第1037話 【バルリテロリ皇宮からお送りします・その21】「宙域の準備は完璧だ! これで負けるはずがない! ぶーっははは!!」「……陛下」 ~負けるはずがないんや!! 開戦や!!~

「え? 商店街のタバコ屋ってコンビニになったの? いつ? ワシ聞いてないけど。いや、みんな困るんじゃない? 仕事中にスパスパ吸ってるじゃん。え? 全面禁煙になったの? いつ? 令和の情報が同期してから? あー。そういえば、皇宮の廊下とかに灰皿無くなってんな。トイレのさ、小便器の隣にあった灰皿スペース。アレもガムテープで塞いであったね。へー。そうなんか。いや、ワシってタバコ吸わんからさ。気付かんかったー」

「陛下。始まってございます」


 喜三太陛下が「え。マジで?」とお呟きあそばされたのち、指におハメになられていたとんがりコーンを順番に口の中へねじ込み、ポップメロンソーダで流し込まれた。

 玉座の前の方にちょんと内股で座っていたが深い位置に御尻をお戻しになられると、手のひらを特に意味もなくバッと開かれ、突き出される。


「ぶーっはははは!! 敵の命脈、もはや尽きたわ!! 圧倒的な戦力の前ではたかが煌気オーラ構築物の要塞など!! そんなもんデカい的や!! 愚かなり、現世の民ぃ!!」



「キサンタさー。自分で創ったものにそーゆうの良くないと思う。物にも心ってあるんじゃない?」

「じじい。ガキがなんか良い事言ってんぞ!!」

「兄者。陛下のズダを爆発させてまだ数分なのにその手のひら返しは良い。とてもすごいと思うから良い」



 バルリテロリ皇宮からお送りします。

 陛下、バルリテロリには日常回などございません。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 喜三太陛下もとんがりコーンをお食いになられながら準備は万端、万全、死角なし、資格もなし。

 皇帝に資格は要らぬ。

 ただ、皇帝が皇帝であるからこそ皇帝たらしめるのである。


「陛下。御許しを得て申し上げます」

「なんだい、オタマ。もう君、1度としてワシの御許し得たことないやん? え゛え゛!? 嘘やろ……?」


「陛下。有事の際には私も戦うようにと母に言いつけられておりますので。失礼ながら無許可で着替えさせて頂きました」

「許してないんだけど!? ジャージやんか、それぇ!! 嘘だ! オタマはミニスカリクルートスーツで! パツパツのブラウスで戦うんじゃないの!? ねぇ! 嘘だろ!? タイトスカートから繰り出される百裂キックで敵をやっつけるんじゃないの!?」


「陛下」

「はい」


「陛下。おバカであそばされますか。いえ、これは家臣の心を穏やかにするため道化を演じておられる事、オタマは存じております」

「えっ」



「陛下。どこの世界にミニスカートで戦う者がいるのですか。命をかけているのにオシャレにも女子は命がけとかお抜かしになられるのですか? 胸や太もも晒して何の意味がございます?」


 現世チームにものすごく刺さりそうな口撃であった。

 でもオタマさん、リクルートスーツ乙女はまだ出ていないから。



「陛下。命がけでふざけろと仰せならば、御身でどうぞ。耳を疑いました。リクルートスーツ乙女? 昭和の時代から存在するセクハラを令和の時代にもお持ちになられますか」

「えっ!? ワシ、今は何も言ってないのに!?」


 陛下はそのようなところがございます。

 よくありません。そういうの。


 オタマがジャージに着替えて臨戦態勢へ。

 母より受け継ぎしシャモジと自分で創ったメリケンサックを両手に携え、どう見てもこれまた母譲りのゴリゴリ肉弾戦タイプとお見受けした。


「……シャモジ呼べばよくない? 十四男ランドは消失したかもしれんが、十四男もシャモジもハタハタも生きてんだろ? あいつら死なないよ。強いもん」


 陛下。カサゴです。


「陛下。母が申しておりました。常に自分の信じる正義のため拳を振るえと。母は今も、自身の信じる正義に殉じているのだと考えます」

「なるほどな! つまり、どっかで反逆の時を待ってんだな!?」



 シャモジ母さんは崇める御旗を変えております。

 だいたい13分くらい前の事です。



 テレホマンが少しだけ慌てて宸襟を騒がせ奉り恐縮をキメる。

 もう声を上げるの方がよほど短くて伝わりやすいのだが、彼は忠臣なので宸襟を騒がせ奉ると恐縮するのである。


「陛下!! ……失礼を承知で申し上げます!! メンタルが乱れておいででは? 宙域B地区のミュサイ級戦艦! 小学1年生児童が遠足の終盤で見せる隊列のようにグニャグニャになってございますが!!」


 スキルはメンタル勝負。

 世界の様々な事がどんなにモニョってもこの原則だけは変わらない。


「だって、テレホマン!! 貴重な女子の目から採るビタミンが!!」

「……側室をお呼びしますか?」


「嫌じゃ!! オタマが良い!! オフィスラブしたい!!」

「失礼しました。……全館に告ぐ。手の空いている女性下士官。陛下がオフィスラブをご所望である。命までは取られない。奪われるのはアレとナニと尊厳とかそういうのである。皇国の危機であれば、忸怩たる思いで身を捧げる貴官には厚く遇する用意がある。畑が3つほど近くにある庭付き一戸建てとISDN付きの電話。そしてテレホーダイの各世代機を望みのままに与えよう。1分で名乗り出てくれ」


 1分ほど無言で待ったテレホマン。



「陛下。宸襟を騒がせ奉り恐縮でございますが」

「ホントに宸襟騒いだわ!! えっ。ワシ、もしかして嫌われてる!?」


 ミュサイ級戦艦が3隻ほど衝突して爆発した。



 喜三太陛下、ここに来て初めてメンタルに不調をきたされる。


 モテていると思っていたらそんな事はなかった。

 あいつぜってぇ俺の事が好きだわと思っていた女子に彼氏ができた。

 2人組を作りなさいと言われてクラスの人数は偶数なのに余った。


 バルリテロリでは古くから心を蝕む3死鬼ぴえんと呼ばれており、1つでも喰らえば致命傷、運よく生きながらえても3つ全て喰らえば何も信じられなくなると伝えられている。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 チンクエが隣で服を脱ぎ始めたクイントを見て「兄者。なんという献身。すごく良い」とうっとりする。


「おらぁ! 六宇!! その制服脱げ! んで、オレに寄越すんだよ!! 急げ!!」

「は?」


「じじいがボケてんだろが!! オレが皇帝になるのに、国がなくなっちゃ意味ねぇだろが!! ……オレが! ……女子になる!!」

「……は?」


 逆神クイント太郎。

 皇帝から離れ、皇族から離脱しながらも愛国心は健在。



「ちょ、バカ! ヤメろし!! お、おま、マジで!! あたしこの下もう見せらんないヤツだから!! おい、おっさん! 女子高生を脱がすな!!」

「黙れクソガキ! 六宇なんぞで興奮せんわ!! そもそも18で大人ならちょっとパンティーとブラジャーになるくらい平気だろ! 皇国の危機なんだよぉ! 分かれよ!!」


 18だろうと80だろうと同意なしのそういうプレイは罰せられます。

 くれぐれも真似をしないように願いします。



「陛下」

「あ。はい。ごめんなさ……え!?」


 そこには、リクルートスーツに戻ったオタマの姿が。

 いや、違う。


 陛下の御慧眼はすぐに見抜かれた。


「生足になっとるぅぅぅ!! ストッキングもタイツもいいけど! 生足クリス―もええなぁ!! よっしゃ! みなぎって来たぁ!!」

「あ。陛下。落ち着いてくださいませ。ミュサイ級戦艦が6隻ほど主砲を暴発しております。陛下。それは陛下のメンタルとリンクしておられるのでしたら……。僭越ながら、替えの下着を持って来させますが」


「マジで僭越やんけ! 出しとらんわ!! 煌気オーラが溢れとんのじゃ!! オタマがワシのために……!! もうこの戦いが終わったら抱いてええんやでってヤツだろ、これ! 勝ったわ!!」

「いえ。陛下。六宇様がおキレになられてスキルを使われますと陛下が1機なくなる可能性が。また、クイント様の女装を拝見すると目が腐りますし、眼も腐ります。私はバルリテロリの民なので眼持ちです。2倍腐ります。御許しください」


 六宇が「あたし戦力に数えられてんの? 帰ろ!」と立ち上がって制服を整え、クイントが「オレはオタマを腐らせられるのか? 腐女子というヤツか! なんか知らんが良い響きだ!!」と煌気オーラを高め、「兄者。もう筆舌に尽くし難く良い」とチンクエも元気になった。


 バルリテロリ皇宮が臨戦態勢に完全移行。

 これで勝つる。


「むっ。……そうか。ご苦労」


 テレホマンが何かを受信。

 眼による同期を使い過ぎると頭が痛くなるのでバルリテロリの通信はテレホーダイが推奨されているが、電脳ラボではもう面倒になった事でテレホマンにダイレクトで情報を送ってくる。


 情報戦としてのラグは減り有利になるが、総参謀長の頭痛が痛い。


「陛下。敵の要塞、B地区に到達いたしましてございます。接触まで残り2分。お支度よろしゅうございましょうか」

「……トイレ行って来ていい?」


「はい。陛下。ダメです」

「オタマ! オタマのせいやんか!! ちょっと気持ち悪いやん!! 着替えて来るだけ! それだけだから!! ごめん! ええと……。六宇ちゃんでいいや! これね、ワシのスキル。『全天周囲指令室リニアシート』って言うの。椅子に座って感覚的な操作できるから! 3分! いや、5分もたせといて!! ごめんね!!」


 喜三太陛下がトイレに駆けて行きながらお叫びあそばされた。


「これで勝ちじゃい! 戦勝祝いにコンビニは全店24時間営業にすっからな!! バルリテロリの夜明けぜよ!! ぶーっはははは!! 開戦や! 即ゲームセットや!! ぶーっはははは!!!」


 最強の男が進行の都合上、時折どっかに行くのがこの世界。

 まさか陛下もそれをされるのですか。


 いや、御手洗である。

 5分すれば戻って来られる。


 敵との遭遇まで2分。

 つまり3分しのげばいいのだ。


 こんなもん、カップラーメン作るのと同じくらい容易い。


「おっしゃー! あたしにー! 任せとけー!! あ、なにこれ! アクセルみたいなのある!! 踏んでみよ!!」

「六宇様……!! あ。もう結構です」


 ミュサイ級戦艦が一斉に微速前進。

 敵影はまだ遥か遠く、確認もできない。


 宙域に入ると同時になんかノロノロ動いている船団。

 割と的だが、果たして。


 開戦や。


 各々方、陛下が仰せにございます。

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