第1500話 【エピローグオブ学祭・その1】まずは主人公がどうでもいいけど大事な話をします ~序章と言う名の尺調整回(正直者)~

 こちらは久坂家の敷地内にあるショッキングピンクのラブホテル。

 つまり阿久津家。


 日須美大学の学祭まであと2日。

 既に準備期間に入ったため、講義はお休み。

 やる事のない六駆くんは暇を持て余していた。


「ちっ。てめぇ……。やる事くれぇいくらでもあんだろうがよぉ。わざわざ俺の家に来るんじゃねぇ」

「良いじゃないですか! あっくんさんに借りてた金田一37歳の事件簿返しに来たついでですよ! 桃鉄って魔王城では人気ないんですよね」


「六駆さん、紅茶でよろしいですわよね? あっくんさんもおかわりを淹れますわ」

「ちっ。小鳩ぉ。こいつにゃ安いヤツ淹れろぃ」


「えっ!? せっかく僕、犯人に印付けておいたのに!? そんな意地悪するんですか!?」

「てめぇのそれが親切だって思ってる時点でよぉ。救えねぇんだよなぁ。てめぇ、無印の金田一少年の事件簿でも確かそれやってんだろうがぁ。俺の貸してやったヤツによぉ」


 六駆くんはコーヒーが飲みたくなると南雲さんのところへ。

 紅茶とお菓子食べながらゲームや漫画を嗜みたくなるとあっくんのところへとやって来る。


 これが隠居したでぇ学生という上位存在。

 我々がどんなになりたいと願っても叶わぬ、究極の生命体である。

 ちなみに貯金は300000000と別口座に50000000ほどある。


 我々にはもう、0が多いことくらいしか分からない。


「ところで僕、明後日と明々後日、学祭なんですよ」

「まあ! 莉子さんとおデートなさるのですわね! ステキじゃありませんこと!! 紅茶、ここに置きますわ。あとわたくしが焼いたクッキーと五十五さんの作ってくださったマフィンもどうぞですわ」


 あっくんの家という名のラブホテルは本家のラブホテルよりもサービスが充実している。

 飲み物もお菓子も勝手に出て来るし、求めたらおゴムだって出て来るだろう。


「うわぁ! ありがとうございます!!」

「てめぇ。コントローラー片手に菓子食うんじゃねぇ。あ。……俺にキングボンビー擦り付けやがったなぁ? 見てろぃ。ぶち殺してやら……ちぃっ!!」


「あ! ボンビラス星に行っちゃいましたね! うふふふふ!! じゃあ僕、あっくんさんの独占してた出雲駅がボンビーに売られたので、買い占めときます!!」

「くそがよぉ!! ……でぇ? まーた服寄越せって話かぁ? てめぇは親父に似てファッションセンス皆無だからなぁ! くははははっ!!」


「あ。あっくんさん、資産がマイナス50億になりましたね!! うふふふふふ!!」

「んもぅ! 意地悪なことを仰るからですわよ! あっくんさん!!」

「あぁ? なんだぁ? この糞ゲーはよぉ!!」


 桃鉄は社会の理不尽を教えてくれる素晴らしいゲームである。


 それからあっくんの総資産がマイナス80億を突破したところで桃鉄は終了。

 六駆くんの学祭デートコーデを見繕っていたところ、我らが主人公が発案する。


「僕、髪型変えようかと思うんですよね」


 阿久津家ラブホテルに激震走る。

 小鳩さんが「はわわわわわですわ」とへたり込んでしまうほどの衝撃である。

 あっくんが「俺の腕を掴んどけ。ぜってぇ離すんじゃねぇぞぉ」と真剣な表情で六駆くんを睨みつける。


「ソフトモヒカンとかいいかなって思うんですけど!!」

「待て、待てよ。逆神ぃ。てめぇ……そいつぁ敢えて言ってんのかぁ? わざと言ってんだなぁ?」


「えっ!?」

「ちっ。俺に言わせるって腹積もりかよぉ。相変わらず、クソみてぇに戦巧者だなぁ!! いいぜぇ、言ってやらぁ……!!」


 小鳩さんが「あ、あっくんさん……!!」と震え始める。

 たわわな胸がぽよんぽよんなっている感触など気にする余裕もなく、あっくんは吐き捨てるように言った。



「この世界の野郎はよぉ! ハゲてるヤツ以外はほとんど……!! どんな髪型してんのか分からねぇまんまここまで来ただろうがぁ!! てめぇもだ! 逆神ぃ!! てめぇ! どの面下げて髪型変えるなんて抜かしてやがる!! そもそも! てめぇの今の髪型はどんなもんだって話なんだよなぁ!!」

「えっ!? 普通じゃないですか?」


 あっくんがこの世界の禁忌に触れた。



 乙女たちのヘアースタイルにはこれまで、何度か触れる機会があった。

 例えば莉子ちゃんはショートボブ。

 クララパイセンはポニーテール。

 芽衣ちゃんは肩まで伸ばしたセミロング、等々。


 しかし、しかしである。

 メンズに関しては「ハゲてるかハゲてないか」以外の当たり判定としては「南雲さんが七三分け。本気出すと髪をかき上げる」という一体何人が覚えているのか不透明なものが筆頭となり、あとはせいぜい川端さんのオールバックくらいのもの。


 野郎の髪型なんて誰も気にしねぇだろうと高を括って来た結果がご覧の有様である。

 六駆くんはどんな髪型をしているのか、我々は知らない。


「えっ!? 普通ですよ!?」

「てめぇはちっと黙ってろぃ。普通の定義は人それぞれなんだよなぁ」


 それから少し落ち着いた小鳩さんが「わたくし!! 少し前に美容室で毛先を整えましたわ!! それでもこの世界ではツインテールをほどいた佳純さんの次くらいに長いですわ!!」と唐突に宣言した。

 あっくんが続いて「俺ぁツーブロックだ。文句あるかぁ?」とやはり唐突に宣言した。


 あっくん夫婦(未入籍)が六駆くんを見た。



「えっ!? 僕の髪型なんて、普通の大学生ですよね? 高校の頃からこんな感じでしたし!!」

「よーし。よーく分かった。もうてめぇ、死ぬまで髪型の話するんじゃねぇ。それを誓えりゃ、ビームスで買った今季物の革ジャンくれてやらぁ」



 六駆くんが「うわぁ!! 良いんですか!!」と快諾して、なんか知らんけど50000円くらいする革ジャンをゲットした。

 11月はこれから寒くなる。

 革ジャンなんて1着あればかなり使い回せるステキオシャレアイテムである。


 六駆くんの髪型については永遠の謎置き場に放り込まれる事となった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「ただいま!」

「おかえりなさいませ! 六駆殿!!」


 魔王城に帰った六駆くんをダズモンガーくんが出迎える。

 とりあえず戦利品の革ジャンを見せびらかして「これ、いいでしょ」と言えば、「イケてございまするな!!」と応じるトラさん。



「そういえばダズモンガーくんってアムールトラだよね!!」

「えっ。吾輩は獣魔人でございまするが?」


 ダズモンガーくんはアムールトラに似ています。



 こうして、今更そんなもん掘り下げたところでどうなるのかというモニョっとした気配をダズモンガーくんで中和完了。

 夜が来て朝が来てもう1度夜が来て。


 日須美大学の学園祭。

 当日がやって来た。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 日須美大学の学祭は土曜日と日曜日の2日間で行われる。

 土曜日に注目を集めるのはやはりミス日須美大学コンテスト。

 芸人さんがМCをして盛り上がる、メインステージの花形企画。


「さあ! 行こうか、莉子!! 先に一緒に周って色々見ようよ! ミスコンってお昼過ぎてからだもんね!」

「う、うん。……あ、あのね。ろ、六駆くん? なんかコスプレ審査とかいう文字列をたった今! 今だよ!? 募集要項で確認したんだけど!! なに!? これ!?」


「えっ!?」

「知らなかったの!?」


 「大学に行くと死ぬ病」を患っているグロッキーなクララパイセンが既に食堂で転がっている。

 それでもみんなのパイセンなので、教えてくれた。


「あー。うちの大学のミスコン、メイド服とかバニーガールとかの衣装を着るんだにゃー。名目上はブランド物とかで優劣を付けないためって事になっとるにゃー。……まあ、おにゃの子に可愛い服着せたら盛り上がるぞなって話にゃんだよにゃー」

「ステータス『さすがぽこますたぁ。おめぇが何を着るのか瑠香にゃんワクワクすっぞ』を確認しました。お出かけ服のおっぱいに格納します」


 さあ、楽しい学祭編である。

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