第1516話 【エピローグオブマザー仁香すわぁんへの道・その2】仁香すわぁんによる新人合同プールトレーニング ~信奉者、カウントアップ中~

 日本本部には複数のプールがある。

 まずは屋外プール。こちらは2種類。

 競技用にも使えるシンプルなプールとダンジョン攻略や異世界における作戦行動のための訓練に使用するアスレチック的なヤツ。


 夏に毎年行われている女子探索員の会主催、水着プールレクリエーションなどはこの屋外プールで行われている。


 屋内プールも当然だが複数あり、こちらは3つ。

 1つは巨大な水槽のような何もないけれど煌気オーラを固めて足場を作ったりする基礎的な訓練に向いているもの。

 もう1つは木々が生えていて傾斜もある、現場を模した仕様。

 最後の1つは雨宮さんが在任中に勝手に造って京華さんにキレられた波の出るプールだが、故雷門さん、現パーフェクト雷門さんがこれまた在任中に改造してものっすごい波の出るプールとなり、これはこれで訓練に利用されている。


 さて、前置きが長くなった。

 本日は屋内プール1号。大きくて何もないプールにて仁香すわぁん指導のもと、新人研修が行われる。

 現在、仁香さんは更衣室でお着替え中。


「芽衣ちゃん? 本当に来てくれるの? 私としては嬉しいし、なんならちょっとテンション上がってるけど。芽衣ちゃんが何か得られるようなトレーニングはしないよ? 煌気オーラを使った足場構築がメインの予定だし」

「みーみーみー。芽衣! 仁香さんのトレーニングだったら何でも楽しくできるです!! みみみぃ!!」


「はぁぁぁ……!! 芽衣ちゃんが監察官になるまで私! 頑張って現役を続けよう!!」

「……みみっ」


 トレーニング用の水着にお召し替え完了の仁香さんと芽衣ちゃん。

 芽衣ちゃんは気の利く乙女。

 危険が危ない空気に敏感な乙女と言い換えても良い。



「……みみっ。最近、仁香さんの周りが割といつも危険が危ないです。みっ」


 そう芽衣ちゃまは言う。



 なにもお役に立てないかもしれないけれど、何かあった時にはお役に立てるかもしれない。

 だから芽衣ちゃんは本日のトレーニングに特別講師として参加する。


 諸君は思われただろう。

 「だったら芽衣ちゃま党員が増えるだけではないか」と。

 そこは芽衣ちゃん自身も嫌だけど自覚している。

 「芽衣みたいな子供に興奮する男の人は少なからずいるです」と可愛いジト目をしながら、これまでの経験を振り返る。


 よって、対策も立てて来た。


「ええと……。それで、どうしてシャモジさんが?」

「おーっほっほっほっほっほ!! 仁香摂政!! 芽衣殿下と摂政が下々の民に教えを授けられると聞きました!! ならば不敬を働く輩を……殺しますよ!!」


 対策。

 水着姿の殺戮ババア。バルリテロリ産。


 失礼。シャモジ母さんであった。

 水着の乙女2人が野郎のAからZ、甲乙丙丁戊己庚辛壬癸。

 28と10人を相手にするのは危険が危ない。

 仁香さんも芽衣ちゃんも本気を出せば新人探索員なんて片手の人差し指でパーンだが、世の中にはそのパーンに興奮を覚え、一瞬に生涯を賭ける輩もいる。



 そう。水戸くんのように。



 そこでシャモジ母さんである。

 男というのは愚かな生き物。どんなに婆さん、失礼、妙齢のご婦人であろうともミニスカートを穿かれたらチラ見してしまうし、水着になられたら意識してしまう。

 男子ってホントばか。


 そんな不埒な視線を察知したらば、本日は芽衣殿下によって「みっ! 殺しちゃダメです! お仕置きはやっていいです!! みみっ!!」と御許しを得ている忠臣のシャモジ母さん。

 閃く杓文字が唸れば万事解決。


「それじゃあ行きましょうか。シャモジさん? 暴れないでくださいよ?」

「承りましてございます!! おーっほっほっほっほ!!」

「……みみっ」


 乙女たちによる新人トレーニングが始まる。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 お忘れの方のための仁香さんブートキャンプ。


 とても厳しい。


「はい! ではもう1度! 煌気オーラで足場を固定して水の上に立って!! そのまま5秒間キープ!! 全員が揃うまで何回でもやりますよ!! あ、無理な人はプールサイドに抜けてください!! そこは本当に無理しちゃダメですよ! それでは、始め! いーち、にー! さーん! ……さーん!! 気を抜かない!! さーん!! さーん!!」


 ちなみに莉子ちゃんの探索員着任時のランクがDだった。

 今、おっぱいの話はしていません。


 六駆くんのズルというか、大幅なバフが掛かっていたとはいえ、Dランクの頃の莉子ちゃんはただのツタに絡まってひんひん泣いていた時分。

 煌気オーラで足場なんて作れるはずもなかったが、今、仁香すわぁんのプールトレーニングを受けている者の中にDランクの探索員はいない。

 全員がEランク以下。


「オレはもうダメだ……」

「あ、諦めんのかよ!? おれ達、チャイナドレスの仁香すわぁんに率いてもらいたくて大学辞めたんだぞ!!」


「そうだぜ……。聞けば水戸監察官が装備の変更申請を定期的にするから……。白ビキニでダンジョン攻略なされる時もあるらしい……ぶくぶくぶく」

「おい! 沈んでる、沈んでる!! 集中しろ!!」


 仁香すわぁんの魅力にひかれたというのに、今は地球の引力にひかれて水の中に沈んでいく男たち。

 もうダメだ。芽衣ちゃまを見て心をおっきさせて帰ろう。


 そう思って水面から顔を出すと。



「おーっほっほっほっほっほ!! 現世の男たちもなかなかに見所がありますね!! その意気や良し!! わたくしの杓文字で差し上げましょう!! さあ乗るのです!! 早くしないと殺しますよ!!」

「みみみみみみみっ!!」


 芽衣ちゃまの前にデカい杓文字抱えたおっかさんが飛んできて助けてくれる。



 その繰り返しでもう2時間半。

 そろそろ野郎たちのメンタルは限界を迎えつつあった。


 やっぱり仁香すわぁんは自分たちとは住んでいる世界が違うのだ。

 そう思いかけた頃合いであった。


「はい! そこまで!! 全員、プールから出てください!! ……よく頑張りましたね!! それでは1人ずつ、課題点をあげていきますので。あ。もう無理に立たないで座っていてください。先にドリンク配りますね!」


 仁香さんブートキャンプが終わった。

 それから仁香さんはEランク、中にはFランクの者もいるが分け隔てなく「頑張りましたね。あなたは煌気オーラの放出が少し苦手ですね」とまずは労い、ちゃんと見ていたよと微笑む。

 続けて「次の訓練までに自主練しますか? やる気があるなら後で監察官室へ。個別のメニューを組みますから」と次回の開催も示唆して、君だけ特別だよとやっぱり微笑む。


 座り込んでいる者が大半である。仁香さんは会話をする時など相手の目線に合わせるため、しゃがんでくれる。

 おわかりいただけただろうか。


 もうダメだ。

 そう思った先には、仁香すわぁんの程よいサイズのおっぱいがある。


「おーっほっほっほっほ!! 男というのは愚かですね!! 芽衣殿下!!」

「みみっ!! みんな頑張ってて偉いです!! みみみぃ!!」


「では、偉いです!! 賞賛に値する男たちですね!! おーっほっほっほっほ!!」

「みみみっ!! ただ、仁香さんの信者さんがどんどん増えていくです。これは危険が危ないです。佳純さんが言ってたです。仁香さんは非モテ男子を勘違いさせるタイプですねって。芽衣子供だからちょっと何言ってるのか分かんないです! けど! なんか分かるです!! みみみみみみみみっ」


 男子丙くんが元気に立ち上がって、残った37人に号令をかける。


「全員!! 仁香すわぁんに敬礼!!」

「わっ! 敬礼はもう満点ですね! 皆さん、やる気があって素晴らしいと思います!! では! 次のプールトレーニングは来週です! 解散!!」


 翌週開催されたプールトレーニングの参加者は知らぬ間に50人を突破しており、全員で『Official髭男dism』のミックスナッツを合唱して仁香さんを喜ばせたという。

 こうして着々とマザー仁香すわぁんを崇める非モテ男子たちが増えていく。


 次回。

 月刊探索員の大人気連載。


 『教えて仁香すわぁん』のコーナーでお会いしよう。


 まだマザー仁香すわぁん回は終わらない。

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