第1563話 【エピローグオブ久坂家の絶海の孤島殺人事件・その3】孤島のお風呂回 ~この世界では乙女が風呂に入ると誰か死ぬ~

 孤島の保養施設に到着した久坂家と仁香すわぁんと水戸くん、あと逆神家(六駆くん抜き)一行。

 仁香さんが言った。


「あの……。まずはお風呂に入りませんか? すみません、うちの宿六が。あ、いえ、水戸さんが。なんか見るに堪えないと言いますか……このまま施設の中をウロウロされたら海水で出来た足跡だらけになっちゃいそうで」


 その後で「拭いて歩くのも大変ですし」と付け加える放っておけないお姉さんを見て「仁香さんと水戸さんって付き合ってんのかと思ったけど、これお母さんじゃん」と思った六宇ちゃん。

 危うく口に出しそうになったがギリギリで耐えた。


「素晴らしいかもしれん!! いや、素晴らしいと思う! 六宇!! その判断を私は尊重したい!!」

「えっ。マジ? あたし顔に出てた?」


「もう付き合いも長くなってきたので何となく察したかもしれん!!」

「やばっ。長年連れ添った夫婦とか言われた。じゃあもう余計なことはなんも言わないね、あたし」


 連れ添ってまだ1年にギリギリ満たない五十五くんと六宇ちゃん。

 成人済みカップルなのに高校生カップルでもあるという摩訶不思議な存在。

 とりあえず2人して仁香さんを慮った。


「ええのぉ。風呂で一杯っちゅうのも悪くなかろう」

「剣友よ。おめぇさん、風呂入って酒飲んだらまた血圧ぶちアゲちまうぜ? 呑むのは俺に任せときねえ!!」


「一杯くらいええじゃろ!! のぉ、五十五!? ジョーちゃんは行きしなクルーザーの運転で呑めちょらんのじゃし!! 一杯だけじゃ、ほんのちょっとだけ!! のぉ!!」

「ちっ。人を酒の肴にするんじゃねぇ。日本酒だなぁ? お猪口に一杯なら勘弁してやらぁ」


「ケチじゃのぉ……」

「あんたにゃ簡単にくたばってもらっちゃ困るんだよなぁ。じい様。いや、親父様よぉ」



 ジョーちゃんが急にデレるから久坂さんの血圧が上がった。



 とはいえ、とりあえず水戸くんがびしょびしょ。

 美少女がびしょびしょなら臨むところと言いたいが、仮に水戸くんが美少女でも「いや、風邪引くから。風呂行くぞ」となるのが分別ある大人の対応。


 一行は男湯と女湯に別れてお風呂タイムと相成った。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 まずは女湯の脱衣所からお届けするのがこの世界のマナー。


「へー。小鳩ちゃんと六宇ちゃんって一緒にお風呂入ったことあるんだ?」

「ありますよ! 前に温泉旅行連れてってもらった時! 仁香さんともお会いしましたよね! あと久坂さんちのお風呂で一緒に入ったりしてます!!」


「そうだったね! それに久坂さんのお宅、大きいお風呂があるんだったよね」

「お師匠様の道楽ですわ。わたくしが弟子入りした頃にちょうど改築しておられましたの。あの頃はお独り暮らしなのにと思っていましたけれど、今では結果オーライですわ!! 六宇さんとよくご一緒しますのよ!!」


「あ! 今、って言った? 小鳩ちゃん?」

「ち、ちちち、違いますわよ!? 浄汰さんとはちゃんとラブホテルのお風呂で混浴していますわよ!? 母屋では、た、たたた、たまにですわ!!」


 ラブホテルのお風呂というとなんだか御幣があるように思えるが、あっくん宅は未だにショッキングピンクのラブホテルなので全然御幣はないのである。

 内装にもこだわっており、阿久津ラブホテルの浴室は檜風呂になっている。


 服を脱いだ3人。

 六宇ちゃんが少し恥ずかしそうにする。


「うはー。やっぱ小鳩さんは半端ないっす。ってか仁香さんもスタイルちょーいいですよね。引き締まってるっていうか。あたし背の高さは仁香さんと同じくらいだから余計に……」

「六宇ちゃんもスタイル良いと思うよ? 胸? 私と大差ないくらいだよ?」


 大事な補足説明。

 何とは言わないが、小鳩さんはFランク寄りのEランク。

 仁香すわぁんは程よいサイズのCランク。

 六宇ちゃんはBランクとなっている。



 今、メインヒロインの話はしていません。



 乙女3人がいざ入浴。

 髪が短めの仁香さんと六宇ちゃんは色々洗って先に大きな温泉へ。

 小鳩さんはロングヘアなので髪を洗うのに時間がかかる。


 ここで残念ながら男湯の方が騒がしくなり始める。

 誠に心苦しいが、我々はそちらの様子を確認する義務があるのだ。観測者として。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「やらせません!! やらせませんよ!! 覗きなんて最低な人間のすることだ!! 自分の目が黒いうちは仁香すわぁんの入っているお風呂を死守して見せる!!」


 水戸くんが風呂覗こうとして死ぬんだろうと思った諸君には猛省を求めたい。

 彼の過去の行動がそういった解答へ導いたかもしれないが、今の水戸くんは仁香すわぁん清らかな姿を穢れた魂の男たちから守っていた。


 全裸で。


「おい、じいさん!! こいつやっちまおうぜ!!」

「ぶーっはははははは!! 水戸とかいうお前!! 女風呂なんて隣に併設してあったらむしろ覗こうとしない方がマナー違反やろ!!」



 逆神家奇数代がやらかしていた。



「気が合うじゃねぇか、じいさん!! よし! やっちまえ!! そいつに白目剥かせて黒い目をなくしちまえば姉ちゃんたちの裸覗いてもいいんだろ!?」

「ぶーっははは……はぁ……。いや、お前、クソ孫。そうはならんやろ。慣用句って知らんのか?」


「ギター侍だろ!! 知ってるっつーの!!」

「……誰や!?」


 波田陽区さんです。


 喜三太陛下は平成中期から後期のブームに最も疎うございますれば、無知をお許し頂きたい。

 気を取り直して陛下が仰せになられた。


「ぶーっはははははははは! ワシが本気出せば透視スキルなんか余裕やからな!! 戦争やっとる時に大活躍したんやぞ!! 各地でワシの八鬼衆がどんどん撃破されていく様子、全部ハイビジョンで見とったわ!! そんで看取ったわ!! ぶーっははははは!! 見よ! ワシの極大スキル!!」


 喜三太陛下は背後に嫌な気配を感じ取られた。

 ゆっくりと振り向かれると、そこには。


「ほっほっほ」

「ち、違うんやで? 四郎? ワシは孫と遊んでやっとっただけでな? そんなお前、ワシが本気で覗きなんかする訳ないやろ!? コンプラララライララライとかいうのが難しいんやもんな!? 現世の令和は!! な!? バカ孫!! 分かったか!!」


 四郎じいちゃんたちが温泉にやって来た。

 久坂さんがどうしても一杯やりたいというので「本当に一杯だけ」という約束で孤島の冬空を肴に日本酒キメようと準備していたため、良識人たちの到着が少しばかり遅くなったのだ。


「あぁ? まさかよぉ。俺ぁ安く見られてねぇかぁ? てめぇの嫁さんが風呂ォ入ってんのによぉ? それタダで見せるとか思われてんならなぁ? 心外だよなぁ? 五十五ォ!!」

「確かにそうかもしれん!!」


 それから喜三太陛下と大吾が20分ほど全裸で正座させられた。

 昔の修学旅行生だろうか。

 思えばラブコメでもお風呂回はなくならないが、お風呂イベントや女湯イベントの数は減って来たように思えて、これも時代の変化に立ち会っていると思えば感慨深い。



「いやー!! 良かったですよ! 仁香すわぁんの清らかな姿は自分だけのものですからね!! 無事にお守りできてよかえ゛ん゛っ」


 水戸くんが転がっていた石鹸を踏んづけて足を滑らせ、後頭部を強打して死んだ。



「ええ……。何しとるんや、あいつは」

「ぎゃはははは!! 黙って裸の姉ちゃん見せねぇからだっつーの!!」


「ほっほっほ! あっくんさん」

「ちっ。四郎さんも人使いが荒ぇんだよなあ。……おら、『結晶シルヴィス』!! からの、『拡散熱線アルテミス』!!」



「お、おぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」


 大吾は不用意な発言の回数が規定値を超えたのでこんがり焼かれて死んだ。



 そして水戸くんと大吾の死亡シーンで尺が足りなくなったので、我々は女湯へ戻る術がなくなってしまった。

 この世の不利益、その全てはだいたいお排泄物が悪い。


 こうして犯人なき殺人事件が起きてしまった。


「いや、逆神の親父に関しちゃあ俺がやったろぃ」


 犯人なき水戸くん殺人事件が起きてしまった。


 次回。

 解決編である。


 なにを解決するのかは分からない。

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