第1450話 【エピローグオブ久坂家の湯けむり温泉殺人事件・その4】小鳩さんと六宇ちゃんの乳風呂 ~失礼しました。サブタイトルから牛が抜けておりました~

 あっくんを除いた久坂家は温泉旅館『ちちの湯』の最高級のお部屋、スイートミルクルームに到着していた。

 なお、あっくんは小鳩さんに「おめぇらは旅行を楽しんでろぃ。心配すんじゃねぇ。このクソみてぇなトラブル片付けたらすぐに俺も後を追いかけらぁ」となんか死亡フラグみたいなことを去り際に言っており「はわわわわわですわ!! 胸がキュンキュンしますわ!!」となんかよく分からんけど今日も旦那がカッコいいから最高だと小鳩さんは確信する。


「小鳩? ジョーちゃんどこ行ったんじゃ?」

「あっくんさんならば……ちょっと野暮用ですわ!!」


「ほうじゃったか。ジョーちゃんも忙しい男じゃけぇのぉ。ほいじゃったら、ワシらは温泉でも入って時間潰すかのぉ。ジョーちゃん置いて温泉街巡りするのも悪いしのぉ。まだ日も高いけぇ、軽く浸かって家族が全員揃うのを待つのがかろう」



 ちなみに男湯は「死体が転がっていた」ので入れず、久坂家のメンズは部屋に併設されている露天風呂でしばらく過ごす事になったと付言しておく。



 じい様と元じい様のハゲで今はおっさん、そして死にそうな青年。

 この3人がお風呂に浸かっているシーンを誰が求めているというのか。


 既にかなり無意味な描写に尺を割いて来たというのに。

 野郎の入浴シーンなんかに割く尺はねぇのである。


 では、湯けむり温泉殺人事件のメインへと我々は向かおう。

 湯けむりお風呂場である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 小鳩さんと六宇ちゃんは着替えを持って大浴場の女湯へ。

 近くにある男湯は物々しい雰囲気だったが「あっくんさんが気にするなって仰ってましたわ!!」とそれを華麗にスルー。

 嫁にとって旦那の言葉は全て。

 小鳩お姉さん、彼女は莉子ちゃんと同じく令和のご時世に逆行する亭主関白希望系乙女。そんなお嫁さん就任を希望している。


 だが待って欲しい。

 多様性が尊重されるはずの昨今、前時代的なものをと言って邪険に扱い、除外してしまうのはいかがなものか。

 そんな言葉聞いたことねぇよと流行語を指さして「あいつのこと無視しようぜ」などと言ってはいけない。


 ふてほど。

 恐らくだが「ぇヤツにもがあらぁ!!」の略称である。

 これも推測になるが、多分暴れん坊将軍の劇中に出て来た名言とかである。


 解釈だって千差万別。

 これが多様性の時代、21世紀の令和である。


「六宇さん、こちらが脱衣所ですわよ。ここは牛乳風呂が名物らしいですわ。ぜひご一緒いたいですわ!」

「やばっ。バルリテロリの温泉とあんま変わんないんですけど」


「それはそうですわよ。温泉施設なんて基本的に現世の文化が流入しているところでしたら異世界だって同じですわ」


 そう言って上着を脱ぐ小鳩さん。

 六宇ちゃんはとりあえず礼儀として「さすがっすね!! 小鳩姉さん!! やばっ!!」と顔を出した義姉さんのたわわに敬礼した。

 続けて気付いた事があったので義理の姉に問いかける。


「小鳩さん?」

「はい? なんですの?」


「おっぱいデカい人って可愛いブラジャーなかなか買えないって聞いてたんですけど。それちょー可愛いですね! どこで買ったんですか? いいな! あたしもそこで買いたい!!」

「ふふっ。これはこの間、チーム莉子の皆さんとお買い物に出かけた先で買いましたのよ」


「ほへー。やっぱ現世ってオシャレなお店いっぱいあるんだ!! なんていうブランドですか? 覚えとかなきゃ!!」

「んもぅ! そんなに見られたら恥ずかしいですわ!!」


 小鳩さんは義理の妹の質問に笑顔で答えた。



「これは『OPPAI』ですわ。『OPPAI』で買いましたのよ」

「…………ぇ? ぁ。そうなんだ! すごいですね!!」


 六宇ちゃんは思った。

 「おっぱい包むものをおっぱいで買うってどういうこと!? あたしバカだから分かんない!!」と。


 彼女にも流れる逆神の血がそうさせたのか、六宇ちゃんは考えるのをヤメた。



「六宇さんもシンプルで可愛らしい下着ですわよ」

「やばっ。これ、キサンタが創ったヤツなんだけど。構築スキルで。マジ? 可愛いっすか?」


 今度は小鳩さんが思った。

 「構築スキルで下着を創るってどういうことですの? 構築スキルそのものが相当に高度な技術ですわよね? それを使って、わざわざ下着を創ったんですの? よしんば創ったとして、曾祖父が創った下着を普通に使うんですの? 気持ち悪くありませんの? バルリテロリの皇族ではそれが伝統ですの? じゃあ仕方ないですわね」と。


「そうなんですのね!! すごいですわ!!」


 ちなみに五十五くんと六宇ちゃんが正式に結婚して、小鳩さんがあっくんと入籍した場合こちらのお姉こばとさんは逆神家のものっすごく遠縁だが親戚になるという事実。

 そういえばバルリテロリ戦争の時期くらいから、小鳩さんは莉子ちゃんと相性がどんどん良くなってきていた。


 逆神家と久坂家。

 ここもかなり仲良しである。

 四郎じいちゃんと久坂さんは仕事関係を超えて友達であるし、あっくんは六駆くんと友達を超えてズッ友に近い関係。借りた漫画は200冊を突破。


 なんとなくだが、12年後の未来でもこの両家が健在だったら現世は平和な気がする。

 未来から瑠奈ちゃんと京一郎くんがやって来た時に聞いておけばよかった。

 もうみんなの記憶から彼らが来訪した事実は消え去っているので、確認のしようがない。



 それこそは。

 いやはや、それは至難の業である。まさかそんな事が起きるはずもない。



 さて、ここから小鳩さんと六宇ちゃんのビッグボインとスモールボインが湯船で共演キメる予定だったのだが、あっくん探偵の方で動きがあったらしい。

 この場を離れなければならないのは痛恨の極み。

 忸怩たる思いは拭いきれないが、我々はあっくん探偵の奮戦を見届ける義務がある。


 さらば、女湯。

 いざ、隣の男湯へ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 あっくんが半裸で脱衣所に転がっている死体を見つめて舌打ちをした。

 まだ確認していないのに、なんだか見慣れた顔のような気がして「野郎……。真っ白なブリーフ穿いてやがらぁ」と感想を述べた。

 死体を見つけたら何か感想めいた発言をしなければならないのは推理ものの常識でありマナーである。

 そのため、あっくんはちゃんと感想を述べた。


 続けて手で触れるのは嫌だったのか、足でちょいと蹴とばしてうつ伏せで転がっている死体を仰向けに反転させる。


「ちっ。……これ死体、水戸さんじゃねぇかよぉ。よぉし。操作は終わりで良いな」



 死体検案書の記入は必要なさそうであった。



 スマホを取り出したあっくん。

 電話をする相手は南雲さん、ではない。

 「あの人は忙しいからなぁ。後始末させるのによぉ、実況まで聞かせるのは気の毒だろぃ」と言う優しい悪者。

 代わりに六駆くんよりも古い仲のズッ友に電話をした。


「よぉ。和泉さんよぉ。今って大丈夫だったかぁ? そうかよぉ。じゃあちっと聞きてぇんだがなぁ。ここは温泉。水戸さんが死んでる。なんか心当たり、あっかぁ?」

『……ポイズンリコスパイダーという新種が発見されまして。ごふごふっ』


 謎は全て解けた。

 そんな瞬間であった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃の女湯。

 牛乳風呂では。


「あれ!? 小鳩ちゃん!? 六宇ちゃんも!!」

「まあ! 仁香さん!! 仁香さんも来ていらしたんですのね! ものすごい偶然ですわ!!」

「こんちゃーっす!! いつも五十五がお世話になってます! やばっ。彼ピの同僚に嫁気取りで挨拶しちゃった!! 興奮して鼻血出そう!!」


 宿六が死んでいるのだが、普段からちょいちょい死んでいるせいで「あ。どうせ湯あたりとかですね。後で回収しよ」と煌気オーラ反応が消失した水戸くんに気付きながら温泉を堪能していた仁香すわぁん。


 諸君。

 これが推理ものの醍醐味。

 伏線が繋がって回収される瞬間である。


 下手くそとか言ってはいけない。

 人は誰しも最初は下手くそなものである。

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