⑤魔王城のバーベキュー会場──最終決戦?シドレのパンツは白!〔1〕
特殊大剣を振り回しながら「あひゃはははっ」と奇声を発して、向かってくる狂剣士ワオ・ンの前に立ちふさがった一人の女性がいた。
自称、魔法少女シドレだった。
シドレが自分のスカートをめくり上げて、白い下着を見せると、ワオ・ンの黒白目はシドレの純白三角地帯に、クギづけになってワオ・ンの暴走が止まる。
「おぉぉ、純白」
閉じた目を開けたワオ・ンの目は、いつもの非常識剣士の目にもどっていた。
シドレが言った。
「正気にもどったドスドス?」
「あぁ、狂戦士の勾玉の力を制御できた……もう大丈夫だ」
「ムチャするドス、赤いガイコツ傭兵に対抗するために、狂戦士の勾玉を体内に取り込むなんて無謀ドスドス」
「心配かけて悪かったな……シドレが見せてくれた純白下着の白さは一生目に焼きつけて」
「その記憶は忘れて欲しいドス……ワオ・ンはもう、魔王城に帰るドスドス」
「そうだな」
ワオ・ンは盗賊軍団に、軽く片手を挙げると。
「それじゃ、そう言うコトで」
そう言い残して、去っていった。
ワオ・ンがいなくなると、シドレはタメ息を漏らす。
「さて、次はドス」
シドレの目は、道に半分ほど埋もれているヌネ野に向けられた。
「ちょっと、目を離した隙に勝手なコトばかり……やれやれでドスドス」
これから、どうするか思案しているシドレに、小学生くらいの女の子の声で、話しかけてきた人物がいた。
「シドレ、買い物カゴ重いよぅ……お肉とお野菜は明日、魔王城の方に直接、お店の方から届けてくれるようにシドレが手配してくれたけれど……バーベキューパーティーって、他に何が必要なの?」
勇者っぽい格好をした少女──魔勇者の娘『甲骨』だった。
小学生年齢の甲骨が言った。
「本当に明日、お父さんを倒した。おぞましい赤いガイコツの化け物が城に攻めてくるの?」
「情報が入ってきているドスドス……この宿場に到着しているみたいでドスドス」
シドレは、チラッとレミファとヲワカの方に視線を向けてから、すぐに視線を反らす。
「シドレが話してくれた赤いガイコツの怪物って……小山のように体が大きくて、角が頭や肩に生えていて、赤いカギ爪の手をしていて、牙が生えた口で捕まえた子供をバリバリ頭から食べるんだよね……骨の尻尾と骨コウモリの羽根を生やしていて」
遠くから甲骨がイメージしているクケ子の容貌を聞いた、レミファとヲワカは手を横に「ないない」と振る。
シドレが言った。
「赤いガイコツを成敗するために、各軍団に栄養をつけてもらって挑んでもらいたい……そのためにアチの世界で行われている、バーベキューパーティーを魔王城でも開催する……素晴らしいお考えですドスドス」
その時、ヌネ野が四肢姿勢でゆっくりと埋もれていた体を起こす。
小学生姿の甲骨が、成人女性の妹に言った。
「ヌネ野、買い物終わったから。お姉ちゃんと一緒に魔王城に帰ろう」
「うん、お姉ちゃん大好き……なんて言うと思ったか!」
四肢で跳躍したヌネ野は、甲骨に向かって肉爆弾落下をする。
空中で叫ぶヌネ野。
「しゅねぇ!」反抗期だった。
シドレが指笛を鳴らすと、どこからか大量のモフモフキジが現れ、球体モフモフ生物の群れはヌネ野を包み込むと魔王城に向かって流れて行った。
まるで、サバンナの草食動物の大群のような、モフモフキジの川の中から、ヌネ野の笑い声が響いてきた。
「ダ、ダメェ! 脇は弱いから、ひぃぃぃ! あははははははっ!」
シドレは、丁寧に一礼すると甲骨と一緒に去っていった。
翌日、クケ子たち一行は侵入者を拒む迷路の入り口にいた。
意気揚々と、骨の拳で骨の手の平を叩くクケ子……ミシッと骨が鳴る。
今日のクケ子のウイッグは、腰まであるネギ色の縦ロールツインテールだった。
頭には長いハチマキを巻いて、背中に垂らしている。
気合いに満ちた、クケ子が言った。
「みんな、行くよ。いよいよ二度目の魔王城突入だ」
入場口でギルドから宿泊サービスでもらった、魔王城侵入者向けの無料入場チケットを見せて、迷路に入るクケ子一行。
少し進むと壁に『本日赤いガイコツ傭兵さまご一行貸しきり』の、書き札が吊るしてあった。
書き札を見てレミファが言った。
「いつもは、魔王城の内部も公開可能な部分は、一般人にも開放しているぜらが。今日はあたしたちが来るから一般客の見学エリアは閉鎖されているぜら」
「それだけ、魔勇者の娘も本気で我らを迎え撃つ覚悟でござるな」
昨日、買い物カゴを重そうに持ってバーベキューパーティーの買い出しをしていた、甲骨の姿を思い浮かべながらヲワカが呟く。
「違うと、思うでありんす」
やがて迷路の道は、二つに分かれ。なにやら矢印と立て看板が設置されていた。
看板の文字を読むクケ子。
「えーと、なになに『二択クイズです、間違った答えの道を選択すると。鋭い剣が生えた落とし穴に落っこちます』これって、犠牲者のガイコツが剣に刺さっているっていう。あの定番ビジュアル?」
「クイズの問題は、なんて書いてあるぜら?」
「『問題・自称魔法少女のシドレは、術師の術を無力化する力がありますが……では、術を無力化後のシドレに起こる変化は? A・服を脱がされてパンツ一丁にさせられる、B・シドレの時間が止まる』レミファ、答えわかる?」
「これは引っかけ問題ぜら、Aの『服を脱がされてパンツ一丁にさせられる』ぜら。クケ子どのを先頭に選んだ道を進むぜら」
迷路の先頭を歩くクケ子が、少し距離を開けて後方を歩くレミファに訪ねる。
「ねぇ、この通路で本当に正解……どわぁ!?」
クケ子の姿が、いきなり足下に開いた四角い穴に消える。
ヤザが穴の底に向かって声をかける。
「大丈夫でござるか? クケ子どの!」
落とし穴から這い出してくるクケ子。
「ふぅ、驚いたガイコツじゃなかったら串刺しで死んでいた……これ、穴の底に立ててあった剣、引き抜いて持ってきた」
そう言ってクケ子は一振りの剣を、ヤザに手渡す。
渡された剣を眺めるヤザ。
「なかなかの逸品でござる……武器屋に売れば、それなりの高値がつく剣でござる」
クケ子たち一行は先へと進む。今度はケンタウルスの馬賊が、二人の宝箱の前で陣取っていた。
馬賊男が言った。
「どっちか一方には宝が、もう一方はミミック箱で開けたら牙を剥いて襲ってくる……どっちが本物の宝箱だぁ」
ヲワカが弓につがえた魔矢を二つの宝箱に交互に向けると、ミミックの偽宝箱は慌て逃げ出した。
残った宝箱を指差してレミファが言った。
「クケ子どの、宝箱の中身確認を」
クケ子が臆するコトなく、宝箱のフタを開けてしばらく中にあったモノを眺めてから、フタを閉じると一言。
「こんなのいらない」
そう言って、宝箱を蹴飛ばした、クケ子たちは次のポイントへと向かった。
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