第1524話 【エピローグオブ南雲のバックトゥザフューチャーパート3・その6】逆神大吾(17) ~中身はもう30超えてるので安心してください~

 まずはお忘れの方のための逆神家に代々伝わる崇高な使命(笑)について。

 異世界転生周回者リピーターは初代の逆神人殺助をぶっ殺すために2代目が創り出した技法であることが判明したが、どこの異世界に居るともしれない人殺助を延々転生して探し回っていてはいつかメンタルが焼き切れる。


 スキルはメンタル勝負。

 メンタルがぶっ壊れてしまえばスキル使いとしてはもはや役に立たない。

 それを防ぐために転生周回者リピーターにはいわゆる「あがり」機能が存在する。


 この異能は「なんか荒れてる異世界」に、つまり大きな煌気オーラが蠢いている異世界に転生する事を優先する高度な術式であるからして、だいたい何かしらの存在が争いを起こしている。

 当地の種族かもしれないし、巨大なモンスターかもしれない。

 それらの「災いの種を抹消」することで「異世界平定」と自身が判断した瞬間にこの異世界転生周回者リピーターは一旦の終了権をゲット。

 現世の17歳の肉体へと再転生を果たす。


 そこからは心が折れるまでまた新しい異世界へと転生していく流れであることは諸君、覚えておいでだろうか。

 だいたい父親がトラックとかトラクターとかで轢き殺します。


 そこでこの男である。


「おらっしゃぁぁぁぁぁぁ!! 良いぜ? デカいドラゴン!! おめぇがそんなに電撃放つってんならよ!! オレ様はそいつを逆用してやるぜ!!」

「グルゥアアアアアアア!!」


 誰なのか。おわかりいただけただろうか。

 とっくにおわかりいただけていたならばこれは大変に失礼。非礼を詫びねば。


 逆神大吾(17)である。

 中身は30過ぎ。ここは3度目の転生先であり、この後でピュグリバーに転生して若かりし頃のアナスタシア母ちゃんを掻っ攫って転生周回者リピーターを終える。


 つまりこの大吾(17)は今までのどの逆神大吾よりも仕上がっている。


 雷竜の口から放出されたレーザービームのような雷撃に対して構えを取る大吾(17)。

 煌気オーラ力場を構築してから複数の盾を産み出し、それを増幅して反転させた。

 六駆くんが初期ロットの頃によく使っていた『鑑反射盾ミラルシルド』と同じ要領のスキル。


「ぎゃははははは!! 喰らえ!! 『超でんじろう先生砲ウルトラ・レールガン』!!」

「グラァァ!?」


 諸君には悲しいお知らせをしなければならない。

 この大吾(17)は穢れた魂と強靭な肉体を持つ、優れたスキル使い。



 かなり強いお排泄物なのである。



 雷竜が怯む。

 渾身のブレスをなんかよく分からんスキルに転用されて反転迎撃されたら、少しばかりの知性のある生物であれば「何してくれとるんや、こいつぅ」と憤るのは道理。


 大吾(17)が戦局を見守る南雲さんたちの方を再度振り向いてから叫んだ。


「おいおいおいおい!! 早く適当なヤツ囮にしろって!! そこでオレが必殺の逆神流剣術キメてこのデカい竜ぶち殺してやるから!! 大丈夫! 囮役も多分死なねぇよ!! 多分な!! へへっ!!」


 心根が腐っているという事は強メンタルであるという事とイコールで結びたくはないが、限りなく近いナニかとは言い換える事ができる。

 おっさんより子供の方が古龍の食いつき良いだろうから子供を囮にしようぜとハッキリ初対面の相手に言い放てるメンタル。


 やはりこの大吾(17)は強い。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 傍観者サイドではとりあえず瑠奈ちゃんが「あの人、どこの時代でも出て来たらサイテーだね」と呟く。

 よーく見たらあいつちょっと前に未来でうちのパパがやっつけたヤツじゃんと気付いていた。

 それに同調したのは京華さん(22)である。


「性格はともかくとして、かなりやるな。悔しいが、私よりも確実に強い……!! この異世界アライルドの古龍は脅威判定Sランク。私とて手ぶらでちょっかいを出そうものなら命が危ないというのに。あの男、あれでなかなか胆力もあると見える」


 割と高評価な京華さん(22)の大吾に対するファーストインプレッション。

 おわかりいただけただろうか。


 本来の歴史だと、このタイミングで京華さんと大吾は出会い、その実力を認めてしまい、最終的にはうっかり大吾に弟子入りしてしまうのである。

 南雲さんは若い妻の様子を見て、それを察していた。


 「あ。京華さんが大吾さんと接点を持つの、ここなんだ」と。


 南雲家が一旦集合。作戦会議へ。

 京華さん(22)には「ちょっと娘のトイレに付き合ってきます」と言って、距離を取る。

 瑠奈ちゃんが無言でパパの尻を蹴り上げたが、これも貴重な親子のスキンシップ。


「どうしたんですか? お父さん」

「うん。私ね、歴史改変をするのが良いとは思わないし、その結果私の身に何かが起きるのも割と嫌だなって思っているのよ」


「ヤメてよね。あたしたち、それさせないために未来から来たんだからさ」

「瑠奈? お母さんから聞いた事はないだろうね。お母さんの剣術の師匠が誰なのか」


「あー。うん。ないかも。教えてくんないんだもん。辻堂のおじさんとかじゃないの?」

「……あそこで古龍といい勝負してる、逆神大吾さんなんだよ」


「え゛」

「そうなんですか!? そう言えば、お母さんは大吾さんの話をする時、いつも具合が悪そうでしたけど」


 南雲さんが渋い顔で言う。


「これからね、きっとこの時代の京華さんはこの時代の大吾さんに弟子入りするんだと思う。ただね、ただ。私、すっごく嫌なの!! 聞かされてるんだよ!! 異世界で修業してた時に水浴びしてたら覗かれた回数とか! 事故装って胸にタッチして来たとか!! ……嫌じゃないか!! 私、これから自分の若い頃の妻が寝取られるかも、ああいや、ごめんね。二人には良くない言葉遣いだった。けれど、京華さんがアレに心を奪われるところを見るのは辛いの!! 分かるかなぁ!?」


 瑠奈ちゃんが南雲さんの手を取って、ギュッと握った。

 続けて言う。



「パパ。歴史を変えよう。その結果、パパが消えてもあたし我慢する! 大丈夫、あたしと京一郎はね、絶対に消えないんだって! 消えちゃう可能性があるのはパパだけだからって出発前のノア博士が言ってた!! だから、やろう!! パパ!! 若いママのおっぱいを守ろう!! 川端さんならそう言うはずだよ!!」

「瑠奈……!! ……あれ!? 私、消えるの!?」


 思春期の娘にとって、若い頃の母ちゃんがあのド外道の畜生に穢されるのは黙っていられなかった。

 喩えパパが消えたとしても。



「お父さん、とりあえずぼくはノア博士に連絡を取って確認してみます」

「うん。京一郎。一応聞かせて? なんの確認を?」


「ここで大吾さんとお母さんの出会いを絶ったとして、ちゃんと世界線が分岐するのかどうかについてですよ。分岐するならお父さんにも影響はないはずです」

「そうか! さすがだなぁ! 京一郎は!! パパに似て賢いなぁ!!」


 瑠奈ちゃんが握ったままの南雲さんの手をさらにギュッとやった。


「うん?」

「パパ……!! あたし、忘れないよ!!」


「ちょっと待って!? なんで私が消える前提なの!? 瑠奈は!! あれ? あれぇ!? 京一郎もなんでちょっと泣いてるの!? うそ、私消えるの!? それはちょっと嫌だなぁ!!」


 京一郎くんがサーベイランスを起動させた。


「こちら逆神京一郎Cランク探索員です。ノア博士、応答願います」

『ふんすー!!』


 画面の向こうに現れた、ロングのツインテールと白衣がトレードマークのノアちゃん(28)。

 南雲さんの、妻のトラウマが生まれる前に消し去る願いは叶うのか。

 その代償として南雲さん、消えるのか。


 ノアちゃん(未来)の判定はいかに。

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