第715話 【チーム莉子の初夢・その6】平山ノアはダズモンガーくんと夢を見るか

 ついに残るは1人。


「おおっ! まさかボクがオチの担当ですか!? どうしましょう! これは想定外です! しかし考え方を変えて見ましょう! ボクは大トリ! つまり、北島三郎先輩! 直近だと福山雅治先輩!! 肩を並べてしまいますか!! 大変な事になりました!!」


 映す価値なしではなく、映すと危険なノアちゃんが残ってしまった。

 パラレル日常回の性質上、例えば良い感じに落とせる南雲修一監察官あたりを召喚チャオることも叶わず、ならば既に1度出たメンバーを巻き込んでからの被害者オチしかないと考えるも。


「芽衣ちゃん! あたしと一緒にお餅でもつくにゃー!! お外で!! 魔王城からかなり離れた荒野とかで!! 不運ハードラックダンスっちまわない距離を取って!!」

「みみみっ! さすがクララ先輩です! すごく素晴らしいすごい提案です! お尻にくっ付いて行くです!! みみみみみみっ!!」


 オチに使えそうな2人が逃走をキメる。


 こうなると厳しい。

 小鳩さんはたった1話前でオチそうでオチないと言う仕事をこなしており、ここで連投させたら恐らく謎の原理で空間を超えたあっくんがオチを担当する事になるが、彼は彼で割とそのポジションにいる事が多く新鮮味に欠ける。


「……六駆くん。わたし、もぉ我慢できないよ!! それ、口に入れて舐め回すようにしゃぶっても良いかなぁ?」



 莉子ちゃんはノアちゃんと組むと基本オチるので、新鮮さどころか実家のような安心感を醸し出してしまう。



「莉子。角砂糖はもう6個食べたでしょ? ダメだよ」

「ふぇ! い、良いでしょ!? だってここ、関係ないもんっ! わたし知ってるんだから!! もう少ししたら、なんかちょっとシリアスな展開にいきなり飛ばされて、なかった事になるって!! だから、ねぇ、お願いだよぉ!! 六駆くんの角砂糖、舐めさせてよぉ! 六駆くん、コーヒーはブラックで飲むでしょ!? ねぇ、おねがふぇっ!?」


 六駆くん、角砂糖を全部カップに投入する。



「莉子。僕もね、知ってるんだ。この空間で起きた事は確かに消えるかもしれない。だけどね、莉子。莉子の体重だけは多分消えない。そういうやり方なんだよ、この世界は。だから僕は心を鬼にして、コーヒーを甘くして飲むよ!! 莉子のために!!」

「ろ、六駆くん……!! 分かった、わたしね、我慢する! ……ねね、その指だけしゃぶって良い?」


 ダメだこいつら。とても使えない。



 そして気付くといなくなっているノアちゃん。

 もう既にワクワクラボに入っていた。


「シミリート先輩!! 平山ノア! 16歳!! 何でもやります!! 服を脱ぎますか!?」

「くくっ。ノア殿。正直な事を言っても良いかね?」


「正直1番なボクはいつでも真実を求めます!!」

「そうかね。結構なモットーではないか。では、申し上げよう」


 シミリート技師は言った。



「ノア殿の煌気オーラやスキルは私の研究とかけ離れているので、まったく参考にならんのだよ。得るもののない実験ほど虚しいこともない」

「……え? まさか、ボクだけ仲間外れですか? またまた! そういうサプライズで盛り上げる感じですね!! かしこまりです!! ふんすっ!!」



 ノアちゃんはとりあえず服を脱いだ。

 当然のように現れる体操服姿のノア隊員。


「ノア殿」

「ややっ。ガチのトーンに聞こえますが。シミリート先輩はそれでも人の心をお持ちですか?」


「くくっ。私は豹の方が濃い獣人なのだよ。つまり、心のカテゴライズとしても、人の心と言うよりは獣の心と言った方が良いかもしれんのだよ。くくくっ」

「むきぃー! そんな屁理屈聞きたくないですよ、シミリート先輩!! ボク、体操服ですよ!! 今から触手とか、大きいカエルとかいる夢の中に行って、色々ナニされる準備はできています!! むしろ、自分からされるつもりでした!!」


「ノア殿。申し上げにくいのだがね」

「さっきから申し上げにくいことばかりのシミリート先輩!! 参考書買うって言って貰ったお金でガチャ回したのがバレた中学生ですか!! ぷんすかですよ、ボク!!」


 シミリート技師は眼鏡をクイッとやった。

 続けて、勝利を確信したような表情を見せるものだから、ノアちゃんは身構える。


「諦めて欲しいのだよ、ノア殿。分かるかね? 現時点での尺を。聡明な貴女ならば、この言葉だけで意味は通じると思うのだがね」

「……はっ!! もう、半分以上消化されています……!! これじゃ、ボクがこれから夢の世界に行ってもすぐに場面が変わってしまうじゃないですか!! ひどい! あんまりです!!」


 ノアちゃんは時空に干渉できる可能性を持つ乙女なので、メタ世界を掴む事も可能です。

 「ぐぬぬぬっ」と悔しそうに唸る。


 そこに現れたのは、「ぐーっはは! そろそろ撤収と聞いたぞ、シミ!!」と言いながらやって来た、トラと言う名の獲物。

 ノアちゃんの目が光った。


「ダズモンガー先輩!! こっち来てください!!」

「ぬお!? 何事でござるか!? 吾輩、撤収作業のあとはお雑煮を作らねば!!」


「主役になれるチャンスです!!」

「……話を聞こうではありませぬか。そのように貴重な案件、見逃すようでは武人の名折れ!!」


 そのままダズモンガーくんはペットに寝そべった。

 ノアちゃんがヘッドギアを装着させる。


「もう5人分の操作を眺めて来たので、全てはボクの手の平の上です!! とおー!! スイッチオン!!」

「吾輩がトリを飾る……のでございまする……かぁぁ……」


 夢の世界に堕ちて行ったダズモンガーくん。

 シミリート技師が困惑気味に言った。


「ノア殿。ダズのデータはいらんのだが」

「とっくにご存じです!! ボクは夢世界の出番を奪われた気の毒なヒロイン!! ならば、ダズモンガー先輩を悪夢に叩き落すことでオチとすることくらい、許されるはずです! ふんすっ!!」


 少しだけ2人の間に沈黙が流れる。



「なるほど。それで納得頂けるのならば、良しとしようではないか。ダズの夢には先ほどの木原監察官を投入しておこう。これを機に戦士へ戻すのも良いと思うのだよ」

「あっ! けど、ダズモンガー先輩の夢に尺取られたくないので、もう満足です!!」


 ダズモンガー先輩でオチました。



 それから、ノアちゃんはマシーンの撤収作業を手伝った。

 研究は終わったのだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「いやー! ばあちゃんのお雑煮、絶品!!」

「六駆は口が上手くなったねぇ! お願いやから、大吾には似んで欲しいんよ、ばあちゃんは!!」


「安心してください! わたしが腕にくっ付いてますからぁ!! あの、ところでおばあちゃん? わたしのお雑煮だけ、具がないんですけどぉ? これ、三つ葉しか入ってませんよ?」

「莉子さん。六駆さんが先ほど言われていた通りですわ。ここで無茶をすると、恐らくクライマックスで莉子さんの装備がビリっと逝くシーンが見えますもの」


 みんなでお雑煮タイム。

 これこそ日常回のあるべき姿である。


「にゃはー!! お餅をお持ち帰りしたぞなー!! やー! 疲れてもういいやってなってたら、ニャンコスさんが飛んでたから呼び止めて、残りの作業お願いしたぞなー!!」

「みみっ! ニャンコスさん、杵を振る度に毛が舞い散るので大変な仕上がりのお餅です!! 芽衣はお雑煮チームに合流するです!! みみっ!!」


 ニャンコスさんはお餅を持って魔王軍の兵士たちのところへ行きました。

 この時空のミンスティラリアは何も起きていないので、施設は全て健在です。


 そこにノアちゃんとシミリート技師が合流した。


「ボクはたくさん働いてしまいました!! 体操服でよかったです!! 掃除の時間は体操服! これは昔から決まっているジャスティスなのです!!」

「くくくっ。良いデータが採れたのだよ。特にクララ殿、芽衣殿、小鳩殿には感謝している。英雄殿と莉子殿は良い記念を頂戴したゆえ、近いうちに記念館でも造るかね。このデータを元にホログラムでミンスティラリアの住人にも貴殿らの夢を追体験できるようなVR装置を作り上げるとしよう」


 クララパイセンと芽衣ちゃんのVRは人気が出そうであり、小鳩さんのVRは特に男性から圧倒的な支持を集めそう。


「ふぇぇ!? わたしの夢って! 六駆くんと、その! R47セルフレイティングな事をしてるヤツだよぉ!! どうしよー!! ねぇ、六駆くん!!」


 安心してください。

 莉子ちゃんのは肉まんの味がする飯食ってるだけなので、多分誰も使いません。


 R47ってなんですか。


「僕も中身は47だからなぁ! そろそろ1つ、経験しといてもいいかもだね!!」

「ふぇ!? ふぎゅ……」


 莉子ちゃんがログアウトしました。

 パラレル時空でログアウトしないでください。


 どこ行ったんですか。


 こうして、平和なひと時を経て舞台は再び大激戦の渦中へ。

 ダズモンガーくんが既に大激戦をしているのだが、その様子は一切中継されなかった。


 きっと平和になったら、トラ回もあると思うので辛抱強く待って欲しい。

 寅年だったらワンチャンあったのにね。


 去年だもの。

 去年の今頃って、君のこと、すっかり忘れてたから。


 あけましておめでとうございます。

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