第1538話 【エピローグオブ人工島デルタウェア建造・その5】次なる獲物をハンティング ~都合よく1つのダンジョンに2匹いる古龍さん~

 仮称・鉱竜。

 本当の名は壊竜サバルジルドという。

 ひとたび咆哮すれば火山が噴火し、足踏みだけで地形が変わる。

 特に驚異的と評すべき点はその身を覆い尽くすタイル状の鉱石。

 この古龍の本領は追い詰められてから発揮される。


 アルマジロのように身を丸くしてからの突進攻撃はかつてとある異世界に繫栄していた都市を1つ、たった一夜で滅ぼしたとされる。

 スカレグラーナに繋がったファラエンドダンジョンをバルナルド様がすぐに封じられたのはさすがの慧眼であった。

 仮にこのサバルジルドがスカレグラーナに放たれていたらどうなっていた事か。


「莉子!! その竜じゃダメだって!! 始末していいらしいよ!!」

「あ、はーい!! やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なんだか今日は身体が軽い!! 芽衣ちゃん、下がって!! いきますっ!!」


「みみみみみっ!! 『幻想身ファンタミオル』解除です! みっ!!」


 莉子ちゃんが拳に苺色の煌気オーラを収束させてから地面を蹴った。

 その動きはまるで名うてのフィギュアスケート選手のように軽やかで美しく、見ていた六駆くんが「うおおおおお! 莉子おおおお! うおおおおおお!!」と歓声をあげたのも無理からぬことであった。



「キシャア」

「遅いよ!! たぁぁぁぁぁぁ!! 『苺光拳いちごこうけん』!!」


 冒頭のサバルジルドについての解説は忘れて頂きたい。

 鉱竜がイドクロアも遺さずに滅せられた。



 目的のものではなくとも希少な古龍由来のイドクロアには違いないのだから、きっちり採取すれば良いものを。

 特に六駆くんはさっきからモンスターのイドクロアは回収しているのに。

 これが恋は盲目というものなのか。

 彼が「うおおおおお」と言っている間に現世で初めて確認された古龍がいなくなった。


「まだ潜るのかにゃー。正直、あたしとか槍を失った小鳩さんとかもう帰ってもいい気がしてならんぞなー?」

「帰っても良いんですの!? では、本部近くのスーパーでお買い物して帰りますわね! 今晩のお献立は……肉じゃがをメインで考えますわ!!」


 どら猫が疲れたから帰ると鳴けば、小鳩さんが、あの勤勉がたわわになって服着てると評されていた小鳩さんまでもが「ジャガイモ買って帰ります」と言う。

 これはいけない。

 早く次の古龍に出て来てもらわなければ。


「ノア?」

「ふんす! なんですか逆神先輩!!」


「クララ先輩に煌気オーラ感知してもらって、僕が『ゲート』を開けるから、ノアは『ホール』で中継してくれる? なんかね、結構下の方にいるっぽいんだよ。今のと同じくらいの古龍が。ただ、僕の煌気オーラ感知ってざっくりしてるからさ」

「にゃっふっふー。あたしのほんのり分析スキルをお忘れではなかったとは、やるにゃ。六駆くん!!」


 お忘れの方のためのクララパイセン。

 ライアン・ゲイブラム氏から分析スキルのいろはをちょっと習ったら、ほんのりと分析スキルが可能になった。あれはバルリテロリ戦争中期の頃である。

 分析スキルは敵の弱点を把握することに始まり、今後の戦局を予測したり、敵の索敵まで可能にする万能スキル。


 なんと六駆くんも未収得というレアスキル。

 猫に小判などら猫オリジナルであり、最近は主にウマ娘の育成に応用されている。

 チート行為かどうかは運営の判断に委ねよう。


「じゃあ、残りのみんなは迎撃戦の用意を頑張って!!」

「みみっ! 六駆師匠がまったくやる気ないです!! 頑張ってって言ったです! 他人事です!! みみみみみっ!!」


「瑠香にゃんは瑠香にゃんサーチするので戦力に加えないでください」

「大丈夫だよ! 安心して!! わたし、久しぶりのダンジョン攻略でなんか調子いいから! みんなの分もわたしが戦うよ!!」


 六駆くんが静かに涙を流した。

 嫁さんが日々進化している。

 こんなに嬉しい事はない。こんなに最高の物見遊山もない、と。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 鋼竜ガルガルク。

 ファラエンドダンジョンに住まう古龍が1匹。

 ドラゴンというよりは中国の伝承に出て来る龍のような姿をしており、鉱竜と同じくイワークっぽいフォルムをしている。

 この姿はダンジョンが戦場になるという都合に合わせてくれているのか、仮にそうだとしたら殺すには余りにも惜しい、この世界への優しさ。


 鉱竜は外皮にタイルのような鉱石をびっしりと纏っていたが、こちらの鋼竜は外皮そのものが鋼のように光っており、金属生命体とでも呼んだ方が適切に感じられる。

 ピッカピカに輝くその体は打撃、斬撃、突撃の全てを防ぎ、全属性のスキルを弾く。

 まるで「ぼくのかんがえたさいきょうの古龍」である。


「シャアァァァァァァァァァァ」


 さっきから上層がうるさいのでかなり気が立っており、これはチーム莉子と接敵した瞬間にブチギレ確定の一触即発状態。

 そんな鋼竜の真横に穴が出現した?


「シャ?」


 長い首を傾げた鋼竜。


 続けて穴が広がり門の形へと変化する。

 そして人間の男の顔が出て来た。


「あー!! いたいた! いましたよ、クララ先輩!! さすがだなぁ!! どうします? こっちにおびき寄せます!? それともみんなであっちに行きます? 結構デカいです!!」

「シャアァ?」


「じゃあこのまま『ゲート』は発現しっぱなしで! 下の階層でこの古龍の検分してから、イケそうなら捕獲! イケなさそうなら放置して帰りましょうか! だってこいつがいるのは第37層ですよ? 絶対に地上に出てこないですよ!」

「シャッシャ?」


 鋼竜は思った。



 なんかこの人間、すげぇ喋る。

 攻撃しても良いのかしら。と。



「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

「シ゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」


 そんな事を考えていたら、人間にぶん殴られた鋼竜。

 あんまりである。


「あ! 硬い! こいつ硬いですよ! 割と本気で殴ったのに外皮が欠けない! みんな、今のうちに門を潜って!! はやく、はやく!!」


 次に鋼竜が体勢を立て直した時。

 なんか人間がいっぱい増えていたという。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな訳でファラエンドダンジョン第37層。

 ついにノアちゃんの穴と六駆くんの門でダンジョン攻略をズルし始めたチーム莉子。

 ただ安心して欲しい。


 六駆くんはもう隠居していて退役済みなので、この裏技というかハメ技みたいな攻略法はメンバーの誰かが『ゲート』を習得しなければ再現は不能。



「にゃはー!!」

「にゃーです」

「ふんすー!!」


 そのうち誰かが覚えるのではないかというほんのりとした予感はあるが、今その話はよそう。



「瑠香にゃん、このままサーチできる?」

「はい。グランドマスター。できれば現物が欲しいです。あるいは瑠香にゃんがあの大きな竜にドッキングする必要があります」


「そっか。また芽衣にやってもらうのは悪いし、莉子がやると間違って古龍に死なれても困るし。仕方ない。僕がやるか!」

「うにゃー。隠居ってすごいにゃー。好きな時に好きな事できるから、やる気のある六駆くんの排出率がちょー高いぞな」


「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!! 『激突げきとつ二重ダブル』!!」

「シャァアァァァァァァァ!!」


 六駆くんの手刀を突き立てるスキルが弾かれる。

 少しばかりイラっとした最強の男。


「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

「シャ?」


「もう手加減しないぞ!! 抉ってやる!! 『完突かんとつ三重トリプル』!!」

「シギャアァァァァァァァァ」


 六駆くんの手刀(本気)が鋼竜の外皮をサーティーワンアイスクリームみたいな形で掬い取った。

 外皮を抉って球体になる。という事は本当に流体金属みたいな構造なのだろうか。


 鋼竜の色は黒に近い銀色。

 つまり六駆くんは銀の玉を手に入れた。金色じゃないのは実に惜しい。


 さあ。検分の御時間である。

 今度こそやったか。


 やっててくれないと尺的に困るが、果たして。

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