第842話 【逆神家、察する・その6】『サービス・タイム』は相手が悪かっただけだと証明したいラッキー先輩 ~ノア隊員、相変わらず先輩のコントロールに冴えを見せる~

 戦線復帰したライアン・ゲイブラム。

 なお、日本本部には当然のように無許可、無申告であり、六駆くんとみつ子ばあちゃんの独断により仮釈放。


 煌気オーラを封じる拘束具も外され、やろうと思えば逃走も可能な状況で割と最近の探索員同士によるクーデターの首謀者を野に放つ。


 ここからは、逆神家の極論による正統性の主張です。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 六駆くんが独立国家・呉に向かう前に、ノアちゃんが提案をする。


「ボクに良い考えがあります!!」

「おっ! ぜひ聞きたいな! 今はノアしか相談相手いないからね!!」


「むふー!! この特別感! ずっとこの状態が改善されなければいいのに!! 逆神先輩があっちこっちに出張して、みつ子先輩も門の工作に手が離せないとなれば、ちょっと戦局が危ない気がします!!」

「んー。普通に戦えば、じいちゃんとアトミルカチームだよね? アリナさんも行ったらしいし。大丈夫じゃない? 僕でも苦戦するメンバーだよ?」


 ノアちゃんは控えめだがちゃんと存在する胸を張って宣言した。


「戦いは常に不安定なものです! 余力を遊ばせるくらいなら投入すべきと教えてくださったのは逆神先輩です! ふんふんふんすっ!!」

「んー。確かに。じゃあ、ダズモンガーくんを……いない!!」


 ここでみつ子ばあちゃんが決定打を放つ。


「ライアンさんとラッキーさん、出そうかいね?」

「えー。それ、まずくない? 僕、これ以上の責任問題は避けたいんだけどなぁ」


「六駆や。ばあちゃんに任せぇさん。このお仕事は、六駆とばあちゃんが共同でお受けしたヤツじゃろ? 六駆は知らんかった。ばあちゃんが慌ててやった。それで済むんじゃないかいねぇ?」



「うわぁ! すごいや!! やっぱり僕のばあちゃんは天才だぁ!!」

「ボク、場が煮詰まってきたら、両先輩を解放します! 盛り上がりそうなので動画も撮ります! 活躍したら、きっと黙認されちゃうんじゃないでしょうか!!」


 逆神家とノアちゃんの倫理観はジャズっており、超法規的措置を勝手に決めて、しかもすぐにキメるのが逆神家である。



 六駆くんが旅立つ前に言った。


「でも、よく考えたらさ。僕って特務探索員だよね? 監督責任、南雲さんじゃない? あと、これ雨宮さんの直接的な依頼だし。……なんか大丈夫な気がしてきた!!」


 ステキな笑顔で門の中に消えて行った六駆くん。

 知恵を付けたおじさんを、貯金とこれから発生しうる遺失利益が加速させる。


「まあ、あたしが魔王城におるからねぇ。最悪の事態が起きそうになりゃあ、本気出して捕まえるけぇ、安心しぃさん!」

「でもそのパターンだと、絶対防衛拠点作るの遅くなるよね!? よし、ノア! 僕はノアの人を操る力を信じることにしたよ! サービスさんとライアンさん、良い感じにコントロールしてね!! 無事に色々終わったら、南雲さん辺りになんかいちゃもんつけて、ランクアップ査定の色つけてもらえるように僕からもお願いするから!!」


 こうして、ノアちゃんの後輩力がブースト状態に入り、現在に至るのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 穏やかではないのが西野兄弟。


「ええ……。なんやあのおっさん……。バジータ? 自分、あのロリっ子に恋焦がれて無意識に手加減したんか?」

「バカを言うな。全力で愛を伝えるのが西野家の家訓だろうが!!」


「ヤメろや! しょうもない嘘つくの! それ、バルリテロリ皇帝のモットーやろがい!! ……変なの出てきおったで。的確な処理されたのー。あれに接近されると敵わんな。……餅奪うで!! 早いとこ!!」

「良いだろう! 求婚は後にして、まずは餅で腹ごしらえだ!! オレは砂糖ぶっかけたい!!」


「そないな食生活やから自分、健康診断でコレステロールと糖尿、どっちも引っ掛かるんやで」

「嫁さんに世話してもらうから問題ない!!」


 ハットリとバジータがライアンさんの厄介さを1度の攻防で理解。

 餅の奪取を急ぐ。


 首じゃなくて?


 餅つき大会チームにも驚きは訪れていた。


「……バニング様?」

「あれは問題ないのだろうか。いや、ライアン殿が人格者であることは承知している。しかし、六駆は知っているのか? 似たような感じで身分を保障してもらっている我々が言うのは非常に厚かましいが、それだけに分かる。本部に絶対に知らせていないだろう。あのパターン」


 アトミルカチームは未だに行方不明扱いとして各国の探索員協会と情報共有されており、当事者たちはすぐに「あ。これ私たちと同じで、このまま彼らも死んだことにされてミンスティラリアに永住するしかなくなったな?」と理解完了。


「これは申し訳ないことになりましたのじゃ。ワシが不甲斐ないばかりに」

「四郎様! 気を落とされている場合ではありません! 餅が固くなります! 私がペッタンしますので! よいしょーをお願いします!!」


「バッツさんからは職人気質な心構えを感じますのじゃわい。ワシは好きですぞ」

「恐縮です! あと2セット! 自動餅つき機の方はあと13分で最後のヤツが仕上がります!!」


 ずっと餅ついてるだけの四郎じいちゃん。

 だが、今は1月4日。


 これは致し方ない。

 正月に餅つかないで、一体いつ餅つくと言うのか。


 正月いまでしょ。


「来るぞ! 妾の煌気オーラ残量がやや危険水域に差し掛かって来たが……敵はどう見ても余裕がありそうだ。特にМ字にハゲていない方。あちらを狙うか、バニング」

「はっ。……アリナ様の口からハゲとか聞くと、急に不安に駆られますのでおヤメください」


「ば、あばばば、バニング様! だだだ、大丈夫です! だい、でぇじょうぶ!!」

「ザール? どうしてそんなに慌てる? アリナ様? なにゆえ目を逸らされる? ……攻撃をしよう。ぬぅぅぅぅあぁぁぁ!! 『魔斧ベルテ』! もはや防御に徹する必要はなくなった!! 私が突破口を開く!! 『双魔無禿大丈夫両断ツインベルテストライク』!!!」


 バニングさん、何かから逃れるように突貫。

 防御に備える妻と、一心不乱に援護射撃をする弟子。


「ほれ、見ろや。自分が極大スキル撃ちよるから、あちらさんガチって来たで」

「言っておくが、オレは防御に関してはザルだぞ!!」


「知っとるわい! バランスタイプ舐めんな!! 『田植え時の蛇バジリスク・フリーズ』!!」


 田植えの際に遭遇する蛇。

 どんなに繰り返しても体が一瞬硬直し、思考が一瞬惑う。

 バルリテロリでは1桁歳の頃から田植えのお手伝いが義務化されているので、全国民にこのスキルは効く。


「ぬぅ!? 右腕が……!! やはり六駆と同じ系統の使い手か!! だが! 私に注意を向けたこと事態がミスだとは気付けまい!! 我らにも初見殺しの使い手がいるのだ!!」


 バニングさんがそう言った瞬間に、体が固まる。

 ハットリのスキルによるものではない。


 ハットリとバジータも、餅つきチームも全てが固まっている。



「おおー! これがスタープラチナですか!! 噂には聞いていましたが、実体験するとすごいです!! ラッキー先輩! すごいです!! 唯一無二のオンリーワン!! 大興奮です!! すごいですです! すごいです! 連れて来てくれてありがとうございます!!」

「ふんっ。……ノアちゃん、高みに立つ資質を見せるか。そうだ。俺の『サービス・タイム』は相手が逆神だったから破られた。終いにはライアンの方が最後まで生き残るとか言う、まったく甘くない事態を招いたが。『サービス・タイム』は無敵!!」


 ラッキー先輩、色々と根に持っていたところをノアちゃんに「ですです」とくすぐられた結果、時間を停止させて宙を滑走しながら戦場へひとっ走り中。



 なお、ライアン先輩はピースの最上位調律人バランサーとして最後まで戦い、莉子ちゃんの黒リコモードとか言う凄惨な目に遭う敵幹部としてフォーカスされまくっていたため、今回の『サービス・タイム』に入れてもらえず。

 魔王城横のドームの天井で時間停止喰らっている。


「むはー!! すごいです!! 映えちゃいます! ラッキー先輩!! このまま敵さんをぶっ飛ばしましょう!!」

「ふんっ。ノアちゃん。先に言っておくが、『サービス・タイム』は広域の時間停止スキル。その領域内で停止した対象に攻撃をするとなれば、壮絶な煌気オーラが必要となる。なにせ、時間停止を俺がさせているのだ。それを自分の煌気オーラで攻撃する。分かるな?」



「つまり! 相手が大勢になるとあんまり意味がないんですね!!」

「ふんっ。ライアンのように適切な分析をする。……チュッチュ。俺はあまりそれを好まん。チュッチュ。だが、久しぶりに戦場で味わうチュッチュは心をチュッチュさせてチュッチュ。ふんっ。ならば、敵のせん滅も俺がチュッチュしよう。それでチュッチュだな?」


 チュッチュです。



 ノアちゃんと共に餅つき大会地点へ降下したサービスさん。

 まず、埃が舞い散っているのを確認して、それを丁寧に取り除く。


「ラッキー先輩! 煌気オーラを抑える手枷足枷のせいで、コンディション万全じゃないのでは!! 煌気オーラ減っちゃいますよ!?」

「ふんっ。餅に練乳をかける。そのために来た。であれば、餅の保護が最優先よ」


 ノアちゃんがクールな指摘をして、時間が解放される。


「でしたら、ライアン先輩もお連れするべきだったのでは!! ボクがお察しするに、『サービス・タイム』ってラッキー先輩が触れていれば中に入れるんですよね!? 定員増やしても良かったと思います!!」

「ふんっ。……ノアちゃん。……既に高みに立つか!!」


 サービスさん、ニィと顔を歪めてから「ライアン。あいつは肝心な時、いつも傍にいない」と自分で置いて来たのに文句をひと摘まみ。


 続けて、スキルを解除した。

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