第902話 【チーム猫のやったるにゃー・その6】計画通りにはなかなかいかんものだにゃー ~だいたい全部瑠香にゃんがフォローしてくれとりますにゃー~

 空飛ぶゴリラが空爆中。

 どっかで見た気もする光景だが、その背中にはどら猫が搭乗している。


 お掃除ロボットに乗ってご満悦なにゃんこ動画を見てなごめる諸君は、きっとこの爆炎煙り砂塵の舞い散る様相でもほっこりできるはず。


 木原さんがダイナマイトジェットで飛行しながら背中のパイセンの安定感に留意しつつ、空いてる左手で『ぷちダイナマイト』を地上にぶっ放しており、ぷちのはずなのに地表へ着弾すると同時にクレーターが発生して、また着弾すると今度は粉塵の山ができる。

 粉塵の山とは風流ですな。見た事ないけど。


「さすがだにゃー」

「クララはもう何もしねぇのかよぉぉぉ!!」


「あたし! 指揮官なので!! 指揮しとるんだにゃー!! 芽衣ちゃんもこの間、クララ先輩とまたご飯早く食べたいですって言ってたぞなー!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!! じゃあ完璧で最高の指揮官だなぁぁ、おめぇぇぇぇ!! 乗り心地悪くねぇなぁぁ!? 安全飛行で爆撃するぜぇぇぇ!!」


 芽衣ちゃんは精神世界にすら出演していないし、回想シーンすら発生していないにもかかわらず、木原さんのコントロールに一役買って、いつの間にか主演も助演も芽衣ちゃまになっていた。

 それを裏で糸引く闇のブローカー猫がクララパイセン。


 「結果のためなら利用できるものは最大限活かすぞなー。芽衣ちゃんには今度、あたしの増えた短パンをいくつか分けてあげるにゃー」と鳴くどら猫。

 言ってることもやってることも異論はないが、大事なズッ友の心が離れていく可能性があることだけには気付いていない。


 最近、芽衣ちゃまがちょっと仁香お姉さんに取られそうな事実。

 アイドルを想い続けてさえいればいつまでも独占できるなんて考えるのはファンの独善的な思考である。


 利用した時点でもう想いすら不純な感じになっとるぞなー。


「うぉぉぉぉぉん!? 旋回するぜぇぇえ!!」

「に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」


 早速天罰が下ったのか。

 木原さんが180度角度を変えて急旋回。


 落っこちていないパイセンを褒めてあげるべきだろう。


「むぅぅぅん。仕損じたか?」


 ガリガリクソが巨大な氷塊を上空に向けて発射したのである。

 クーデターの首謀者なのに、陛下が彼の幼い頃にスキルの指導をしてしまっているため逆神元流使いでもあるガリガリクソ。


 再度空間に氷を創り出して浮遊させ、タイミングをずらしながら順番に撃ちあげる。


「あれを落とせばかなり有利になると見た。むぅぅぅぅん。『氷菓は推理小説ワタシ、キニナリマス』!!!」


 撃ちあげた氷塊は自在にコントロールされ、木原さんの後背を突いたかと思えば前方にも待ち構えており、明らかに遠隔誘導されていた。

 何も無いところに産み出されているため、構築スキルと見て間違いない。


 実はスキル使いに専念して戦った方が強いガリガリクソ。

 八鬼衆最終オーディションでむしゃくしゃして11人も先代の八鬼衆をやっちまうだけの事はある。


「うぉぉぉぉぉぉぉん!! 面倒なヤツがいるぜぇぇぇ!!」

「にゃはー。マジでそれだにゃー。あの見た目で遠距離攻撃が得意とか、それはなしのなしだぞなー。完全に氷だけのフレイザードにしか見えんのにだぞなー。ねー。木原さん。酷いぞなー?」



「うぉぉぉぉぉぉん! オレ様よぉぉぉ! 多分、バランのモデルになってると思うんだよなぁぁぁ!!」

「にゃはー!! 厚かましいにもほどがあるぞなー!! クロコダインって言ってもあたしは異を唱えるぞなー!!」


 意外と余裕があるのは何故か。



 理由はちゃんとあるのだが、その理由が理由たり得るとは言ってない。

 ちゃんとあるものがちゃんと機能する。それは一体どれほどの確率なのだろうか。


 現場のロボ猫に算出してもらおう。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「瑠香ちゃぁぁぁん!? わた、わたひぃぃい!! なんもしてへんのにぃぃ! なんかぁ、リコタンクの警告が消えへんでぇぇ! 怖いから、光ってるボタン押したら緊急停止とか出てぇ!! 何もしてへんのにぃ!!」


 パイセンの立てた作戦はこうである。

 まず、木原さんの火力で敵の目を引く。

 次いで、リコタンクの一斉砲火でさらに陽動。


 トドメは跡見瑠香にゃん最大兵器である逆神夫婦低反動祝砲サカガミラブラブキャノン改め、瑠香にゃん砲。


 ガリガリクソたちクーデター組の事をチーム猫は知らないが、転じて相手も状況は同じ。

 既に瑠香にゃんリモートによる通信でナタデココの言質も取っている。

 「彼らはクーデターしてまぁす」とは言わないが「急進的な勢力で、情報を持たずに来たため方針の違いにより暴発した」と報告しており、「それはつまり、ここ4日の事を知らんってことだにゃ?」とパイセンが判断。


 木原さんは日本本部の最大火力。

 バルリテロリの事前リサーチで知られているかもしれない。

 同じく、ルベルバック軍のリコタンクもナタデココ隊が攻めて来た際には確認されていたので、対策されている可能性は高くないにしても存在する。


 だが、瑠香にゃん砲についてはナタデココの報告を鵜呑みにするならという条件付きにはなるものの、まったく情報が漏洩していない事に。

 なにせ、彼らはギャンドゥムもろとも瑠香にゃん砲でぶち壊されて敗走しており、以降は本国からの定時連絡に短く応答するのみで「自分たち! こんな感じで死にかけました!!」という情報の優先度は低い。


 転移ポイントの死守と隠匿生活が当面の課題だったわけであり、いざ転移して再侵攻という段階になってはじめて詳細な通信ができる。

 バルリテロリの『テレホーダイ』を舐めてはいけない。


 1回線使ってたら他が不通になる程度の脆弱性しか持たないアナログ通信。

 傍受なんて秒で完了してしまうのはナタデココだって理解している。


 そしてやって来たのが呼んでないガリガリクソ。

 ここまでの状況と合わせて考えると「嘘じゃないっぽいぞなー。ここであたしたち騙して皇国の忠臣キメるなら、そもそもМ&Aになんか乗らんぞなー」と、どら猫脳がフル回転。


 М&Aと未だに言い張るのはご愛嬌。


 よって、作戦はフェーズ2。

 リコタンクの主砲一斉射。


「雷門監察官。もう何もしないでください」

「そう言うやんかぁぁぁ! けど、けどぉ、やってしもうとるからぁ!! もうやった後やからぁぁぁ! 怒られへんようにぃぃぃ、どうにかリカバリーしようと思ってぇぇぇ!! そしたら、なんかぁぁぁ! 画面真っ暗になってぇぇぇ! この世界を変えだいっ、い゛っぐ、それだけでぇぇぇ!!」


 ウフフン准将が報告する。


「瑠香にゃん殿。申し上げにくいのですが、リコタンクの緊急安全装置が作動しました」

「准将。ステータス『申し上げにくい事をハッキリ言うな』をワタシが獲得しました。事情を聞きたくありません」


「はっ。リコタンクを運用する際は指揮官機の動作が最優先となっておりまして。指揮官機から自爆プログラムが行使された模様です。とりあえずそれを阻止するため全リコタンクの動力源を停止させました」

「准将。ステータス『話を聞け』をワタシが獲得しました。『もう帰りたい』も獲得完了しようとしています。代替案はありますか」


 ウフフン准将は敬礼して言った。



「クララ殿も瑠香にゃん殿も立派なものをお持ちで! いかがですかな! ルベルバック軍をそのとてもデカいものとデカいもので統べるというのは! いやいや、これは小官が滑りましたかな! はっはっはっは!!」

「……ぽこばっかり」


 瑠香にゃんがまた少し、人間を評価し直した瞬間であった。



 ロボ猫の人工知能には六駆くんと莉子ちゃんの思考が取り込まれている。

 戦略脳としても一線級の思考回路がどうにか頑張ってギリギリ実行可能な作戦案を絞り出す。


 それは冬場の床掃除でバケツに入れた雑巾を絞る時の苦痛に迫る、辛い作業だったという。


「……成功確率、42%と出ました。もう字面が不吉ですが、ワタシは壊れてもボディを用意してもらえれば再び戦えます。ぽこたちのお墓は立派な物を作りましょう。准将。リコタンクの動力源を連結させて1つにまとめる事は可能でしょうか」

「……それはいささか危険ですな。暴発する可能性があります」


「准将。ぽこ……椎名クララAランク探索員は冷房の効いた部屋に放置すると、2分で装備をキャストオフします。そして、急な来客にも慌てることなく横になったまま動きません。これは瑠香にゃんの独り言ですが、見るなり撮るなり、お好きになさっても瑠香にゃんはスルーします」



「やってみる価値はありますな!! 祖国がダメになるかどうかの瀬戸際ですゆえ!!」

「端的小声モード。もうダメになっとるやろがい。……では、お願いします」



 続いて瑠香にゃんリモートを開き、指揮官パイセンに「あーあー。もうむちゃくちゃです」と報告する。

 代替案があるけどリスクしかないと伝えると「瑠香にゃんならやれるぞなー。ヘーキヘーキ!!」と応答があった。


 それを信任と捉え、親愛とも捉えた瑠香にゃん。

 気持ちを改め、人間の可能性に賭ける事にした。


「雷門監察官。仕事をお願いしたいので雷門監察官。雷門監察官。雷門!!!!」

「失礼します! 号泣おじ殿ならば、せやかてぇぇ! もう、こうなったら敵の首取るしか手はないやんかぁぁぁ! この世界を救いだい゛っ!! そして現世に帰って婚活じだい゛!! ただぁ、それだけでぇぇぇぇ!! と申されて、走って行かれましたが!!」


 名も知らぬ兵士の報告を聞いた瑠香にゃん。

 彼女は表情を変えない。ロボだから。


 代わりに言った。


「あなたを監察官に推薦する用意があります。ルベルバック軍から移籍されるのはいかがでしょうか」

「え゛!? 私はただの一等兵ですが!?」


 「それの何が問題なのですか。ホウレンソウができる時点でぽこではありません。では、あの号泣ぽこは何等兵ですか。いいえ。ただのうるさい中年です」と答える瑠香にゃんは、静かにおキレになっていた。

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