第1464話 【エピローグオブ南雲のバックトゥザフューチャーパート2・その1】えっ!? 未来に行くの!? 私が!? なんで!? ~オリジナルは三部作なんですよ、南雲さん~

 呉の大地に六駆くんの門が生えて来た。

 いつもの海沿いに生えている門に連結させるのではなく、新しい『ゲート』を発現したのは「なんか変な煌気オーラ反応がある!! 構成術式が『ゲート』と同じだ!! あ! ノアが何かやってるな!?」という六駆おじさんの好奇心から。


 ペヒペヒエスの突然変異による好奇心をここのところよくやり玉にあげているが、振り返れば六駆くんの好奇心も大概である。

 イケるかイケないかの二択だと割と無謀な選択をチョイスしがちだった初期ロット、中期ロット。最終ロットになってようやく落ち着いて知的好奇心を満たす前にステイを覚えた。


 けれども、今回はやって来た。

 何故か。


 恐らく、運命エピローグという名のディスティニーの導き。


「いやー。ごめんね、逆神くん。助かったよ。あ、わざわざペヒペヒエスさんがいるところに門出してくれたの? 本当に君は気が利くようになったよね。ありがとう。……あれ、なんで辻堂さんが。いや、ノアくん? 芽衣くんも……なに? その変な色の穴。ごめんね。私、1回監察官室に戻るよ。……逆神くん? なんで『ゲート』の発現ヤメたの? 門がただのオシャレな石柱になってるよ? ねぇ? 誰か、何か言って?」


 ワンコとにゃんこ学の権威。ライアン・ゲイブラム氏は言う。

 「彼らは我々が考えているよりもずっと賢いですからね。動物病院という場所の不穏な雰囲気を覚えるのです。まず、1度目に嫌な思いをしたら2度目は出かける準備の段階で察して物陰に隠れます。ゆえに、1度で済ませるか、あるいは1度目の来院の際にちゅーるなどでここは安全で楽しいところだよと教えてあげる事が肝要です」と。


 南雲さん、動物病院に連れて来られた柴犬みたいになる。

 ナグモワンコはとても賢い。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ノアちゃんから変な色の穴の説明を聞いた六駆くんと聞かされた南雲さん。

 六駆くんが優しく南雲さんの肩を叩いた。



「南雲さん。行きましょうか」

「なんでだよ、君ぃ!? しかもそれ! まるで2人で行きましょうかみたいな言い草だけどさ!! 私だけだろ、それぇ!! 嫌だよ!? なんで未来に行かなきゃいけないの!?」


 それでは六駆と南雲のお漫才をお楽しみください。

 今回は周囲から合いの手も入ります。



「かっかっか! 修一! ネオ国協の本部施設の意見なんかペヒばあに聞かなくてもよ! 未来で実際に見てくりゃあ良いじゃあねえのよ!!」

「その手がありましたね!! 南雲さん、それで行きましょう! 諸々の不都合が発生するので、帰って来た瞬間に僕が未来の記憶消しますけど」


「じゃあ意味ないだろ!! 行かないよ!!」

「だって南雲さん!! 人生の攻略本みたいなものがあったとしてですよ? 欲しいんですか?」


「澄ました顔で、欲しいんですか? じゃないんだよ!! いる、いらないの前に!! 攻略本をゲットしても君がさぁ!! 理解のないお母さんみたいに勝手に捨てちゃうでしょうが!!」

「だって仕方ないじゃないですか。もう書いてあるんですから」



「書いてあるってなに!?」

「ふんすふんすっ!! 確かにサブタイに書いてあります!! 南雲先生の単独長編ですね!!」


 逆神メタ師弟はエピローグ時空に入ってからさらに色々と見えるようになった。



 ペヒペヒエスがもう訳なさそうに玉ねぎヘッドを下げる。

 「ほんますんまっせん。おばちゃん呼びに来てもらったばっかりなぁ。南雲さんにご苦労おかけする事になって。おばちゃん申し訳なくてしゃあないわ。ほんま敵わんわー」と言いながら、玉ねぎヘッドを90度に傾けた。


「えっ!? いや、ペヒペヒエスさんは悪くないですよ!!」

「あ。ほんま? せやったら良かったわー。おばちゃんもな、やっぱりおばちゃんきっかけで人死とか出ると後生が悪いもん」


 ペヒペヒエスさんは白くなったけど基本的な思考がデトモルト人なので、現世の人間基準に換算すると割と悪いのである。

 おばちゃんの知らへんとこで死ぬんならまあええか、である。


「……みみっ」

「はっ!! そうだ、芽衣くん!! 君からも何か言ってあげて!! このダメな大人たちに!! 揃いも揃って何言ってるんだか!! 人はタイムトラベルなんて出来ないんだって!! 言ってやって!!」


「……みみっ。じゃあ、芽衣が行くです!! 未来に行って帰って来るです!! みぃ!!」

「なんでそうなるの?」


 六駆くんが手を挙げた。


「じゃあもう僕が行きますよ!!」


 辻堂さんが手を挙げた。


「仕方ねえやな。俺が行ってくらあ」


 ペヒペヒエスが玉ねぎヘッドを上げた。


「あ。せやったら、おばちゃんも行こか」


 ノア隊員が最後に手を挙げた。


「ボクが行きます!! ふんすっ!!」


 南雲さんは黙ったままそっぽ向いて「あ。まだ彼岸花が咲いてる」と呟いた。



「がっかりですよ!! 南雲さん!!」

「じゃあ私が行くよ!! とはならないでしょうが!!」


 どうぞどうぞ。



 南雲さんは背筋に氷柱をぶち込まれて、耳元で鋏をチョキンチョキンやられながら、喉元に死神の鎌の切っ先を当てられている。

 そんな幻想を見た気がして、「いや、そっちの方がまだ優しいよ。比喩表現の方が穏やかってどういうこと?」と思った。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 無駄な抵抗をヤメろ。

 こんな常套句がある。


 これは「ほんまに無駄やからヤメぇ。お互いに時間の無駄や」という意味がある一方で、他方では「ちょ、抵抗されるとヤバいんで!! 半ばブラフだけど抵抗すんなよ!! 暴れんなよ!!」という意味で使われたりもする。


「南雲さん。無駄な抵抗はヤメてくださいよ。どんだけ尺使うんですか」


 これは文字通り「ええ加減にせぇ。何したって無駄だから」という意味で使われている。

 逆神六駆。

 常識はぶち壊して、新しい道を常識と言い張る最強の男である。


「分かった! 逆神くん!! 『ハリーポッターと逆神六駆けんじゃのいし』を始めよう!! それなら私ね! 協力するから!! 誰やったらいい!? ダンブルドア先生!? ハーマイオニーだってやっちゃう!! あー! 分かった!! スネイプ先生だね!! オッケー!! 確かにね! 初期ロットの私ってスネイプ先生の要素ちょっとあったもんね!! はいはい!! そうしよう!!」

「南雲さん」


「よし。だったら私は今からロンだ。相棒だな、ハリー逆ッターくん!!」

「南雲さん」


「じゃあもう良いよ!! ヴォルデモート卿やるよ!! ちょっとスキルで私の鼻もいで!!」

「南雲さん」


 六駆くんが諭すように言った。



「いい加減にしましょうよ。ハリーポッターが一体、劇場版になってる部分だけでもパートいくつあると思ってるんですか? 原作小説読んだことあります?」

「やーめーろーよー!! 私が頑張ってメタいセリフ吐いたらその上から覆いかぶさってくるなよぉ!! 妻と娘と息子がいるんだよ!! 私には守らなきゃいけない家族がこの時代にいるの!!」


 じゃあ、未来でご家族と再会する方向で調整しておきますね。



 南雲さんの右肩にみんなが手を置いていく。

 順番に。


「修一。生きるって事は修業だぜ。負けんなよ」

「おばちゃん、公民館に戻って千羽鶴折って待っとりますよって」

「……みみっ」

「ふんすふんすっ!! ちなみに穴ちゃんの繋がってる先は何年後か分かりません!!」


 南雲さんの右肩が外れそう。


「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

「逆神くん? 事ここに至ってふぅぅぅんはヤメて? もう自分で行くから。いや、逝くから。帰って来たら覚えてろよ。逆神くん!!」



「僕は覚えてますけど、南雲さんの記憶はこっちに戻ったら秒で消しますよ?」

「くそぅ!! なんかコーヒーが美味しいなって思ったんだよ!! 以内に帰らせてよ!? 私も何言ってるんだろう!! なに!? って!! ああもう!! じゃあ行って来ます!! ……あ。私ね、今、白衣にスーツなんだけど、これ大丈夫かな? 未来ではダサい恰好になってない? ほら、バックトゥザフューチャーパート2でもさ未来でドクがマーティにあ゛」



 六駆くんが「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」と言った後で。

 もうそこに南雲さんはいなかった。


 南雲のバックトゥザフューチャーパート2、開幕である。


 穴の先に待ち構える未来とは。

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