第792話 【六駆&莉子のロックオンクリスマス・その1】覚醒六駆おじさんと既にキマってる莉子ちゃんの高校生活最後の聖夜

 昨年のクリスマス回として明確にデートをキメたのは、逆神六駆&小坂莉子と南雲修一&五楼京華のみと言う事実を諸君は覚えておいでだろうか。

 忘れていても無理はない。


 なにせもう1年半も前の事である。

 今がクリスマスイヴから、クリスマスは1年前だろうがこのハゲとお思いかもしれないが、1年半前の事なのである。



 何を言っているのか分からないと思うが、何を言っているのかも分からない。

 時空が違うって怖いなと言うお話。


 ハゲてへんわ。



 なにはさておき、この時空の時間経過速度もさておき、六駆くんと莉子ちゃんは高校二年生のクリスマスもデートをして愛を育んでいる。

 ならば、今年はきっと落ち着いたものになるだろう。


 この世界の法整備がどうなのかは知らないし、追及されるとちょっと困るし、エヴァンジェリン姫は19歳だからイケるとか割と直近に言及した気もするが、仮に18歳が成人なのだとすれば、この2人もイケてしまうのである。


 ただし高校生は除外するとかいう訳の分からん縛りは知らん。


 当然のように「御滝駅前のイルミネーションで待ち合わせ」と、同じミンスティラリアの魔王城から出かけて行くにも関わらず、きっちりデート感を演出するのがこの2人。

 今回は珍しく六駆くんが先に待っていた。


 注目したいのはそのファッション。

 昨年は何を考えたのか「着ていく服がないし、服屋に行く服もないから」と父親のブルドッグが背中でベロ出してるジャージで特攻しようとして、南雲さんに「私のジャケット持って行って!!」と華麗なインターセプトをしてもらい事なきを得た。


 が、今年の六駆くんはひと味違う。


 コーデュロイ素材のベージュが渋いジーンズに清潔な白いシャツ、上着はくすんだ緑のミリタリージャケットで落ち着いた雰囲気を醸し出しながらも遊び心を持たせたコーディネート。



 なんかオシャレな男子大学生みたいになっている。



 1度綺麗になってからは完全に莉子ちゃんファーストの思考を維持しており、最近は元よりも汚くなったけどその部分だけちゃんと保持している六駆おじさん。

 莉子ちゃんが好きで打算的な考えもできるようになったという、ガチのモテおじへと進化をキメる。


「……ちょっと遅いな? 莉子なら約束の2時間前には来てると思って、3時間前に到着したのに。もう約束の1時間前だよ。何かあったのかな」


 じゃあ約束の時間まであと1時間あるから、特に何もないじゃない。

 とはいかないのがこのカップル。


 現在は午後3時半。

 まだ駅前通りの人はまばらで、学生や若いカップルが散見される程度。


「いやー! 若い子はキラキラしてていいねー!! なんかもう、今が楽しければ最高!! みたいな、思い切った空気感を漂わせてるもんね! 確かに、それが瞬間、瞬間を効率的かつ最大限に満喫するためには正解のメンタルなんだけど。年取るとねー。10年後、20年後とか考えると、今を楽しんだら次を楽しむときのハードルが上がるんだよね。莉子は何も言わないだろうけど、それでも今以上、明日以上、未来は階段のように上がっていくのが幸せを感じてもらえる実践的な最たる行動だからなぁー。お付き合いって大変だ!!」



 既に人間学を修め始めている六駆おじさん。18歳です。



 そんな彼を駅前の植え込みに隠れて見つめる黒目がちな瞳が2つ。

 何を隠そう、莉子ちゃんである。


 実は1時間くらい前から植え込みと一体化しており、このままだと草スキルを覚えそうな状況のままフリーズしつつ、プルプル震えるという器用な事をやっていた。


「ふ、ふぇぇぇぇ……。六駆くんが大人だよぉ……!! あれってもう、雑誌の表紙を飾るアイドル超えてるもんっ。ジャニーズとか纏めてどっかにジャーニーするレベルだよぉ……!!」


 危険な発言してないで、早く行けばいいのに。


「どどど、どうしよ……! 子供っぽかったかなぁ? ふぇぇぇ! だって! セクシーなのは男子が引くってクララ先輩が言うからぁ!! もぉ! クララ先輩のバカぁ!!」


 どら猫さんはクリスマスに一切興味がないのに、色々なエピソードに関わっている稀有な猫です。


 莉子ちゃんはショートパンツにニーハイソックス。

 白い肩出しニットにモコモコのコート。

 どこかのお姉さんと結構ぶっているが、安心してください。


 莉子ちゃんが白いピッチリニットを着ても、童貞は殺せない。



 ただし、物理的には殺せる。



「これ、あれだよねっ!? あらー、可愛い妹さんですねー! とか店員さんに言われて、カッとなって思わずヤっちゃうパータンだよぉ!! やだよぉ!! わたし、六駆くんの彼女なのにぃ!! ひどい!! もぉぉぉ! 絶対に許せない!!」


 莉子ちゃんのシミュレーションで、早速罪のないどこかの店員さんが1名命を落としました。


「何してるの? 莉子! やっと見つけた! 煌気オーラ消すの上手になったね!!」

「ふぇあぁぁぁあっ!? りょ、りょっきゅきゅん!? な、なんでぇ!?」


「いや、なんか心配になってね。煌気オーラ感知してみたんだけど莉子が見つからなくて。普通にその辺を歩いて探してたら、見慣れたお尻が植え込みに生えてたから! こんなに可愛いお尻は莉子しかいないなって!!」

「……六駆くん!!」


「やっぱりオシャレに時間かかった? 可愛いね! その長い靴下、僕好きなんだよ! 莉子の健康的な太ももと相まって、すごく良いと思う!! モコモコしてるのも可愛いし、困ったな! 僕、隣を歩いてたらアイドルのマネージャーと勘違いされるかも! はははっ!!」


 アップグレード版六駆くんのチート感、極まる。

 ついに乙女心まで掌の上でダンスダンスレボリューションさせるように。


 ガチのレボリューションであった。


「ふ、ふぇぇ……。うっ……!!」

「どうしたの!? 具合悪い!?」



「あ、違うの! あのね! 幸せ過ぎてね! 多分ね、今! 妊娠したと思う!!」


 莉子ちゃんは性教育まで忘れてしまったのかな。



 既に瞳があっちこっちに泳ぎ散らかしている莉子ちゃんの手をそっと握ると、もうこいつ誰だよ本作の主人公のインフレとか言うレベルじゃねぇ逆神六駆くんだろ、が「それじゃあ行こうか! 僕のポケットに手を入れて良いよ! なんか莉子の小さい手が冷たいからさ!!」と歯を見せる。


 妊娠するわ、これ。


 なお、BUMPOFCHICKENの『スノースマイル』を六駆くんはさっきまで聴いていました。

 あっくんに借りたアイポッドに入っている「阿久津セレクション・冬」からのナンバーです。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 莉子ちゃんが両足をガクガク震わせながら内股でピコピコ歩いているので、歩幅をきっちり合わせてエスコート中の六駆くん。


 だが、莉子ちゃんだってこの日を迎えるために艱難辛苦の時間を送って来たのだ。

 仁香さんブートキャンプを2週間ぶっ続けで水戸監察官室にて行い、終わった後は芽衣ちゃんに担がれて魔王城へ戻って、とりあえず炭酸抜きコーラ飲んで、ご飯の前に「先に飲み物をお腹に入れておくとね! 太りにくいんだよ!!」と笑顔を見せながらノアちゃんの淹れてくれた魔ミルクティーをコクコクと嗜む。


 寝る前のコンビニスイーツは3つから2つに減らし、単独任務でモンスター討伐を4件引き受け、その全てで対象を消滅させデータが採れない事態を引き起こし、「すっごく運動した気がする!!」と笑顔で福田オペレーターを「……それは結構でした」と少し悲し気な顔にさせた。


 この努力は全て、この日のため。

 莉子ちゃんはキメる気なのである。


 勝負下着はピース侵攻防衛作戦の一級戦功の報奨金からねん出して、100セットほど買い込んだ。

 残りはちゃんとお母さんに仕送りした。


 クララパイセンの睡眠時間を5時間ほど簒奪して、決勝戦に残った2セットの下着をさらに吟味し、外のコーディネートは可愛い系だが、中身はばっちりガチエロで纏める。

 そう、もはやデートに意味などないのである。


 全ての欲は性へ。


 睡眠は14時間ほど溜めて来て、ご飯なんか食べてたらハングリーさが失われると見向きもしない。

 全てを性欲へと変換させる、莉子ちゃんメンタル。


 そのため、六駆くんの手に対して「ゴツゴツしてて結構硬いよぉー。触られたらどんな感じかなぁ!!」としょうもない感想を抱くことに忙しく、どこに向かっているのかについては意識の中にも外にも接触せず、通りすぎる街の景色もフリーソフトの背景素材以下にしか認識していない。


 ヤってやる。

 ヤってやるのだ。


 「セルフレイティングなんて眠たい事を言うんならぁ!! まずはその、ふざけた概念をぶち殺すんだからぁ!!」と燃えている。

 だが、安心して欲しい。


 ここには六駆くんがいる。


 それだけで、世界の平和は保たれると約束されているのだ。


「莉子! ……莉子? 着いたけど、どうしたの?」

「ふぇ!? あ、ごめんね!? ちょっと考え事してた!! えへへへへ。……あばばばばはばばばばはばば。こ、ここここ、ここは……!?」



「約束したじゃない! すたみな太郎で好きなだけご飯食べようって!! 仁香さんの許可も取ったし、予約もしておいたんだ! 莉子、今朝はご飯食べてなかったでしょ? ダメだよ? オシャレも大事だけど、健康な莉子が僕は一番好きだな!!」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ! すたみな太郎だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! じゅるり……」



 食欲が爆発して、性欲がどっかに飛んで行った。

 さあ、食べるのですよ、莉子さん。

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