第1581話 【エピローグオブ南雲と川端のネオ国協理事仕上がりチェック・その5】辻堂甲陽VSパーフェクト雷門さん ~南雲一行、離席中にて~

 呉では選ばれしお嬢様がドモホルンリンクルを奪い合う『大殺戮武闘レクリエーション』というものがある。

 これは呉に住民票がある者だけに許された禁じられし遊びであるが、委任を受けた者が代理で殺戮レクっても良いと定められており、南雲さんから連絡を受けたよし恵さん(温泉旅行中)が辻堂甲陽を代理人と認定。


 要するに一言「……やりぃさん」と告げられたのである。


 ここに『大殺戮武闘レクリエーション』が開幕。

 公民館前には一般ばあちゃん(戦闘力Sランク探索員相当)たちによって急遽、呉コロッセオが20分ほどで造られる。


「あたしゃ今日の公民館担当の節子!! 『大殺戮武闘レクリエーション』の審判するけぇね!! さあ! 張った! 張った!! オッズの計算は玉ねぎさんがするよ!!」


 『大殺戮武闘レクリエーション』ではドモホルンリンクル1セットを1ポイントとしてちょっとした賭け事も行われる。オンラインカジノなんかよりもずっと刺激的かつ健全な遊び。

 現在のオッズはパーフェクト雷門さん勝利が10倍。

 辻堂甲陽の勝利が3倍となっており、これじゃ胴元が絶対に損するじゃないかと思われるかもしれないが、玉ねぎが1つ1つ丁寧に抽出したドモホルンリンクル(玉ねぎ)を放出するので問題はない。


「どっちの子も、準備はええかね!?」


「もちろんです。私はパーフェクト雷門ですので」

「かっかっか!! ついでも始めてもらって構わねえぜ!!」


「ほいじゃあ! 頑張ってりぃさんよ!! スタート!!」


 節子さんが手刀を振り下ろして地面を割ったのが開戦の合図。

 先に動いたのはパーフェクト雷門さんだった。


「エネルギー充填完了。『号泣アアアアアァン』全方位へ発射」

「面白いねえ!! 『断絶ブレイク』!!」


 耳を劈く号泣。

 音を断つ斬撃。


 双方が呉コロッセオの中央でせめぎ合い、爆ぜた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃の南雲さん一行。


「いやー。良かったんですか? 僕について来ちゃって。南雲さんと川端さんは見届けなくちゃダメだと思うんですけど」


「……コーヒーが飲みたくなったんだよ。たまにはカフェテリアの」

「私はブラジャーの紐を繕う続きがあったので」



 『大殺戮武闘レクリエーション』をガン無視して日本本部のカフェテリアへ転移完了していた。



 最初に無言で『ゲート』を発現した六駆くん。

 だってうるさいし気持ち悪くなるし、ここにいる意味ってありますかと言わんばかりに一時離席の構えを見せた。

 それに乗っかったのが南雲さんと川端さん。


「あれ? 六駆くんだー!! おーい!! 今日って南雲さんのお仕事手伝うんじゃなかったのー?」

「ステータス『あまりにも早い彼ピの捕捉。瑠香にゃんでも見逃しちゃった』を確認」


 カフェテリアで「とりあえずうるさい戦いが終わるまで時間潰して待ってましょうね」とおじさんトリオがコーヒー飲み始めたタイミングで、仁香さんとトレーニングを終えた莉子ちゃんがサラダパスタを食べていた。

 今日は芽衣ちゃんが学校なので瑠香にゃんが一緒。


 こうやって別に約束していないのに偶然カップルが出会うのに弱いのだ。


 特に女子は。


「もうお仕事終わったの? あ、南雲さんと川端さん! お疲れ様です!!」


 そんなでもなかった。

 男子は知らないけれど、特に六駆くんは。



「うおおおおお!! 莉子おおおおお!! もうこんなの運命だよ! デートしよう!!」


 恋愛という側面ではこの世界でも最弱の部類になったかもしれない。



「ダメだよー。1度引き受けたお仕事はちゃんとしなくちゃ! めっ! だよ!!」

「見ました!? 南雲さん!! 莉子の仕草がいちいち可愛いんですよ!! もう世界中で起きてる大半の事がどうでもよくなりそう!!」


 南雲さんの瞳が怪しく光る。

 これは思いもよらぬ援軍ではないのか。


 これから辻堂さんとパーフェクト雷門さんが殺り合っている呉に戻らなければならない。

 どう見ても六駆くんが乗り気じゃない。

 というか、下手したら「僕はこの辺で帰りますね」とか言い出しかねない空気だった。


 そこで登場した六駆くんの好きぴ。莉子ちゃん。

 思考と同時に口は動いていた。


 考えてから声に出すようでは二流。

 ネオ国協の総理事なんて務まらない。


「小坂くん。時間があるなら私たちと一緒に来るかい?」


 あくまでも「仕事中だけど君が望むなら来てもいいよ。逆神くんとイチャイチャしていいよ」と自分の優位性は譲らない。

 これが大人の交渉術。


「あ。大丈夫です。お邪魔になっちゃうと思うので」


 だが、こちらの莉子ちゃんは覚醒ハイパーアルティメット莉子ちゃんである。

 仕事と聞いているのにイチャコラするほど節操ない時期はとうに過ぎた。

 今は分別のある奥さんポジションへの移行期間。


 南雲さん、判断をミスる。


「小坂さん。ここにランジェリーショップ『OPPAI』の商品券がある。50000円分ほど。良かったら使ってくれ。清らかなおっぱいから見た理事の仕上がり。そんな意見を我々は求めている。どうだろう。時間が許すならば同行してくれないか」

「ふぇ? いいんですか!? 実は新しい下着が欲しかったんです!! わたしでお役に立てるなら、ぜひ!!」


 南雲修一。これまでは孤軍奮闘が多かった苦労人。

 だが今は背中を預けられる腹心がいる。


「川端さん……!!」

「謝意は結構ですよ。我らは一蓮托生。そう、左右のおっぱいのようにね」


 南雲さん。無言のグータッチを川端さんとキメる。


「じゃあご一緒します! 瑠香にゃんちゃん! 行こっ!!」

「………………………………?」


 南雲さんが全員のお会計を済ませてからカフェテリアを出た。

 そしてネオ国協理事仕上がりチェック部隊に莉子ちゃんと瑠香にゃんが加わった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして戻って来た呉では。


「かっかっかっか!! 善吉!! 悪かねえ仕合だったぜ!! その口の周りの兵装はペヒばあに直してもらいな! 今度は一直線に泣き声をぶつけて来な!! おめぇさんの号泣、なかなか筋がいいぜ! その威力を全方位に分散させるのはもったいねえ!!」

「マスター・辻堂。貴重なご意見をありがとうございます。うっぐぶぅぅぅん」


 もう『大殺戮武闘レクリエーション』の感想戦が行われていた。

 諸君。


 見慣れた対戦カードの処理をエピローグ時空ではこうする。

 覚えておいて欲しい。


 ペヒペヒエスがドモホルンリンクルの払い戻し作業で忙しいのでとりあえず仕合終えた2人のチェックを南雲さんと川端さんが行う。


「辻堂さん? またお強くなられましたか?」

「おうともよ! 俺ぁ剣友に信任してもらって自由を得てる身だからよお! 理事ってのは要するにアレだろ? 眠てえ事を言うヤツを黙らせりゃいい訳だ! 修一の指示にいつでも応えれるよう、刀は磨いとかねえとな! かっかっか!!」


 辻堂甲陽。理事兼剣術指南役。

 どこかに置き忘れっぱなしだった責任感をこの段階になりようやく取り戻す。

 仕上がりは完璧と評しても過言ではなかった。


「雷門くん。私が分かるか?」

「ピピピッ。マスター・川端と認識。おっぱいの平和を守る紳士。そうパーフェクト雷門は考えておりますが」



「南雲さん。雷門くんはこれまで見て来た理事の中で最も仕上がっているかもしれません」

「そうですか!? さっきまで扱いに困るマップ兵器でしたよね!?」


 おっぱい男爵を紳士として認識できている。

 それだけでもう答えはイエスなのだ。



「雷門くん。君の仕事は?」

「ピピピッ。デルタウェアで女性が泣いている状況を作らせない事。もしも泣き声が聴こえたら、私がそれよりもずっと大きな声で泣いてそれをかき消して差し上げる事です」


 喋る度に電子音が響くようになったパーフェクト雷門さん。

 その点だけ気になるが、なんか良い感じと川端さんが判断。


 パーフェクト雷門善吉。理事兼女性の働き方号泣推進局長。

 仕上がりは可とする。

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