第1601話 【エピローグオブバルナルド様の友達できるかな・その2】スマホをゲットした帝竜人

 クララパイセンが帝竜人バルナルド様の秘書に内定した。

 主な仕事は定期的にスカレグラーナに顔を出して、外の世界との接触を持たせ続けること。


 登校拒否のクラスメイトの家に通う友達想いの女の子みたい。


 とはいえ、パイセンも忙しい。

 昼まで起きてたら夜まで寝ないといけないし、たまに生活リズムが整った時は南雲さんのところへ行って任務を受ける事もあるし、アニメにゲームにラノベに漫画とサブカルチャーチェックの時間も必要。

 そうなるとバルナルド様のところへ行くのは週2が限界か。


 これはある意味で適性日数とも言える。


 パイセンが週5とかでスカレグラーナに通うと、多分バルナルド様が本気をお出しになられてどら猫にとって快適な空間を造り上げられることであろう。

 そうなるとミイラ取りがミイラ。

 パイセンを吸収したパーフェクトバルナルド様がお引きこもりあそばされるという哀しき未来が口を開けて待っている。


 もうネオ国協発足式まで2週間ないのに。

 それはいけない。もう理事の仕上がりチェックも済んだのに。それはいけない。


 そこで策を講じたのがノア隊員。

 前回バルナルド様が欲されたスマホ(竜人サイズ)を南雲さんとジェロード親方に一晩で造らせた。

 南雲さんが睡眠不足で死にそうになったが、氏にはコーヒーがある。

 ジェロード親方は文句を言いながらも「ほう。正確な直方体をイドクロアで打つのも意外と面白い」と結構ノリノリでやってくれた。


 世界に誇る日本本部のサーベイランスを開発した南雲さんと、ついに1度として折れることなく、六駆くんにパクられた時も刃こぼれすらしなかった大太刀ジキラントをこしらえたジェロード親方の技術がジャズる。

 そうして出来たのがスマホ(竜人サイズ)である。


 もうスマートどころかファットである。

 iPad6つ分くらいのサイズ感。持ち運びなんか考えられていないサイズ感。

 しかし中身は大変スマート。

 現行の最新機種よりもハイスペックな機能を持っており、よく考えたらパソコンよりもデカいのだから当然な気もするが、お高いゲーミングパソコンに匹敵する処理能力も保持。

 これで通話にゲームに何でもござれ。


 バルナルド様が大いなる一歩を踏み出された。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな訳でスマホをゲットしたバルナルド様のいるスカレグラーナ。

 コンバトリ火山からお送りします。


「見よ。ナポルジェロ。この美しい流線型を。余の手に馴染む。しかも耐熱、耐水と聞き及んでおる。つまり、うっかり火山の火口に落としても大丈夫」

「もうその話は8度伺いました。バルナルド様、お食事の時くらいスマホを置いて頂けませぬか」


「卿の進言を是とする。しかし、ナポルジェロよ。右手でご飯食べれば左手は空く。空いた手でスマホをいじっても問題はないと考えるのもまた必定よ」

「本日の夕飯はコロッケでございます。しかも半分はクリームコロッケ。新品のスマホが汚れましょうぞ」


 エピローグ時空で気付いたらお母さんポジションに定着した冥竜人ナポルジェロが苦言を呈す。

 そのやり取りを興味なさそうに横目で見ながらコロッケを貪るジェロード。


「ナポルジェロ殿。言っておくが我は造ると決めたものに手抜きはせぬ。汚れたら洗えば良い。ナグモの作った中身も耐水性に優れておるゆえ」

「ジェロード!! そのような事をバルナルド様に申すな!!」



「余は良き友を持った。ジェロードよ。卿の功績を大とする。……ヘブンバーンズレッドのガチャ引こ」

「おヤメになられよと申しておりましょうに!! 古龍を統べる帝竜がどうしてお行儀の悪いことを率先してなさるか!! これでは若い古龍に示しがつきませぬ!!」


 若い古龍という難しい日本語が飛び出した。



 結局、スマホいじりながら両手でコロッケをお召し上がりになられたバルナルド様。

 食後、渋い表情で鋭い爪を伸ばす。そしてスワイプ。


「もしもし。クララちゃん? 今、大丈夫であったか? これは非礼を詫びよう。名乗りもせずに余としたことが。余、余。余だよ、余。ピックアップキャラを天井まで引く覚悟でガチャ回していたところ、あと30連というところで引いてしまった。この場合、天井は目指すべきであるか?」


 ナポルジェロが洗い物をしながらジェロードに小声で訴える。


「おい、ジェロードよ。スマホをバルナルド様に御与えしたのはまずかったのではないか? このままでは通話もコンバトリ火山で済んでしまう。デルタウェアになぞ行かぬと申されるのでは?」

「知らん。我は造れと言われたものを造り、寄越せと言われたから差し出したまで」


「おのれ、ジェロード!! お前はいつもいつも自分の事ばかり!!」

「お言葉だがナポルジェロ殿。我は貴方よりも1000歳と少しばかり年下。若輩者を同格に扱われても困る。それを求めるならばあと1000年待ってくれ」



「明日の夕飯はふりかけにするからな」

「我はホマッハ族と共に食べてから帰る。それに鬼の者たちの料理も存外美味い」



 ちなみに八鬼衆が1人、哀愁のムリポとその部下たちは普通にスカレグラーナに移住しました。

 バルリテロリ人は生物の個体としての強度がそもそも高いので、高温地帯のスカレグラーナでも割と快適に過ごしている。


「うむ。クララちゃんのアドバイスを素直に聞こう。凸数を増やしておけば、のちのちガチャですり抜けが発生した時に凸数も増える可能性がある、と。つまりここからの9000円は必要経費であるな。然り。では、一旦通話を終える。……さて、南雲に電話を」


 バルナルド様が過去イチで生き生きとしておられる。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらは南雲上級監察官室。

 時刻は午後7時過ぎ。

 今日も愛する家族と日本、そして現世のために残業中の南雲さんである。

 そんな氏のスマホが震えた。


「はい。南雲です」

『余は帝竜人バルナルドである』


「ああ。バルナルド様。スマホの使い心地はいかがですか?」

『最&高である』


「それは結構でした。では、なにか分からないことでもありましたか?」

『うむ。南雲よ。卿に頼みがある』


 南雲さんは「伺いましょう」と応じた。

 バルナルド様が電話の向こうで言う。



『ペイペイをあと200000円ほど送ってくれぬか。天井2周したい』

「ええ……」


 バルナルド様がソシャゲ廃課金周回者リピーターへ進化なされようとしていた。



 南雲さんは「もうこれっきりですよ」と言って送金。

 ちなみにスマホを与えたのが本日午前7時。

 「これっきりですよ」と言うのはもう4度目である。


 驚異的な速度で現世の経済を回し始められたバルナルド様。

 もう理事のことなんか忘れておられるかもしれない。


「ああ……。どうしたらいいんだ……」

「ふんすー!! お困りですね! 南雲先生!!」


「お困りだよ!! ノアくん、助けて!!」

「ふんすっす! ここはボクに策があります。何事も過ぎたるは猶及ばざるがふんす。楽しいゲームも依存症になったら怖いという事をお伝えするために、お友達を増やすべきだとボクは提案します!!」


「逆神くんにお説教でもさせるの?」

「惜しいです!! 逆神と名の付く先輩までは合ってました!! 知ってますか、南雲先生! パチンコって実は遊戯、つまりゲームなんです!! ゲームで身を滅ぼしている先輩をご紹介して、こうなったら周りのお友達が離れていくよという事をナルド先輩にお伝えするのです!!」


「劇薬じゃないか……。その人とバルナルド様の関係性くらいノアくん知ってるでしょ? 大丈夫かな……」


 次回。

 お友達がもっと増えるよ、バルナルド様。


 悪そうなヤツはだいたい友達。

 毒を以て毒を制すことは出来るのか。

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