第1634話 【エピローグオブネオ国際探索員協会乳・その5】ちょっとしたいざこざ顛末記 ~デルタウェアでは写真撮影中~

 それからネオ国協本部の議事堂の階段に理事たちが並んだ。

 本当は屋外でやる予定だったのだが、なんか議事堂に穴が空いて人工太陽の陽光が差し込んで来るしもうここで良いかという事になった。


 写真撮影の時間である。


 階段で撮影することになったので、日本の内閣が組閣された時みたいな写真をイメージして頂けると幸いである。


 最前列は女性陣。

 左から最年少のエヴァンジェリン・ピュグリバー。

 摘まみたくなる脇腹のシンディ・クレメンス。

 ペヒペヒエス。


 お忘れの方のためのペヒペヒエス。

 デトモルト人には性別の概念がないため、本人の意思で♂と♀のどちらにもなれる。

 ペヒやんはおばちゃんなので、♀である。


 2列目。

 号泣で仕事を果たしたパーフェクト雷門さん。

 式典中はずっと寝てた辻堂甲陽。

 司会進行役も立派に務めた川端一真。


 最後列。

 デカくて金色なのでこの位置しか考えられない帝竜人バルナルド様。

 孫の活躍が見られてご満悦の逆神四郎。


「あれ!? 私の場所は!?」

「あ。南雲さんも入るんでしたっけ? さーせん。忘れてました」


 写真撮影の仕切りを担当していた山根くんが「あちゃー」とおでこを叩いた。

 多分、いや確実にどこかで気付いた顔をしている。


「じゃあ、南雲さんはシンディさんに抱っこしてもらうっすかね」

「イエェェス! カモーン! 修一!!」


「バカじゃないの、山根くん!! そんな失礼なことできるかい!! この写真、オフィシャルなヤツでしょうよ!! ずっと残るのよ、この写真が!!」

「南雲さん。時間押してるんすよ。じゃあ、バルナルド様に肩車してもらってオナシャス。肩のトゲにくっ付く感じで」


「余に任せておくが良い。南雲。余の肩のトゲは今日、この瞬間のために生えておったと知った」

「ええ……。その二択しかないんだ……。じゃあ、バルナルド様、よろしくお願いします」


 山根くんがカメラを構えてパシャリ。

 特に感動的なアレやコレも一切なく「はい、撮りましたー」で終えた。


 それから各メディアによる撮影時間が5分ほど設けられて、9人がフラッシュの餌食になった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃のデルタウェア近海、からちょっと離れた場所。


 お忘れの方のためのデトモルトと現世の境界線。

 ニュージーランドの近くにある。

 かつてはコピー戦士号泣アアアアα型の起動実験を行ったりもした。


 その境界線を越えて、デトモルトから戦艦ガンモドキが現れようとしていた。

 中に乗っているのはピースの残党。


「今こそ、ネオピース旗揚げの時!!」

「おうとも!! ネオ国協に乳なんて付ける素っ頓狂どもに任せられるか!!」


 それはそう。

 もうネオ国協に乳離れの時は来ない。


 デトモルトで再起の時を待ち構えていた上位調律人バランサーたちが9人。

 偶然にもネオ国協の理事と同じ人数、ペヒペヒエスが造って放置しておいた異空間航行可能な戦艦ガンモドキに乗り込んで、今こそ武装蜂起しようとしていた。


「ふん。……チュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュ」

「何故だ。どうして私まで連れてこられた……」


 戦艦ガンモドキの前には宙に立つ男が2人。


 片方はオールバックになでつけられたロマンスグレーの髪がダンディ。

 この世界の組織の指導者は基本的に苦労人。

 元アトミルカの実質的指導者。バニング・ミンガイル。


 もう片方は足元まで伸びた白髪をマフラー状にして首に巻き付ける。

 この世界の組織の指導者のはずなのに、当人は苦労知らずにやりたい事をやり切った。

 元ピースの首領。ラッキー・サービス。


「ふん。俺の指示に背いた者どもか。どうせこのタイミングで動くだろうと思っていた」

「……そう言えば。お前の作ったピースには指揮系統に問題があったな。3つしか階級を造らず、しかも最上位を4人とかにするからそうなるのだ」


 戦艦ガンモドキの艦橋では「サービス様だ!!」と声が上がった。

 大音量のスピーカーで呼びかけが始まる。


『サービス様!! 我ら、再起の時を待ちわびておりました!! どうか、今一度! 我らを率いてください!! そしてネオピースの旗揚げを!!』


 サービスさんが練乳を吸い終える。


「ふん。ズッ友・ミンガイル。ヤツらの座標は?」

「私に聞くな。どう見てもまだ異空間の中だ。ええい。結局答えさせられるのか!! ザールも連れて来るのだった!! ……今なら現世の皆には気取られんだろうな」


 サービスさんが新しい練乳の封を開けた。


「チュッチュチュッチュチュッチュ。古き時代に囚われた貴様らに新しき革新の世は作れん。機は逸したと何故分からん」

「正直に言え。今、ピースの残党に騒がれると自分の恩赦が一瞬で消えるから迷惑だと」



「ふん。迷惑だ!! デトモルトに戻れ!!」


 恩赦がなくなったら自由に歩き練乳できなくなるのだ。



 戦艦ガンモドキの主砲に煌気オーラがチャージされ始める。

 『サービス様!! 貴方は変わられてしまった!!』という失意の言葉と共に。


「あー。私が言うことでもないが、こいつは今な。練乳吸うのに忙しいようなので軽く言っておく。不本意ながら、な。このサービスという男、中身は何も変わっていない。日和見主義をキメているのは貴様らなのではないか? ピース再興と言うのならば、これまでだっていつでもタイミングは作れただろうに。あ、おい」

「よゅやぇれぅはゃぬゅ!! 『エクセレント・サービス・タイム』!!」


「まだ私が喋っているだろうに!!」

「ふん。……ズッ友・ミンガイル。トドメはくれてやる」


 説明しよう。

 停止した時間を作りだす『サービス・タイム』を光線状に繰り出すのが『エクセレント・サービス・タイム』である。

 着弾した戦艦ガンモドキの時間は凍結する。

 スキル使用者のサービスさんが任意のタイミングで解除すると、戦艦ガンモドキだけは周囲の時間に遅れて動き始める。


 つまり、それまでに攻撃を繰り出しておけばスキル解除と共に周囲で爆発が起きる。


「まったく、平和になっても鍛錬は怠らんに限る。……塵となれ!! 『一陣の拳ブラストナックル連撃ラッシュ』!!」

「ふん。さすがだな。これはお前にこそ飲む権利がある。使え。上物だ」


 練乳で極大スキルの7連撃を賞賛するサービスさん。


「いらん。さっさと時間を動かせ。戦艦の連中も死にはせんだろう」

「ふん。やはりお前は甘いな。……練乳のように!!」


 ニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ。


 ニュージーランドのちょっと右の方。

 現世の海上に少しだけはみ出していた戦艦の先っぽが大爆発して異空間に押し戻されて行った。


『何故だ!? 何故ですか!! サービス様!! 我々は貴方を信じて……あ゛あ゛あ゛』

「ふん。信じるのは勝手だが、期待を裏切られたからと言って勝手に喚くな。みっともない。信じたものを見誤った、お前たちの失策だ。チュッチュチュでチュッのチュッチュチュッチュチュッチュか」


 最期に何言われたのかも聞き取れず、戦艦ガンモドキはデトモルトと現世の狭間にある異空間で消息を絶った。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして再びデルタウェア。

 六駆くんをはじめとする何人かは数百キロほど東の海で起きた、ちょっとしたいざこざを察知していた。


「良かったですね! だいたい計算通りにサービスさんが動いてくれて!! 南雲さん!!」

「そうだね。逆神くんの計算通りにね。恩赦で自由にしてあげたら、まずは過去の清算に行くだろうって考え方は私にはできないなぁ」


「ピースの残党が蜂起するかもとは予測してたじゃないですか」

「だからってサービスさんをぶつけようとはならないよ。君は本当に恐ろしい男だなぁ。逆神くん」


 こうして、今この時よりネオ国際探索員協会・乳の正式サービス開始と相成ったのであった。


 次回。

 発足式を終えた理事たちの感想戦。


 これでこの世界もようやく年を越せる。

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