第895話 【バルリテロリ皇宮からお送りします・その12】陛下、ゲルググ一族がやられましたけど ~「無茶言って現地に行かせた人員の救助を急いであげて」~

 津軽ダンジョンの様子を注視していた電脳ラボから技術士官が数人、奥座敷に駆け込んできた。

 バルリテロリ皇宮からお送りします。


「……そうか。よし分かった。『テレホーダイ・ハイパー』をモニターに繋げ」


 休戦状態だった4日間を利用して戦力の休養に充てた現世サイド。

 一方、バルリテロリサイドは陛下が仕事を結構頑張っておられたので、テレホマンも自分のできる事に集中していた。


「えー。すごいじゃんか。動画中継できるようになったん? 技術革新の波が来てんなー!! 津軽の冬景色って綺麗なんでしょ? オタマ! 六宇! 一緒に見ようぜ!!」

「えっ。あの、陛下……」


 アナログ放送がデジタル放送に進化したバルリテロリ。

 眼を持たない陛下は割とウキウキであらせられた。


 まだ悲報は受けておられません。


「はー。うざっ。いい年したじじいがなにはしゃいでんだか。……早く見せてよ!! 衛星放送とかいうヤツ!! 早く!!」

「テレホマン! 早くしてあげて! 今ね、ワシ、ひ孫と価値観がジャズってんの!!」


 ちなみに逆神六宇も眼を持たない。

 眼はバルリテロリの民が元々持っていた固有能力であるため、逆神の血が混じった事により世代が後身へと進むにつれて眼が遺伝しづらくなってるとは、陛下とテレホマンの共同研究で明らかになった。


 第三世代になると眼を持つ者はほとんどいない。

 かつて「キモいもんね」と軽口を叩いた陛下は「じいさん。元からいたヤツらの個性を否定すんなや。あと、金」と孫六に諫められ、「学校のクラスメイトとかみんな眼ぇ持ってんだから、ここではキモいのあたしらじゃん」と六宇に正論で殴られた。


 陛下は陛下で「この子らが疎外感覚えんように言っただけやん……」とお考えだったが、そこは逆神家。



 御言葉にご配慮が足りませんな。



 という訳で、バルリテロリの同期から零れ落ちている数少ない曽祖父とひ孫。

 まだ見ぬ戦地の中継映像にワクテカする。


「お、オタマ様……。この電話野郎テレホマンにどうぞご助力くださいませ……」

「かしこまりました。六宇様?」


「うん。なに?」

「六宇様は戦地の映像をご覧になった事がないかと存じます」


「ないよ?」

「六宇様は一般の高校に通っておいでですので、戦史についてもほんの少し触られた程度かと」


「だね。ってか、単位落としっぱで未だに赤点しか取った事ないけど」

「はい。六宇様。その体たらくで先ほどの戦術的思考。お見事と申し上げる他ございません。さすがは陛下のひ孫様であらせられます」


「えっ? そう? そっかな! そんなにすごいかー。あたし!」

「はい。ですので、ワクテカされるのはお勧めできかねます」


「なんで?」


 オタマが頷いてから端的に答えた。



「中継映像。数分前なのでちょっと時差はございますが。性質上、修正が効きません。つまり、グロ映像が直でそのつぶらなお瞳にぶっ刺さるかと存じます」

「え゛。グロいの!?」


 六宇さん、20歳だけど女子高生。

 グロ耐性はございません。



「がーっははは! 六宇も体は立派になったがまだまだ幼いな!! なぁに、このワシが付いているのだ! 臆することなどない!! テレホマン! やったって!!」

「え゛。へ、陛下、恐れながら……」


「テレホマン様。陛下の勅命です」

「……拝承いたしました。では、ご覧ください」


 『テレホーダイ・ハイパー』でまず映し出されたのは、大破したグフとより複雑に大破したザクレロ。

 続いてなんか空間にハマって拘束されているギャン。

 肩に穴が空いたアッガイ。投降したキュベレイ。


 ザックザクに刻まれたゲルググ。


「ひぃぃ!? こ、こわっ! 何がどうなったらこうなんの!?」

「……ザクレロどうしたん、あれ? グロ超えてもう廃棄寸前になっとるじゃん」


 だが、本当の恐怖はこれから襲い掛かる。


 カメラの視点が移動した。

 『テレホーダイ・ハイパー』は煌気オーラを感知して360度回転する優れもの。

 ちょうど強力な煌気オーラが次元の狭間から引っ張り出されたところであった。


 野太い声が皇宮に響く。


『おうおう! 信介ぇ! 生きてっか!! 生きてんな? 面倒かけさせやがるねえ! ほれ、掴まれ! おーらよっとぉ!! ……おめぇさん、服だけ器用に燃え尽きてんな?』

『あ゛あ゛あ゛!! 酷いじゃないですか!! あんな真っ白な空間で独り爆発とか! 死ぬかと思いましたよ!! でも見てください! 太もも覚醒はフィジカルを上昇させる効果があるようでして!! この通り! 五体満足で! あ! 仁香すわぁん!!』


『……はぁ。服を着てください。リャンは見ないでね』

『とりあえず、楠木のの上着でも羽織っちょれ。ようもまぁ、全裸で駆け回るのぉ。子供じゃったら可愛いもんじゃが、お主34じゃろが……』


 「そうは言いますが、体が動くかは大事な確認ですよ!」と言って、水戸くんが生まれたままの姿で小走りする。

 その先にはダンジョンの床に埋め込んである『テレホーダイ・ハイパー』が1基。


 おわかりいただけただろうか。



「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? やだやだやだぁ!!」

「おわぁぁぁぁぁぁあ!? ド変態がおるやんけ!! テレホマン! テレホマぁぁぁン!! 映像切って!! ちょっときつい!! 迫って来るぅぅぅぅ!! ちっさ!! 逆に嫌だな!!」


 バルリテロリ皇帝と皇族逆神家第三世代の1人にメンタル攻撃を仕掛ける。

 一級戦功は遅れて挙げるのが水戸信介のやり方であった。



 5分ほど休憩が必要となり、六宇はテレホマンが用意したベッドに横たわった。

 優秀な軍師に成り得た人材を一時的に叩き潰した水戸くんである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ゲルググ一族が全滅。

 陛下は「アイスボックスに三ツ矢サイダー入れたヤツ用意してくれた食堂のおばちゃんには、バルリテロリ喜三太勲章を授与してあげて」と申し付けられ、清涼飲料水で心の浄化を図られたのち、すぐに下知られた。


「とりあえず、転移ポイントのリンクを切るのは待て」

「ですが、陛下。逆用されて本国に攻め込まれる可能性がございます」


「それはそうかもしれんけどね。たかが干し柿で戦場に赴かせた臣民が爆発しそうなのは無視できんでしょうよ。ザクレロとグフは爆発済みやん。早いとこ直してあげんと。……治すかな?」

「陛下。理想論を口になさるほど耄碌はされておられませんね?」


「オタマが冷たい!! と思ったら、ちょっと待って!? これ、あなたならデキるわ! って言うてはりますぅ!? よし! 皇族増やすか!! まず服を脱ぎます!!」

「陛下。先ほど母からガチンこうで作られたシャモジが届きました」



「オタマさん。それはもうシャモジじゃない。鈍器。人員ならいるんだよ。ちょっと待ってね。兵伍ー!! AV撮影スタジオ作ってやるから、こっちおいでー!!」

「ははっ! 逆神兵伍! こちらに!!」


 すごい速さで馳せ参じた兵伍。

 オタマと横になった六宇がゴミを見るような瞳で彼を捉えた。



「ちょっとさ。津軽行って来て」

「はーっはは! 陛下ぁ! ジョークは上達なされましたな!! あそこにいるガチムチの剣士! ヤツに私がめたくそにやられそうになったのはつい4日前ですが! 言っておきますが、普通にタブレットで令和のアデルティーと触れ合っておりましたのでパワーアップしておりませんぞ!! はははは!」


 陛下のハンドサインに「御意に」と頷き電脳ラボから桜色の石を持ってこさせる総参謀長。

 この三角錐の鉱石は陛下がお造りになられ、テレホマンが増産体制に移行させた転移石。


 『太った男の転移術ポートマンジャンプ』と陛下が使われる転移スキルの良いとこ取りな逸品で、一定範囲の対象を強制転移させる事ができる。

 本来はバルリテロリが戦場になった場合の非戦闘員に対する緊急避難用装備として運用される予定だったが、事情が変われば用途も変わるのが哀しいかな戦争の兵器。


 陛下は「ちょっと顔出して、これ投げつけてくるだけで良いから。あとは再生スキルで防壁張りまくって。敵を飛ばせたら救護班入れるわ」と仰せになられた。


「かしこまりました。好みのAVを好きなだけ作っても良いと申し付けられればこの兵伍、いかなる戦地にも赴きましょう! 兵伍、行きまぁす!!」

「バカ! 『太った男の転移術ポートマンジャンプ』で行くな! バレる!! ワシがやるから!!」


 陛下が片手で兵伍を転移させられた。


「よろしいのですか」

「転移先か。現世の僻地にランドを1つ転移中だから、もうそこしかないな。避難用のコロニーにしようと思ってたんだけど。ま、まあさ。あいつも皇族で、スキル使いとしてはキャリアも最長な訳じゃん?」



「ですが陛下。ご高齢が過ぎるかと。ゲルググ一族をほぼ完封した部隊を送り付けるのはあまりにも……」

「わ、ワシの方が年寄りやん」


 オタマが「陛下。最長42歳までしか老いられた事のないお方が年寄りについて語られるとは。それでこそ独裁者。御尊敬に値するクソ思考かと」と頭を下げる。



「テレホマン。増援。手厚い増援の用意。じいさんの介護がデキるタイプを重点的に。退役八鬼衆でも学徒でもなんでもいいから。緊急事態だから。とにかく強いのと優しいの。急いであげて。あと……4時間くらいの間に」

「はっ。なるべくハートフルな使い手を募ります」


 現世に3つぶっこまれた喜三太ランド(便宜上名称の異なる場合がございます)の1つは本土決戦に備えた退避ランドだった事が判明。

 意外と臣民想いな皇帝陛下である。


「いや。そこに敵の強い制圧部隊送り込むとか、むしろ鬼畜じゃない?」

「六宇ちゃん! 具合良くなったらね、ドラクエ6やってなさい!! ミレーユ踊り子にしといたから!! ねっ!!」


 完全転移までにやる事がまた増えたバルリテロリ皇宮。

 何はさておき、ゲルググ一族の救援を優先される方針が御裁可された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る