異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第760話 【順番に監察官室を覗いてみよう・その2】五楼上級監察官室はあっくんが頑張る ~みんなであっくんをいじる回~
第760話 【順番に監察官室を覗いてみよう・その2】五楼上級監察官室はあっくんが頑張る ~みんなであっくんをいじる回~
本日は五楼上級監察官室からお送りいたします。
現在、部屋の主である五楼京華さんは産休のため不在。
南雲が2つ並ぶと業務に支障が出るため協会の登録名は「五楼京華」なのだが、モノローグでは途中から「むしろ旧姓で呼んでた方が紛らわしいやんけ」と、南雲京華さんで通しているため、なんだかもう既に情報が渋滞中。
大変ご迷惑をおかけしております。
五楼上級監察官室には数人のAランク探索員が所属しているものの、彼らは京華さんの教えを受けているため「階級よりも実力重視。経歴よりも現在をリスペクト」がモットー。
よって、苦労人が苦労をしているのがこの部屋の現状。
「あぁ? 任務はよそ回せって言ってんだろうがよぉ。対応できる人間がいねぇんだよなぁ。俺だぁ!? あのなぁ……福田さんよぉ。俺が抜けたら、もう回んねぇんだって分かって言ってんだろうが。あーあー。分かった。ちっと待ってろぃ。どうにかするからよぉ」
端末をカタカタターンしながら、データベースを片目で確認。
すぐに別の端末から空いている探索員へ連絡を入れる。
「あっくんさん。どう思います?」
「あぁぁ!? 春香さんよぉ。あんたが働いてねぇ件についてなら、結構頭にキてんだが? それ表明しねぇと伝わんねぇのかぁ?」
「クリスマスが近いのにですよ。健斗さんが何も言ってこないんです。私の予想だと、なんか欲しいもの買ってもいいっすよ! とか笑顔で言ってくるはずなのに。おかしくないですか!? ……まさか、浮気!?」
「仕事してくんねぇか。オペレーターさんよぉ」
春香さんもクリスマス病に侵されているため、仕事が手に付きません。
あっくんは特務探索員。
探索員憲章では「監察官以上の権限を持つ者の指揮下で活動を許可する」とされている特別枠なのだが、京華さんは「あとは任せるぞ。阿久津」と言って産休へ。
今は久坂監察官が「ワシが責任取るけぇ、好きにやってええで。……引っ越しの話は結論まだ出んか? のぉ? 二世帯住宅が嫌なら、家建てるけぇ。土地はあるんじゃ。金もある。心のゆとりだけ減っていくんじゃ。のぉ? 浄汰? ジョーちゃん言うた方が親しみ出るか? のぉ?」と、後見人を引き継いでいる。
つまり、南雲監察官室で活動している小鳩さんと同じ感じになったあっくん特務探索員。
「小鳩とお揃いにしちょいたで? お主、親戚とかおらんかったよのぉ? ワシが愛するのは五十五だけじゃけどのぉ。天涯孤独じゃあ結婚するときに面倒じゃもんのぉ。……養子の枠は空いちょるで!!」と、ガチで弟子と結婚させる気満々な久坂老人。
あっくんが旅に出なければ良いのだが、義理堅い彼は仕事を放り出せない事情がまた1つ増えていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あー。あっくんさん。ルベルバックへの報告書、期日が明日ですよ?」
「……とっくに仕上げて送ってんだよなぁ。……こいつ、いつの間にかテーブルで菓子食ってやがるだと」
ルベルバックにとって「アクツ」は大変不吉な言葉であるが、先のピース侵攻防衛作戦において友軍として参戦したルベルバック軍。
ダンジョンから引き上げて来た阿久津浄汰特務探索員、当然彼らと遭遇する。
先んじて南雲さんと福田さんが現状のあっくんについてキャンポム少佐に報告はしていたものの、それと本人の心境は別問題。
装備を外し、あっくんはキャンポム少佐の元へ向かい短く告げた。
「……今さら言い訳をする気はねぇし、過去を清算できるとも思ってねぇ。やりたい放題したツケはてめぇで払わせてくれぇ。厚かましいが、日本本部は関係ねぇって事にしてもらえっと、スムーズに首を差し出せるんだがよぉ」
潔く出頭し、刑罰を受けるとあっくんは申し出る。
だが、キャンポム少佐は首を横に振った。
「貴様、いや、貴官の有り様は既に聞いている。いささか驚いたが、既にこの国の法で裁かれ、償った後であれば我々は特に貴官から何かをいたずらに奪うつもりはない」
「……んな、甘ぇこと言ってっからよぉ。国をこんな小僧に乗っ取られんだぜぇ?」
あくまでも首をお土産にさせたいあっくん。
ちなみに、小鳩さんが腰にしがみついているので会話の割にシリアス感が足りなかったと、のちに南雲さんが報告書に綴っている。
「貴官の言いようにも一理ある。愚かな皇帝の独裁を許していた我々にとって、貴官の暴挙はある意味では転換点となったのもまた事実。結果的にという物の考え方を私は嫌っていない。それでも貴官の気が済まぬというのならば、この国のためにその手腕を発揮されよ。……私は旦那の身を泣いて案じる妻から、想い人を簒奪する趣味はない」
「……ちっ。後悔するぜぇ?」
こんな感じのやり取りの後で、あっくんは「結晶外殻のデータを全て提供する」旨を自分で決め、定期的に報告書の形でルベルバックに送る事にした。
兵器が自慢のルベルバックにとって、未知の武装だった結晶外殻の情報を得られることは利益だけが大きく断る理由もないため「ご厚意に感謝する」と返信が行われ、現在のあっくんの仕事が増えたのである。
カロリーメイトを咥えて端末を操作する彼の元にやって来たのは、小鳩さん。
「失礼いたしますわ!! あっ! またそのような食事をしておられますのね!? ダメですわよ!! お弁当を持って参りましたの!! 少しだけ休憩してくださいまし!!」
「ったく、うるせぇヤツが来ちまったぜぇ。ちっと待ってろぃ。あと1時間で済むからよぉ」
小鳩さんは譲らない。
「そんなワガママをおっしゃられるのならば、わたくし、あーんして差し上げますわ!! 春香さんも他の探索員の方も見ておられますけど! あっくんさんにご飯を食べさせるためならばわたくし、構いませんもの!!」
あっくんがうっかりルベルバックにセルフ収監されそうになった現場へ立ち会ったことで、小鳩お姉さんから遠慮が消失。
グイグイ行って、絶対に手を離さないと決めたらしい。
これはアレがナニするのも近いか。
「あー。いいですね、お熱くて。私は旦那の浮気に怯えて仕事してるのに!!」
「……まったく仕事してねぇだろうがよぉ。……ちっ。休憩だぁ! おめぇら、全員休め!! 俺ぁ性格が悪ぃからよぉ! てめぇの都合に周り巻き込むんだよなぁ!! くははっ」
五楼上級監察官室は当面の間、安泰の様子。
春香さんも小鳩さんから「山根さん、何か準備されているみたいでしたわよ?」と、乙女のサプライズ潰し情報をゲットして「さあ! 皆さん、仕事しますよ!!」とやる気を回復させるに至る。
今、昼休みに入りましたが。
実質的な指揮官になってしまったあっくん。
文句を言いながらも仕事を人の数倍こなす様子をこの数か月ほど近くで見て来た、監察官室所属の探索員たちが「私にスキルの指導をお願いします!」「私も、ぜひ!!」と申し出るようになり、仕事はさらに増える。
あっくんの返事は決まっている。
「あぁ? んな面倒な事ぁ、ぜってぇ嫌だね」
そういった数秒後には「……ちっ」と舌打ちをするのであった。
お疲れ様です、阿久津浄汰特務探索員。
◆◇◆◇◆◇◆◇
南雲家では。
送られてきた今日の業務報告を眺めている身重の京華さんが、首をかしげていた。
スマホを手に取り、表情を引き締める。
「……確認だけしておくか。ああ、私だ。阿久津か。もう帰宅しているな?」
『あぁ。なんだぁ? 時間外労働は勘弁しろぃ。つーか、京華さんよぉ。あんた、家で仕事すんなって言ってんだろうが。じっとしてろぃ。いい年なんだからよぉ』
「誰がババアだ!! 産婦人科では、えー! 20代かと思いましたぁー! と看護婦の皆さんに言われている!! ふざけるなよ、貴様!! 戦争するか!?」
『……気が立ってらっしゃるみてぇで。で? 何のご用だぁ?』
「……命を拾ったな。先ほど送られてきたファイルについてだが」
『はぁ? んなもん送ってねぇぜぇ? 週に1度しか報告しねぇって言ってんだろうがよぉ。あんた、すぐ仕事するからなぁ。南雲さんが困ってんだよ』
「確かに貴様の名前で送られて来たぞ。タイトルは、『阿久津特務探索員の結婚と住居変更についての許可申請・最優先で頼むけぇ、すぐ決裁してくれるかいのぉ』とあるが。ん? ……結婚するのか、阿久津ぅ!! そこのところを詳しく!!」
「……ちっ。容疑者が多すぎて絞れねぇ! 小鳩ぉ!! ……あぁ? 分かった。……ちっ。悪かったつってんだろうが。泣くな。……別に嫌とは言ってねぇだろうがよぉ。……上級監察官殿よぉ。とりあえず、後日改めて報告って事でいいかぁ? スマホ持ってる腕が重くて敵わねぇ」
京華さんは「構わん」と答えて、スマホを置いた。
表情が一気に緩む。
続いて、キッチンで野菜たっぷり雑炊を作っている旦那に向かって満面の笑みで告げた。
「おい! 修一!! 阿久津がそろそろ観念しそうだぞ!! どんな顔でプロポーズするのか、見に行こう!! クリスマス付近が怪しい!! 修一の休みを申請しておくぞ! 私の名前で!! ふふふふ!」
「……ストレス解消になるなら良いのかなぁ。ごめんね、阿久津くん。あとね、上級監察官宛てに私的なファイルを送り付けられる人ってすごく限られてるんだよ。もう1回、ごめんね。それ、私の師匠だ」
五楼上級監察官室は仕事をし過ぎなので、ちょっとくらい怠けても良いかと思われた。
だが、何から逃げるように「おらぁ! 次の仕事持って来い! 早くしろぃ!!」と翌日からさらに働くあっくんなのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます