第908話 【魔王城からみみみみ】「みみっ。莉子さんが出番欲しいってちょっとイライラし始めてるです。至急対応して欲しいです。みみみっ」 ~メインヒロイン、放置され過ぎてちょっとキレ始める~

 こちらもミンス呉リア。

 魔王城がある方。



 魔王が何人かいる方。



 可愛いロリババアのファニコラ魔王様はダズモンガーくんの「ここは危険ですぞ!!」というファインプレーにより、謁見の間から退避済み。

 ガチの魔王様を謁見の間からどっか行かせるという蛮行に対し「もう慣れたのじゃ! ダズモンガー!! お手伝いを頑張るのじゃ!!」と笑顔で去っていくのが御年123歳のロリ魔族。


 ミンスティラリアの魔族は10で割ると現世換算の年齢になります。

 ダズモンガーくんとかの年齢を考えだすと頭がおかしくなるのでお勧めできません。


「……ふぇぇー。サービスさーん」

「ふん。……俺の練乳ストックが随分と減ったな。さては、破壊の権化か」


 莉子ちゃん、サービスさんの練乳をかなり吸い尽くす。

 カロリーが切れると不機嫌になるというまたやべぇ進化を遂げていた。


 赤ちゃんかな?


「そろそろさー。わたしもさー。なんか世界のお役に立ちたい気持ちが溢れてさー。チュッチュチュッチュチュッチュだよぉー」

「ふん。俺の個性までもを奪うか。高みに立つ破壊の権化」


 小坂莉子後方司令官。

 楠木さんがよく務めている役職だが、莉子ちゃんにくっ付けると途端に仕事の内容が変わったみたいな錯覚に陥り、最終的に「いつも目立たないけど、楠木さんってお酒飲んでないとやっぱり優秀な文官なんだな」と今はストウェアで意識不明のおじきを再評価させる。


「ふぃー。確かにだよ? 予備兵力は大事! これはもう絶対!! 最高戦力の一極集中とか愚の骨頂だもんっ!! 例えばさ、六駆くんとわたしとおばあちゃんが1か所に乗り込んで、そこが封印されちゃったりしたら大変だよ! ねっ! サービスさん!!」

「ふん。……アトミルカの連中はどこに行った。ライアンは?」


 アトミルカチームは逆神アナスタシアさんによって完全回復したため、戦局によって転移座標のある地点に逐次投入される事が決定済み。

 ならば危険な謁見の間になんかいない。


 ライアンさんも六駆くんに呼ばれて呉の方に出て行ったので、魔王城には四郎じいちゃんとみつ子ばあちゃん、シミリート技師とダズモンガーくん、アナスタシア母ちゃんなどの逆神家と魔王軍のメンバーがいるだけで、しかも各々が煌気オーラを高めていたり研究室にこもっていたりと分散している。


 ここには腋から管伸ばして未だに『サービス・ジャック』を発現中(5日目)のサービスさんがいるだけ。

 彼は生まれて初めて「ふん。居心地が最悪だな。悪くない事があるか。悪い」と悲観的な思考に憑りつかれつつあった。


 憑りつかれ切っていないのは彼女のおかげ。


「……みみっ」


 みみみと鳴く可愛い生き物。

 莉子ちゃんの副官とかいう貧乏くじ。愛と勇気と危険が友達の仕事をこなせるのは現世、異世界含めても恐らく彼女だけ。


「みみぃ。サービスさん。ノアさんから預かっていたミルクティーを淹れたです! ホットにしてみたです!! 練乳でお絵描きしたり、芽衣にはこれくらいしかできないです! 気分転換になるです?」



「……ふん。いや、芽衣ちゃま。世界をその手に握るつもりはないか?」

「みみっ! 芽衣、子供だから分からないです!!」


 サービスさん。芽衣ちゃま党員としても仕上がろうとしていた。



 そんな芽衣ちゃんのスマホが震える。

 通信傍受に気を遣っているはずなのに、芽衣ちゃんへの連絡はスマホ。


「みっ。お願いするです」

「……ふん。にぃみぇあぬゅ!! 『ピンポイント・サービス・タイム』!!!」


 原理は分からないが、芽衣ちゃんのスマホの電波周辺を停止させ、さらに別の時間軸で動かすことで高度な傍受対策が施されていた。

 いやそうはならんやろと申される方は芽衣ちゃんに聞いてみてください。


 「みー? でも、なってるです!!」という彼女を論破なされるとよろしい。

 ただし、敵が増えます。一瞬で。膨大な量の。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「みみっ。あっくんさん! お疲れ様です! みっ!!」

『あぁ。音声だけなのに芽衣が律儀な敬礼キメてんのが分からぁ。お疲れさんはおめぇなんだよなぁ。よくもまぁ、小坂の世話とか夏休みのウサギ小屋当番よりもハードな事引き受けられるなぁ』



「み゛っ! 危険が危ないです!!」

『……なるほどなぁ。危険が危ねぇヤツは射程圏内だったのかよぉ。芽衣はもう危機管理に関しちゃ日本本部に敵はいねぇな。くははっ』


 莉子ちゃんは練乳チュッチュしているので聞こえていません。

 彼女の感知能力は初期ロットの頃から成長していないのです。


 他は多分恐らく成長したので、滅多な事を口にするのもお勧めできません。



『こっちは雨宮さんから連絡が来てよぉ。俺と五十五、あとは小鳩なんだがなぁ。どうも本部に出頭する事になりそうだぜぇ。小鳩がよぉ、芽衣さんにご、ごふ、ご報告ごふ……ってうるせぇからよぉ』

「みっ。小鳩さん、具合悪いです?」


『……あぁ。さっき伝令になぁ。和泉さん肩車した土門さんが来てよぉ。油まみれのアボカド置いて行きやがって。それ食っちまったせいでぶっ倒れてんだよなぁ。まぁ、最悪小鳩は母屋に置いて行きゃあ……あ゛ぁ!? おい、ガムぅ! よせぇ!』

「みっ?」



『……小鳩は元気になったからよぉ。心配すんな』


 キシリトールが仕事をしたようです。



 久坂兄弟と小鳩姉弟(五十五くんは重複選出)は本部の増援に向かうとの事。

 チーム莉子が完全にバラバラの布陣で戦う運びとなったが、彼女たちは既に1人で巨大戦力に数えられるほどの猛者に成長したのである。


 これは喜ばしいこと。

 六駆くんが「僕がいなくなってもみんなだけでやれるように」と育てて来た蕾たちがついに大輪の花を咲かせる。


 芽衣ちゃんが「みっ!」と了解の旨を伝えたのち、あっくんを慮った。


「みみみっ。あっくんさん。芽衣は全然気にすることないと思うです。あっくんさんは悪い事してた頃から喋り方も一貫してるです。オリジナリティはあっくんさんです。みみみっ」

『あぁ?』


「みっ。辻堂さんと口調が被ってるとか思う必要ないです! みみぃ!!」

『俺ぁ別に何とも思ってねぇんだがなぁ……。五十五も結構な頻度でその話してくんだがよぉ』


「みみっ! あっくんさんにちなんで、ああああって時々鳴くのはどうです!?」

『いや……。芽衣よぉ? それ、ドラゴンボールZ時代の尺稼ぎで悟飯とかクリリンが敵の気を感じて震えながら出す声じゃねぇか……』


 芽衣ちゃんがしょんぼりした。

 彼女は間違ったと思ったらすぐに謝る事のできるとてもいい子。

 これができる人間は大人になっても意外と少ない。


 芽衣ちゃんは16歳。

 守らなければ。



「みみぃ……。ごめんなさいです……。芽衣、出しゃばっちゃったです……」

『……ちっ。ああああっ。……悪くねぇなぁ。たまに使ってみらぁ。ああああっ』


 あっくんが変な事になった。

 彼も大概には優しい男なので、戦闘中に何言ってんのか分からなくなりそうな属性をゲットして通信を終える。



 莉子ちゃんがタイミングよく練乳チュッチュを完了した。


「あっくんさん、何か言ってた?」

「みっ! 莉子さんが控えてくれているだけで現世の安定感が違うんだよなぁ! くははっ! って言ってたです! あと、小鳩さんは本部に出頭するらしいです!! みみっ!!」


 言ってません。

 いや、言っていたかもしれません。


「……小鳩さんも男子を見る目あるよね!! わたしほどじゃないけど! みんな、どうして六駆くん好きにならないのかなぁ? ずーっとね、不思議だったんだよぉ!!」

「み゛っ」


 それは莉子さんがいるからです。

 とは言えない、芽衣ちゃまである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 謁見の間の門が光ると、旦那が帰還する。


「ただいまー。じいちゃーん!!」

「六駆くんだぁ! おかえりなさーい!! わたしにする!?」


 『閃動せんどう三重トリプル』を発現して六駆くんにだいしゅきホールドご挨拶をする嫁。

 そのスピードはサービスさんをもって「ふん。……今、時間を停めたか?」と錯覚させるほど。


 あとはどこで蓄積されたカロリーに反撃されるか。

 これが今のところ死角なしな莉子ちゃんにとってのウィークポイントである。


「芽衣? じいちゃん知らない? ちょっとさ、3人であの空に出て来てる異世界を1個落として来ようかと思って」

「ふぇぇ。六駆くん、行っちゃうの? 3人って誰と誰?」



「僕とノアとじいちゃんで行こうかなって! ノアは通信役として僕より優れてるし! まあちゃちゃっとやってあ゛あ゛あ゛あ゛!! 肘が!!」


 ふくれっ面の莉子ちゃんがジェラすぃーでちょっと強めにホールドしました。

 旦那を愛で破壊できるようになれば逆神家の女としても一人前。



「おじいちゃんは煌気オーラの精度を上げるって瞑想してるからさ! 邪魔したら悪いよ!!」

「そ、そうなんだ。じゃあ、誰か代わりに連れてい゛っあ゛あ゛あ゛っ」


 このままだと六駆くんが初めて骨折しそうな気配を察知した芽衣ちゃん、副官としての務めを果たす。


「みみっ! 莉子さん!!」

「わぁー! 芽衣ちゃんってば、わたしが行けば良いって言うの!? もぉぉ! すっごく目が肥えたんだからぁ!! わたしが退役しても安泰だねっ!! 六駆くん、わたしが行く!!」


「え゛。あ゛。うん。……じゃあ、芽衣。僕逝ってくるよ。肘がなんか変なんだけど。後よろしくね……」

「行って来ます!! 芽衣ちゃん! 司令官交代だよ!!」


 逆神夫婦が門の向こうに消えていった。


 芽衣ちゃんが呟く。


「みみみっ。芽衣は、さっき莉子さんが最高戦力の一極集中は良くないって言ってたです? ってお伝えするつもりだったです。……芽衣のせいです? みみぃ……」


 サービスさんが腋から管を1つ増やしてとっておきの練乳を差し出す。

 そして続けた。


「ふん。芽衣ちゃま。……お前はまったく悪くない」


 国協を私物化して、デトモルトを私物化して、現世を手中にと立ち上がった男。

 その目は未だ、真なる強者を見据えている。

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