第233話 修羅場 6
『変な坊主に鬼や妖怪』の大乱闘を、見物人のようにながめていると、あの大火の時に少女を必死で助けていた小さな姫君が、少し離れた場所から、勢いよく向こうから走ってくるのが見える。
暗がりに浮かぶ姫君の顔は、どこかで見たような、とても姫君らしくないきりりとした顔。
『あんな小さな少女が、多人数掛け、いやあれだ、百人組手とかより酷い状態なのに、必死に駆けつけようとしている……本当のヘタレはわたしだよ……』
平安の事情にまったく疎い
「わ、わたしも手伝わなきゃいけん! う――ん、でもいまさらどんな顔をして……うん?」
先程見た東宮と呼ばれていた皇子様っぽい少年の顔が、頭の中でフラッシュバックする。やっぱりあの少年をわたしは知っている。
「誰だっけ? 痛い! いて! いてててっ!」
鋭い痛みが走る頭の中の記憶を、必死にたぐり寄せていると、ふわりと音もなく、おどろおどろしい十二単姿の幽霊が、岩の間から湧き出した紫色の霧の中から姿を現すと、音もなく“つ――”っと目の前を横切って、お姫様に近づいてゆく。
あれはさっきの十二単を着た
『あ――! 思い出した! あの時の悪者看護師――! あと、あの皇子様の顔は、昔の朱雀部長!』
葵の記憶の中から、彼が消えたように、
なぜならば、彼女は葵と違い、朱雀帝の今現在の顔を、“朱雀部長”の顔を、昔から知っていたし、
“朱雀部長”は、
もちろん葵が、注意も払っていなかった“悪者看護師”こと、
『なんだか分からないけど、ここで頑張らないと、いずれ“朱雀部長”のご先祖様が死んでしまう?! もしかして他の大学の嫌がらせ?! うちの大学の三十連覇を阻止しようと、部長とわたしを消そうとしてる?! お姫様は巻き添えになってる?! 絶対に助けなきゃっ!』
事情をまったく分からず、とんでもない陰謀論を思いついて、焦りに焦った
彼女は、さっと手を伸ばして“悪者看護師”を捕まえようとするが、まるで、なにもなかったように掴むことはできず、ちらりとこちらを見た女は、手をこちらに
するとすぐに、じわりじわりと自分は、足元から薄れてきて「このまま黙っていれば、元の世界に戻してあげるわ……」そんな声が頭の中に響いた。
「それは助かります……なんて訳あるか――! 許さんっ! 絶対に絶対許すか――! “六”こいつが犯人!」
そう“六”に大声で叫んだが、まったく聞こえていない。まるで“透明人間”にでもなってしまったようだ。
すでにジワジワと姿が消え出している。消える前に、なんとか伝えようと、
『あの子なら、自分が“
「ちょっと話を聞いて――!」
「えっ?!」
「あっち! 本体は、あの
いきなり声をかけられて、不思議そうな顔で振り返ったお姫様に、
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