第861話 【バルリテロリ皇宮からお送りします・その8】一斉侵攻のリザルト画面 ~ひ孫からの手紙もあるよ~

 ゴシャァァとかガギャァァとか、擬音で表現する限界を突破したように不景気で不吉な音が皇宮の1階から4階まで響き渡った。

 なお、皇宮の地下1階には遊興施設、屋上の天守閣には展望台が設置されており、当日午前までならば予約をすると見学ができる。


 バルリテロリ皇宮からお送りします。


「……凄まじい音がしましたが。様子を見て参りましょうか」

「いや、ヤメとこ。なんか嫌な予感がするし」

「陛下はもう精神年齢カンストしているのですから、何に怯える必要がありましょうや。まったく、我らの始祖が情けのないことで。ふふふっ!」



「兵伍はさ。従兄踏み台にしてこっち戻ってきた割にくっそ明るいね? って言うか、いつまで奥座敷におるん? 帰って次の作戦のために準備しろよ。なんかパワーアップイベントこなしてさぁ。じゃないと君、絶対に次は噛ませ犬になっとるからね。はい。そのタブレット置いて帰りなさい。タブレットは置いて帰りなさい。早く」


 奥座敷に4人は多すぎる。

 会話のテンポは悪くなるし、何よりテレホマンと喋り方が被って説明も面倒。


 陛下はそう仰せであらせられます。



 ズチャッ、ズチャッとメカメカしい音を立てながら、アイボが奥座敷に文字通り這うようにやって来た。

 というか、這って来た。


 ズチャッはドラゴンボールZのセルとかが歩いた時に鳴る効果音で脳内補完お願いします。

 おっさんですね。って煽ろうと思いましたが、「リメイク版知らねぇのかよ!!」と逆に弱みを見せるところでした。危ない。


 なお、ドラゴンボール改はすっ飛ばして超から復帰しました。

 天さんの声にしばらく慣れず困ったものです。


「陛下。スクラップ……失礼しました。アイボ様がお戻りです」

「オタマさんや。全部言った後じゃ失礼しましたの一言でカバーし切れんと思うの。……って! アイボ!! なんかこの3時間で見た目変わってない!? 敵に改造されて、ここで自爆とかされそうで怖い!! 全員、警戒しろ!! 誰ひとりとして皇帝を守ろうとせんのな!! 良いけどさ!!」


 ちょっとファンシーになったアイボは崩れ落ちた。

 彼は半分メカで半分生身なので、ちゃんとまだご存命である。


「こりゃまた、派手にやられましたな! はははっ! 私、SかМかで言えばドМなのですが、さすがにこれは御免被りたい!!」

「うるせぇな、兵伍ぉ! 逆神の血筋はだいたいドМだわ!! 再生スキルで直してやれ! あれ? 治してやれか!? テレホマン! どっちが正解!?」



「私には分かりかねます。オタマ様。お知恵をお借りしたい」

「はい。テレホマン様。正直、どちらでも良いかと」


 テレホマンは「金言ですな」と頷いた。

 現在、テレホマンは誰の配下なのか。その点だけハッキリさせて欲しい。



 兵伍がアイボを連れて退室。

 「ああ。これ、1度パーツバラさないと厳しいですね。ここでやっても? 皮膚とか引っぺがしますが」と具申したので「マジで出てって」と陛下が下知る。


 静かになった奥座敷。

 これにて、一斉侵攻に駆り出したメンバー全ての勝敗がバルリテロリにも届いた事となった。


「あの、陛下。ウキウキで作られた、この、当選した候補の名前に党首が花付けるタイプのボード。いかがされますか?」

「片付けよ。なんか侘しさが増しそうだから」


 陛下が総括なされる。


「確保確定なのが、この津軽? 津軽ダンジョンのゲルググがいるポイント」

「陛下」


「あ。はい」

「現世から離れて確かに時間が経っておられますが、津軽で首を捻られるのですか? 忠言いたします。津軽は割とメジャーな地名です。陛下が現世におられた頃は、まだ廃藩置県が済んでいなかったしょうか?」


「そ、そうだしー!! まだ藩だったので、津軽なんてありませんでしたぁー!!」

「陛下。間抜けが見つかりました。津軽という地名は、少なくとも飛鳥時代には確認されております。はい。津軽の方々に謝ってください。早く。急いで」



「ええと、あの。適当なことを言って申し訳ありませんでした。テレホマンが今、『たわわ』というすごく魅力的な名前の銘菓をポチりました。本当にすみません」


 陛下も反省していますので、どうか許してあげてください。



 玉座に座り直して、もう足は組まずに就活生スタイルで背筋を伸ばして総括に戻られる陛下。


「あと、ルベルバックか。テレホマン。そっちどうなった?」

「はっ。ナタデココが未だに煌気オーラ枯渇状態で動けていません。ですが、私のラボから出向している技術者がおりますので、すぐに転移ポイントは確立できるかと思われます。こう言っては、私の代わりに行かせたナタデココに大変申し訳ないですが、下手に煌気オーラが残っているよりも、ほとんど死んでるゼラチン野郎の方が敵に察知されずに済んで良いかと。先ほどの報告では、半日もあれば100人単位の転移も可能になるそうです」


「そうか。よし!!」

「陛下。よくありません。まず、現世の移動拠点が欲しいという理由で退役していた先代の八鬼衆まで引っ張り出したストウェア。普通に敗北して、ついでに捕虜が2名。クソです。続けて、現世でショッピングモールそのものを人質にするという策に出たにも関わらず、何の成果もなく捕虜になった短期のモロタデ。カスです。哀愁のムリポ様は現世の同盟国である竜の国で敵幹部を2名戦闘不能に。こちら、喜三太勲章の授与を考えるレベルの成果です。ただ、ムリポ様から生体反応がまだ確認されておられません。ここまでで何か言いたい事がおありですか?」



「ないです」

「結構です。ミンスティラリアでは(バル)逆神家の分家がどちらも捕虜にされており、民家を襲撃させた皇族逆神家は片方がアダルト動画をゲットしてほくほくで帰還。もう片方は戦死。そして先ほどのスクラップ。2勝5敗1分ですが。これは成功ですか? 陛下。目を逸らさずに。陛下。陛下。陛下」


 陛下は「ギリギリ成功です」と小さな声で応じられました。



 黙って「オタマ様をお后様としてお迎えになられれば良いのに」と思っていたテレホマンが、アイボの崩れ落ちていた場所に残された紙に気付く。

 ひ孫からのラブレターであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その旨、陛下にご報告申しあげると「えー!? 和睦のお話かしら!?」とちょっとテンションの上がったバルリテロリ皇帝。


「陛下。3時間で和睦を考えておられたのですか? くるくるぱーですか?」

「……テレホマン、読んで? オタマの圧がすごいの。おっぱいが全然嬉しくない迫り方して来る。怖いから、早く読んで」


 テレホマンの代読が始まる。


「では。前略。推定ひいじいちゃん。初春の候、ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます」

「えー!! やだ! ちょー礼儀正しい!!」


「あ。陛下。これ、Wordに入ってる時候の挨拶のテンプレートです」

「……そう」


 初手で心を砕いたのはテレホマン。

 陛下は誰と戦っておられるのか。


「続けます。こちら、現世で逆神家やらされてます。逆神六駆です。今回はよくもいきなり逆神の名前掲げてこっちに襲い掛かって来やがりましたね」

「……怒ってる」



「直系の親族殺そうと思ったのはこれで2度目です」

「どうなってんの!? ワシが憎まれるのは分かるけど、もう前任者おはいせつぶついるんだけど!?」


 きっとそのうち会えるかと存じ上げます。



「僕は2週間前に婚約が決まりまして。今は婚約指輪を手作りしているところです」

「えー! めでたい!! なんかお祝い贈って和睦の流れだ、これ!!」


「それを邪魔されました。指輪作ってる時に変なの送り付けてくれましたね。あー。イライラするksg」

「……ああ。文体がどんどん崩れていくね。それがもう怖い」


「既に現世では、あなたがどこで何してんのかは知りませんけども。とりあえずじいちゃんの親父。サンタ太キと言う名前だと判明しています」

「……ワシの名前がサーターアンダギーみたいになっとる」


 六駆くんのタイピングミスです。

 時として、ワードはあり得ないミスタイプから誤変換のコンボで謎の存在を産み出すのです。


 すごく分かる。


「現在、僕とじいちゃんは探索員協会で働いています」

「うちの敵組織にうちの一族就職してんの!? そりゃ対応早いはずだわ!!」


「既に分かってやがると思いますが、クソみたいな脳みそでも。これ、倒置法です」

「ちょいちょい必要のない文章挟んで来るね? そんなに余裕あんの?」


「僕の貯金があなたのせいでピンチです。僕の人生設計もあなたのせいでピンチです」

「うわっ」

「オタマ? いつも文頭に陛下ってつけるのに、ガチで引かんとって?」


「ですが、僕も異世界転生周回者リピーターを6周させられた身。きつとひいじいちやんも何か苦労があつて、やむを得ずこんな事をしたんだろうなと思います」

「理解あるで、この子ぉ!! ミスタイプ増えて来たね?」



「で? ——で? そ・れ・で?」

「でって言った!? 2回も!! 3回目はテイスト変えて来た!!」



「やつ当たりするにしても2度目までが限度だと思います。侵攻3回目って。こっち、お宅の国がバルリテロリって名前であることも分かってます。もう謝っても遅いから。全力をもって叩き潰して、僕は貯金の保護と新たな報奨金を得ることにします。ひいじいちゃんも、地獄は慣れないと思いますが、お達者で」


 陛下のテンションがガチしょんぼり沈殿丸されました。


「追伸。この手紙に僕の親父の煌気オーラをこびりつけておきました。そっちが転移できるって事は、こっちも転移できるってことくらい考えてますよね? あ゛あ゛! 陛下ぁ!!」


 陛下の動きは早かった。


「下がってろ、2人とも!! ばぁぁぁぁぁぁ!! 『新星爆誕事故物件ニューオーダー・ワールド』!!!」


 喜三太陛下が極大スキルっぽいものを発現。

 異空間の歪みが生まれ、そこに手紙をちぎって叩き込んだ。


 対処は間に合ったのか。


 現世にお返しします。

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