異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第775話 【ミンスティラリアの聖夜】夜戦に挑む乙女たちが出撃したため、穏やかなクリスマス
第775話 【ミンスティラリアの聖夜】夜戦に挑む乙女たちが出撃したため、穏やかなクリスマス
ジングルベル。ジングルベル。
よく聞くフレーズであり、これを耳にすると「今年も終わりやんけ」と脳が認識し、「今年も何もなかったやんけ」と心が軋み、「まあでもね、良い事なかったけどさ、今年も無事に終わってなんやかんや良かったわ」と最終的に穏やかな精神をお迎えする、魔法の言葉。
なお、jingle bellとは「鈴を鳴らせ」という意味であることは有名だが、こいつは命令文であり、「鈴を鳴らせ。2度は言わん。良いな。鈴を。鳴らせ」とリア充たちに強要されている尻尾に鈴つけられたお馬さんが語源だったりするらしいのだけども、そんなものを知ったとこでリア充にはなれないので、仮にリア充になった場合にこんなうんちくで「やだぁ! もう、ちょー物知りじゃーん!!」とか好きぴに言われればいい。
途中から「なんやこれ」と斜め読みでサッと流した貴方。
クリスマスに興味を失くしたおっさんですね。
あるいは、何かを諦めていますね。
これがメンタリズムです。
ついにやって来たクリスマスイヴ。
時刻は夕方の4時過ぎ。
多数の者にフォーカスした、いくつもの喜劇、悲劇、惨劇をお送りするため、時系列の乱気流に置いて行かれる可能性がございます。
その際は、時空や次元に精通した元じじいの元ハゲで今は容疑者の男が「かっかっか! じゃあ、俺の弟子になれよ!!」と勧誘して来るので、どうぞお気をけて。
平和な世界から始める事が、こちらからできる精一杯の贈り物でございます。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ミンスティラリアの魔王城では。
「にゃはー!! 莉子ちゃんがやっと出撃したぞなー!!」
「みみー! 小鳩さんにも行ってらっしゃいしてきたです!!」
この2日。
朝も夜もなく、下着やらセーターやら、スカートやらニーハイソックスやら、ストッキングやら生足やら、もう頭が沸騰しそうなほどにファッションの沼へ引きずり込まれていた乙女が2人。
無事に生還をキメる。
「お二人とも、お疲れ様です!! このボク! 特に被害を受けなかった平山ノアが、先輩たちに心ばかりのミルクティーをご用意しています!!」
そして数を数えてみると「ややっ! 1人抜けても問題ないようですね!!」と判断した、1番後輩で1番の新参者であるはずのノアちゃん。
ミンスティラリアの各所にエスケープを図り、そこら辺に発現した穴で状況はしっかりと把握し、つい先ほど戻って来た。
「うにゃー。ちょー甘いぞなー。けど、疲れた心に染みるぞなー」
「みみー。甘いものに惹かれる莉子さんの気持ちが分かってしまうのです」
ノアちゃんはただサボタージュをキメて、先輩乙女たちに艱難辛苦を強いていたわけではない。
ちゃんと、2人にもクリスマスを味わってもらうために用意をしていたのだ。
「では! こちらをどうぞ!!」
ノアちゃんが取り出したのは、サンタ服である。
なるほど。非恋愛参加乙女たちだけで、クリスマスパーティーを楽しもうという趣向。
これはデキる後輩、ノア隊員。
「にゃー。あたしの、胸がほぼ出てるぞなー。あとものっすごいミニスカだぞなー。これ胸チラとかパンチラに気を付けても手遅れなヤツだぞなー」
「みっ。芽衣のは普通に短パンです! 結構可愛いです!!」
ノアちゃんの手には普通に握られているスマホ。
あと、この日のために雷門監察官室の備品から拝借してきた一眼レフカメラ。
「せっかくなので、記念写真を撮りましょう! ふんすっ!!」
「に゛ゃ゛-。ノアちゃんはどうして一切の露出をしないトナカイなのかにゃー?」
「ボクなんかがサンタなんておこがましいです!!」
「みみっ。芽衣はもう諦めているです。どうせノアさんに月刊探索員の編集部へ写真売られるです。なら、せめてまともな顔で写るのがただひとつの抵抗です」
芽衣ちゃんが正解。
ここのところ、ノアちゃんは月刊探索員の編集を行っている協会の広報部に通い詰めており、「ボクのスキルを使えばスクープ山盛りです!! これは査定になりますか!!」と階級を上げるためのアプローチを広域へ拡大。
新年特大号に向けて、チーム莉子の写真の価値が極めて高い事を知っているのだ。
「ちなみに、写真撮影が終わればダズモンガー先輩率いるお料理部隊の作り上げた、超絶クオリティのクリスマスディナーがあります!! みつ子先輩がレシピを書いてくださったので、味はガチです!!」
「にゃはー!! さあ、好きなだけ撮るといいにゃー!! どーせ芽衣ちゃんの添え物なんだから、あたしなんかどんな写真撮られてもノーダメージだぞなー!!」
「みみみっ。クララ先輩のファンもそれなりにいるのに、この警戒心の無さは危険だと思うです」
ご飯に釣られたどら猫があられもない写真を撮られ、芽衣ちゃんは慣れた感じで可愛い顔の写真を提供。
ノアちゃんは結局自分だけ1枚も写らないという完全犯罪を遂げた。
宴の時間である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「失礼いたします! ザール・スプリング、ご招待に応じました!! 我らアトミルカからは、バッツさんの照り焼きチキンがございます!!」
「ボンバーで焼いてきました! 外はパリパリ、中はジューシーです!!」
アトミルカチームからは介護を放棄したザールくんと、家でチキン食ってたバッツくんがお呼ばれする。
なお、ノアちゃんに「日本ではこの恰好でなければパーティーには参加できません!!」と噓のドレスコードを伝えられたため、サンタスーツをお召しになっている。
とりあえずパシャパシャと撮影をキメるノアちゃん。
「むふふー。ザール先輩は北欧系のイケメンなので、これは大変良いものをゲットしてしまいました!! 謎のイケメンとして売り込みます! ふんすっ!!」
アトミルカチームで唯一シングルナンバーではなかったザールくん。
国際的に手配されていたのはシングルナンバーまでなので、彼の素性を知る者は探索員協会の中でもごく一部。
ノアちゃん、ザールくんを手土産にCランクへの昇進を迫るのか。
「うまうまだにゃー!! やっぱりチキンだぞなー!!」
「みみぃ! みんなで過ごすクリスマス、初めてです!!」
ガツガツ肉を貪るどら猫パイセンと、もきゅもきゅチキンを頬張る芽衣ちゃん。
「ややっ! そうなのですか? 去年もチーム莉子は既に結成されていましたが!!」
「にゃはー。去年は莉子ちゃんがガチって荒ぶってたから、あたしたちは安全のために本部に詰めてたにゃー」
「みみっ。芽衣はまだ中学生だったので、遠藤家でのんびりしてたです!!」
そこにやって来るのは、お料理クッキング調理師エプロンタイガー。
「ぐーっはは! こちらをどうぞ、皆様方!! グアルボンで作った酒でございまする!! 半年の商品開発の末、スパークリングワインのような仕上がりになりましたぞ!!」
グアルボンはカエルみたいなモンスターです。
糞から生えるグアル草はホウレンソウとモロヘイヤを足したような草で、ダンジョンでは光りますが、ミンスティラリアでは野菜にカテゴライズされています。
六駆くんの好物です。
「みみっ。クララ先輩が何の躊躇もなく行ったです!!」
「んーにゃー。うーまーいーぞーなー!! ファンタグレープみたいな口当たりだぞな!! 芽衣ちゃん、飲んでみるかにゃー?」
昨今のコンプライアンスでは、酒の席で未成年に「ちょっと飲んでみろよ」と囁くのは立派なパワハラです。
「みみみー! いただくです!!」
芽衣ちゃま?
「ぐーっはは! 安心されよ!! その『グアルボンのゲロ』に現世のアルコールは入っておらぬのです! ミンスティラリアの魔素を含有した『リコリコール』を注入して疑似的なアルコール飲料にしたため、酔いは1時間ほどで抜けまするぞ!!」
ザールくんが怪訝な顔をしながら、食べていたチキンを皿に置いた。
「ダズモンガー様? それは、あのカエルの吐瀉物なのですか?」
「ミンスティラリアでは昔から一般的に食事のソースとして使われておりまするぞ? 普段の食卓にも。緑色のソース、あれは全てグアルボンのアレです!!」
「……私はまだ、世界を知らない。アトミルカでしか常識を培うことがなかったせいか。クララ殿、私も一献頂きたい!!」
「にゃっふっふー! ザールさんもイケる口だにゃー!! ドロッとしててうまうまだにゃー!!」
楽し気にグアルボンのアレを飲む3人を眺める、ノアちゃんとバッツくん。
「バッツ先輩は飲まないのですか!?」
「いや、私はちょっと……。郷土料理にこんなことを言うのはアレだけど。さすがにカエルが吐いたものは……」
「ボクも同感です!! 実はグアル草も食べたふりして、莉子さんのささみのサラダにぶち込んでます! ふんすっ!!」
「分かるなー。食べるものには気を遣いたいよね」
実はグルメな2人、ここに来てグアルボンに対する嫌悪感を表明する。
もう4ヶ月くらい住んでいるのに。
こうして、賑やかな夜は厳かに進む。
彼らの宴は日が変わる頃には終わり、それぞれが極上の気分で寝室へと向かい、フカフカのお布団で良い夢を見たという。
性の6時間は寝て過ごす。
これが清く正しいチーム莉子の過半数を占める、乙女たちの過ごし方。
翌朝にはダズモンガーくんがドアの外にそっと置いておいたプレゼントがお出迎えする。
中身はグアルボンの姿焼き。
吐瀉物出したあとのグアルボンは死にます。
クリスマスはこういうのでいいんだよ。
次は性夜です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます