドさん?


――


「え……っと」


 ズキンッ!


「痛っ!」


(頭が痛い。何がどうなって……)


――


 チハルは思い出していた。


(確か……私、会社……会社に行こうと車を運転してたら……そうだ。赤信号だから止まってたんだ。そしたら後ろから物凄い衝撃があって……)


 居眠り運転のトラックに衝突されて、交差点に押し出されてそのまま亡くなった。


「やっと目が覚めたか! 心配したんだぞ」

「大丈夫? 気分は悪くない?」


――


(この人たちは……私の両親?)


「あ……あの……まだ気分が悪いから……」

「もう少し眠らせて上げよう」

「何かあったら直ぐに呼びなさいね」

「では頼んだよ」


――


 看病はメイドに任せて両親は部屋から出ていく。


「え~っと……」


(この子……私? のしゃべり方ってどうだったの?)


――


 記憶を辿っていくと、どうもこの子の口調は少し厳しいみたいだ。


(何、この傲慢で自己中心的な……私には無理だよ)


「鏡を持ってきて頂いてもよろしいかしら?」


(こんな感じかな?)


――


「――えっ! あ、はい」


(どうやら違ったようだ……お願いじゃなくて命令するのか……命令とかムリだから!)


「どうぞ、お嬢様」

「あ、ありがとう」

「――!」


 お礼を言っただけでも驚かれたが、もう口調とか性格とか考えないことにした。

 そして受け取った手鏡で恐る恐る自分の顔を確認してみる。

 

(やっぱり、私……佐々木チハルじゃなくなってる。これは転生? 前世の記憶が蘇った?)


――


 考えてもわからなかったが、自身の顔を見て気付いたことがある。


(若い……)


 記憶を辿ると15

歳らしい。


「ごめんね。少し眠るからひとりしにてちょうだい」

「は、はい」


 メイドさんが部屋から出ていくのを確認して考える。

 もう一度手鏡で顔を見る。


――


「本当に死んじゃったんだ……」


 もう家族にも友人にも会えない。やり残したこともたくさんある。


「うぅ……お父さん、お母さん、ごめんなさい……」


――


 ちはるは一頻ひとしきり泣いた後、現状把握に切り替えた。


(私は死んで生まれ変わった。認めよう。しかしなぜ今頃記憶が蘇ったの?)


 いくら考えてもわからなかった。

 まだ死んでしまった悲しさは残っているが、第二の人生を前世の分まで謳歌しようと心に決めた。


「今度は長生きしよう」


――

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