第754話 【チーム莉子の冬・その6】帰って来たノアちゃんリポート!! 冬の陣!! ~今回もモノローグを乗っ取る乙女~

 次元に干渉したり、空間を歪めたり、対象を洗脳したり、美人局したり。

 未だ何の属性で何のスキルを使っているのか分からないが、戦場に投入すると理外の行動で割と活躍して戻って来る、平山ノアDランク探索員。


 だが、ピース侵攻に際して結構活躍したにも関わらず、昇進査定の基準にかすりもしない事ばかりしていたので、悲しいかなランクは据え置き。

 「だったら! せめてボクに1話ください!! 日常回はボクが自分でプロデュースして、魅力を発信! そして外から探索員協会にノアのランクを上げろとシュプレヒコールの波を起こすのです!! ふんすっ、ふんすっ!!」と熱い要望に応え、かつて1度やった事があるものの、いったい何人が覚えているのだろうという、ノアちゃん乗っ取り回の第二弾です。


 我々は観測者として、彼女の活躍を見守りましょう。

 アレがナニした時にだけ、天の声システムで補足説明と世界の防衛を行ってまいります。


 諸君におかれましては、ご理解のほどよろしくお願いいたします。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 皆さん、おはようございます。

 現在午前6時半。

 一昨日、学校帰りに莉子先輩と下着売り場に寄って、ナイトブラを買おうとしたら店員のお姉さんに「あなたたちにはまだ早いかなー」と言われました。


 ボクは16歳なのでセーフですが、一般的に成長が終わる18歳の莉子先輩にはひどいこと言いますね、興奮するなぁと思いました。

 平山ノアです。



 ——2度と行かないでください。



 先ほど、クララ先輩のベッドにダイブをキメて来たところです。

 大変柔らかかったです。

 もう仕事が終わってしまったので、学校の時間まで逆神先輩のお手伝いへ向かいます。


 ——ノアちゃんは魔王城の隣にある、ドーム型の施設へと駆けて行きました。


 ここは最近、逆神先輩と四郎先輩が作ったアミューズメント施設です。

 中はとても面白いので、ボクは暇があれば寄っています。


 ややっ。逆神先輩が既にお仕事をしておられました。

 ミルクティーを差し入れしなければなりません。


「おっ。ノア。今朝も早いね! それくれるの? うわぁ! 甘い!!」

「逆神先輩への献身はボクのアイデンティティです! 莉子先輩が今日の下着を30分かけて思案している間に、ボクは徳を積むのです!!」


 逆神先輩は毎朝、同じ時間にこのドームで……あっ。似ています。

 このドームとコンドー


 ——やらせはしません。


 では、逆神先輩が煌気オーラをぶち込んでおられる先輩方にもご挨拶です。


「おはようございます! ラッキー先輩! ライアン先輩!! 朝のミルクティーをお届けにやってきました! 平山ノアです! もういい加減、気軽にノアちゃんとお呼びください!!」


「ふんっ。娘か。飽きもせずによく来る。……だが、このミルクティーは悪くない。練乳を淹れるように助言してやったことをすぐに実践。……高みに立つか、娘」

「我々は捕虜と容疑者を兼ねている上、逆神特務探索員の手を煩わせているというのに、差し入れを頂けるとはな。心遣い、痛み入る」



 ——とんでもない先輩を2人増やした、平山ノア隊員。



 ボクの売りは人懐っこい性格なので、すぐ後輩になれるのです。

 みんなの後輩。それがボク。平山ノア。16歳です。


「逆神特務探索員。我々のような危険因子と幼い少女を対面させるのは良くないのではないか? 貴官の中身がおっさんだということは理解しているが、まさかこの少女も中身は更年期ではあるまい? その場合、以降の私のセリフは文字化けすると心得てくれ」

「むっふふー! ボクは純正の女子高生です!! ライアン先輩! ノアちゃんと呼んでくれないと、今日のにゃんこ写真を見せてあげませんっ!!」



「くっ! の、ノアちゃん!! 後生だ! 見せてくれ!! 君がしつこく朝晩、ワンコとにゃんこの写真を見せてくるから! 私は! もはや、君なしでは過ごせない体に!!」

「よくできました、ライアン先輩! 今朝は一昨日、莉子先輩とナイトブラを買いに行った帰りに出会ったぶちネコさんです!! ふんすっ!!」


 ——ライアン先輩はもうノアちゃんに落とされていました。



 新しい先輩たちにもノアの魅力を布教したところで、学校へ出動です。

 今日は莉子先輩も登校するらしいので、お供するのです。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 逆神先輩と莉子先輩が大学に進学されるので、ボクが追いかけない理由はありません。

 つまり、学業も疎かにはできないのです。


「ノアちゃん? 寒くないの?」

「むっふふー! 逆神先輩が教えてくれた修業のひとつです! 煌気オーラで体を覆うことにより、薄着でも防寒ができるようになれば、煌気オーラコントロールの練度アップです!!」


「えと、なんか小刻みに震えてるよ? すっごく内股になってるし」

「それは寒いからです!! 体操服だけで12月の朝はボクにとって強敵です!!」


 逆神先輩はいつもボクのために修業のメニューを考えてくれるので、常に実践するのがノアのやり方です。

 学校生活でも時間は無駄にできません。


 ボクも早く、先輩たちに追いつかなければいけませんので。

 ややっ。クラスの女の子たちを発見しました。

 元気よく挨拶をして、キュートな印象を植え付けなくては。


 ボクは気づいたのです。

 男子にも女子にも支持される魅力。これが階級アップの近道だと。


 ——念のために申し上げておきますが、そんな査定項目はありません。


「おはようございます! 皆さん! 平山ノアです!!」

「おはよう。平山さん、今日もそんな恰好なんだ? また、逆神先輩の命令?」


「もちろんです! 逆神先輩にボクは身も心も捧げ済みです!! ふんすっ!!」

「大変だね……。ていうかさ、髪伸びたよね? 切らないの?」


「ちゃんと小鳩先輩に整えてもらっているので問題ありません! 逆神先輩の命令により、ノアはツインテールで生きていくことが宿命づけられたのです!! お許しが出るまで、髪だって切れないのです!!」


 ——ノアちゃんは六駆くんの「莉子と芽衣とノアは背丈が同じくらいだから、たまに見分けつかないんだよね」という発言のせいで、髪型を固定しております。



「……逆神先輩ってやばっ。すっごい支配欲じゃん。彼女いるのに」

「服装から髪型まで管理してるとか、ちょっとサイコな感じするよねー」


「えへへへへへへへへ」


 ——旦那の評価が下がっても「わぁ! わたしの独占権が強くなったよぉ!」とニコニコしているのが、最新バージョンの莉子ちゃん。ご機嫌ですね。



 三年生の先輩方は既に自由登校期間ですが、ボクは今日から定期試験です。

 ここは優秀な成績をゲットして、文武両道な平山ノアをアピールするのです。


 では、試験に集中したいので、管理権限をお返しします。

 平山ノアでした。


 ボクのファンの皆さんとは少しだけお別れです。

 だけど割と簡単に乗っ取れるので、ボク回が恋しくなったら呼んでください。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんなわけで、管理権限を返してもらえました。

 翌日の南雲監察官室の様子をお届けして、本日はお別れとなります。



 正午過ぎ。南雲さんの目の前に門が生えてきた。


「おや。逆神くん。珍しいね。こんなお昼から。ご飯食べに来たの?」

「……あの。午前に学校へ行ったら、下駄箱にですね」


「ラブレターっすか!! やるっすねー、逆神くん! 10枚はあるじゃないすか!」

「……中身、読みます?」


 「女子の敵! 平山さんで遊ぶのヤメてください!!」「小坂先輩がかわいそうだと思わないんですか!!」「小柄な女子ばかり集めて、このロリコン先輩!!」などと、おじさんのハートを破壊する女子高生たちの抗議文が11通ほど下駄箱に叩き込まれていたと、六駆くんは下を向く。


 おじさんは若い女の子にディスられると、理由は分からずとも、根拠がなくとも、身に覚えがなくとも、とにかくなんだかへこむのである。


「……お昼、かつ丼でも出前頼むっすかねー。逆神くん、大盛りいっとくっすか?」

「レディースサイズでいいです……」


「まあ、そんな気を落とさなくてもいいじゃない。君には小坂くんがいるんだし」

「南雲さん? こんな仕打ちを実年齢の半分以下の女の子にされて、元気に前を向けると思います? これ、お金欲しいとかとは感情の区分が違うんです」


「……うん。分かる。私も昨日ね、食堂で若い探索員の子の近くに座ったら、すぐに席立たれてさ。あれ、本当に心を折られるよね」


 そんな南雲さんにも悲報があります。


「……南雲さん、御滝高校から連絡が来たんすけど」

「うん。何かな? ああ。今年の寄付のお礼とか? 年末だもんねぇ」



「平山さん、全教科で赤点取ったらしいんすよ。しかも、試験を体操服で受けてたとかで、どんな教育してんだバカ野郎って連絡が。学年主任の先生から。このままだと留年だそうです」

「……そう。……ちょっと失礼。……もしもし。はい。お世話になっております。南雲です。いつもの特選羊羹を贈答用でお願いします。はい。午後いちで受け取りに。はい。……2万円分ほど。あ、やっぱり4万円で。職員室に先生方が何人おられるか分からないので。はい。失礼します」


 ノアちゃんは笑顔で多くの人を虜にする、不思議な魅力の乙女。



 だが、おじさん2人の顔を曇らせていることに関しては本人も気付いていない。

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