第923話 【無国籍軍ストウェア・その4】今、おっぱいと聞こえたから ~同時上映・青山仁香さんの「早くここから帰らなくっちゃ……!!」~

 エネルギー兵器のビームライフル。

 失礼、噛みました。十四男キャノン。


 対するは煌気オーラ砲のグレートビッグボインバズーカ。


 頭おかしくなりそうな名前だが、ちゃんとストウェアの乗員みんなで頑張って造ったので割と高性能。

 呉の公民館砲の話を出すと虚しくなるので、今はその件について忘れてください。


 単純にビーム撃って来る十四男キャノンはスキル使いにとって結構な天敵。

 なにせ煌気オーラ抹消系や封殺系の「スキルに対する防御」が効果を発揮しないため、物理的な防壁を展開させたり、辻堂さんがやったみたいな砲撃そのものをどっかに飛ばす必要が出てくる。


 防壁スキルは熟練度が素直に反映される属性なので、ポジティブになったワチエくん辺りが「ブドウ、行きまぁす!!」とか言って付け焼刃の葡萄防壁を発現しても、何なら葡萄が粉砕されて散弾状になった挙句被害が増えて葡萄もろともストウェアが逝く。

 久坂さんは対応できるが、煌気オーラを温存して後の戦いに備えておきたい思惑がある。


 ならば転移スキル。

 ダンク・ポートマンがいるではないか。


 お待ちいただきたい。

 彼の転移スキルは煌気オーラを目印にして無理やり送り付けるタイプのもの。


 十四男キャノンの砲撃がどこかの目印になった地点に産地直送でぶっこまれる。

 それをマイアミ基地でやったせいでストウェアが反逆組織になったのであり、ダンクくんがしゃしゃり出てくるともっと世界情勢が拗れる上に、そもそも成功する可能性も未知数。


 成功すれば多分マイアミ基地が再び砲火に襲われ、失敗すればストウェアが消えてなくなる。



 リスクしかない。



 そこでグレートビッグボインバズーカ。

 こちらは純粋な煌気オーラ大砲。


 防御するためには十四男ランドも煌気オーラを使用して防壁を展開する必要があり、撃ち落せないにしても発射するだけで相手の砲撃の抑止力になるすごいビッグボイン。

 ストウェアの動力は永久機関に近いものが搭載されているが、グレートビッグボインバズーカはかなりの煌気オーラを喰うため連射すれば一時的にガス欠になる恐れはある。あるが、今回に限りその心配は薄い。


 ずーっと南極海に停泊していたため、日常生活に用いる温度調整システムや作物栽培装置など自給自足するための必要最低限しか動力が使用されておらず、煌気オーラが溜まりに溜まっている。

 ちょっと溜まり過ぎてダムみたいに定期的に放出しなければならないレベルになろうとしていたくらいであり、グレートビッグボインバズーカはまだまだ連射可能。


「よし。良いぞ。まったく落とせる気配はないが、敵の浮島の隔壁を作動させることに成功している。ワチエくん。第二射、さらに第三射。続けて撃ちたまえ」

「はい!! 川端さんが僕の上官になるんですね!! これまではただおっぱいおっぱいうるさいおじさんでしたけど!! 命令、順守します!!」


「……ワチエくん?」

「やだなー。川端さん、自己評価できてないんだからー。1日で調子が良いと60回くらい言ってるんですよー? はーい。ここはー?」


 ナディアさんが自分の胸を指さしたので、川端さんは正しい作法として、そして礼儀として凝視し、敬礼した。



「おっぱいです!! 大変結構なおっぱいです!! 嗚呼、おっぱい!!」

「あははー。水着装備って偉大ですねー」


 ストウェアの司令官は川端一真提督。

 川端さんの司令官がナディア・ルクレールさん。



 なお、おっぱい男爵の大きな声が眠っていた男を呼び覚ました。


「……はっ!! 自分は何をしていたんだ!!」


 誰が何をしたとは言わないが、仁香お姉さんが真っ先にリャンちゃんの顔を反対側に向けた。


「ほぎゃ!! 仁香先輩! 私の首はそこまで回りません!!」

「ごめんね? でも、アレ見せるのは……なんていうか、私も申し訳ないって言うか。リャンには綺麗なものを見て育ってもらいたいって言うか。うん。ナディアさんの水着を見てて?」


「なるほど!! やっぱりストウェアでは水着を装備するのがマナーなんですね! あっ! 分かった! 分かりました!! 水着にスキル使いとしてパワーアップする効果が!!」

「くっ……!! リャンの素直さが辛い!! でも! こっち向かせたくない!! なら水着に夢中になってる方が……!!」


 仁香さんがじっとりとした視線で見つめる先には。



「今! おっぱいの話してましたか!?」

「……してないです。……いえ。してましたけど」


 水戸信介監察官。

 バルリテロリとの戦争において逆神大吾に次ぐ3度目の蘇生を果たす。


 大吾は呉の公民館砲の試射で4回死んでいるので合計5回死んでいます。



 十四男キャノンを封じるためにグレートビッグボインバズーカを連射しているストウェアの甲板で、今はまったく戦う必要のない者たちが戦いを始めようとしていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 水戸くんは太もも覚醒をものにできず、爆発してフルフロンタルただの全裸になった。

 まったくもってきたねぇ器である。


「ああああ!! 仁香すわぁん!! その女の子座りぃ!! 良いですね!! チャイナ服のスリットと相性抜群で!! インナー穿いてるって分かってても見つめていたい!!」


 お忘れであろう。

 覚えている方が異常である。


 水戸くんはおっぱいと太ももが好きだが、それはあくまでも仁香さんのもの。

 「仁香さん好き好きだーい好き」が前提なので、彼女が女の子座りしているだけで世界がバラ色に輝く。


 さっきまで死んでたのに。

 全裸に楠木さんのコート羽織ってるだけなのに。


 なりたくはないが、水戸くんになったらきっと今の世の中でも生き易い気がする。


 あと彼女って代名詞で使っただけなのに、彼女カノジョという文字だけで仁香さんがちょっと睨んで来る。


「はあ。コートのボタンを留めてもらえますか? 粗末なものがチラチラ見えるので」


 仁香さんはドキッ男だらけの潜伏機動隊に長く所属しており、長期任務では共同生活をする機会も多々あったため野郎の裸を見たくらいで「きゃあああ!」とか黄色い悲鳴を上げてはくれない。


「……見られるって良いですね」

「本当に世話が焼けますね。水戸さんって」


 悲しいかな、女子との接点がないまま34歳児の大魔導士になった水戸くんとの相性はある意味では最悪、だが別視点ダメなヤツからだと最高なのである。


「仁香先輩!!」

「わぁぁ!? リャンはナディアさんの胸見てて!!」


「私、チャイナ服の下ってスポーツブラなんですけど! もう脱いだほうがいいですか!?」

「良くないよ!? リャン! もうってなに!? それは水着じゃないから!!」


「ですけど、郷に入っては郷に従えって! 私の好きな日本の言葉です!」



「私は今、その言葉が嫌いになったかな……」


 郷に入って、郷に従った結果が今の自分であると気付かされてしまう仁香さん。

 大好きな後輩の言葉は彼女にキク。


 おっぱい見せろから触らせろ、装備はヤエノムテキちゃんからチャイナ服へ。

 ニューカマーに太ももを迎えて、色々なカルマに従っている。



「リャンさん! なんですか! その楽しそうなお話! 自分も混ぜてください!」

「あー! もー!! こっちに来ないでください!! 蹴りますよ!!」


「えっ!? 良いんですか!!」

「くっ……!! 世話の焼ける度合いがアップした……!! もうこの人、私以外の全人類に嫌われるんじゃないかな! ……ちょっとかわいそう!!」


 安心してください。

 水戸くんの名前がサブタイトルに出るだけで一気に色々と減ります。


 もうこの世界では大半の人に嫌われています。


 そこにやって来たのは、バンバン・モスロン探索員(内定)であった。

 彼はパリピと紳士の二面を持ち合わせる異世界人。


 この混沌とした空間にも躊躇なく踏み込める。


 久坂さんは楠木さんの肩を「おーい。生きちょるかー」とか言って叩きながら、心の中では「あれに近づくっちゃあ……。バンバン言うたかいのぉ? 相当な素質があるわい」と若者に感服しながら距離を取っている。


「水戸さん! お久しぶりうぇーい!!」

「やあ! ピースのコピー戦士と戦った時以来だな! あれはなかなか大変なおっぱいだった!!」


「……はあ」

「あ! 違いますから、仁香さん!! 自分は仁香さん一筋です!! 確かに椎名さんの模倣おっぱいは暴力的でしたが、自分は仁香さんの程よいサイズと柔らかさがべっす」


 仁香さんが女の子座りで『音速二神拳おんそくにしんけん』を撃てるようになりました。


 吹き飛んだ水戸くんに駆け寄って、バンバンくんがスキルを発現。

 『狂乱舞踏鎧アゲアゲウェア水戸カス』である。


 性質としては外殻に近い彼のスキル。

 他人に付与する事も可能だった模様。


 煌気オーラを弾き、煌気オーラを削り取る事のできる鎧を得た水戸くん。



 なんでそんなもったいない事をするのか。



「うぇーい! 水戸さんの水戸さんがチラチラしていたので! ここは女性も多いですし、ご不快に思われる方もいると思います。女性はこういうセンシティブな事を口に出すのは躊躇われるもので。パリピでもです。相手が露出の多い服を着ているからと言って、こちらの露出しているものを受け入れられると思うのはパリピのエゴです。……うぇーい!!」


 もう常識人と書いてパリピと読むんやろと思うしかないバンバンくんの配慮によって、水戸くんが服をゲットした。


「ありがとう! バンバンくん!! 君は良いヤツだな!! 自分の監察官室に来るかい!?」

「あ。結構です。本当にお気遣いなく」


 パリピ要素が消えるくらいの拒絶を見せるバンバンくん。

 ここで仁香さん、閃いた。


「水戸さん! 太ももを見せてあげます!!」

「え゛っ!? え゛っ!? えええっ!?」


 仁香さん!?


 過度のストレスに晒され続けた結果、仁香さんのメンタルが崩壊したのか。

 そんなことはない。


 彼女は潜伏機動隊の副隊長を務めていた乙女。

 大人数の戦場で役割を見つけ、与える事は得意としている。


「水戸さんにしかできないことがあります」

「太もも、良いんですか!! サイドメニューでおっぱい付けてもらって良いですか!?」


 次回。水戸くん、死す。

 デュエルスタンバイ。

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